地域別影響
ヨーロッパ
「ヨーロッパの管理されたシステム下での対応は、比較的よく整備されているが、それでも気候変動による多大な影響があるだろう。」―IPCC-
ヨーロッパ地域とはウラル山脈西部とカスピ海の一部を指します。ヨーロッパでは、水資源への影響が多く出ると見られていて、最も被害が大きくなると考えられるのは農業と水資源に依存したその他の産業です。農業に関しては、冬の収穫量の増加が見込まれる一方、夏の収穫量の減少が予想されています。特に収穫高減少の影響が出るのはクロアチアやトルコのような所得の低い国々です。
ヨーロッパ西部の氾濫原に住む人々は洪水に見舞われる危険性が高まる一方、南部では水不足が懸念され、この地域での川の水量の低下は汚染物質濃度を引き上げてしまい、二次的被害を引き起こしてしまいます。あの有名なアルプス山脈ではすでに氷河の溶解が進行していて、これにより水資源の供給、水上運送、水力発電に様々な影響が及びます。また、気温が上がるということは雪の降る期間が短縮することにつながり、スキー観光産業に損害が出ることが予想されます。多くの沿岸地域が都市化し、機能が一極集中することにより、海面上昇への適応力が制限されてしまいます。特に危険が及ぶのは、オランダ、ドイツ、ウクライナ、ロシアの海岸線、地中海デルタ地帯の一部、そしてバルト海沿岸と見られています。また、現在問題となっているオランダや他の地域での塩水の浸入による被害は海面上昇によって悪化すると思われます。
熱射病による犠牲者の数も、気温の上昇で増加すると思われます。また、様々な媒介性疫病の犠牲者も増加します。ウィルス性脳炎はヨーロッパ西部と北欧ではすでに発生していて、リーシュマニア症も地中海の地方から地中海東部にかけて広がると見られます。