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「GENESIS松島計画」への環境大臣意見―石炭火力発電容認に抗議
2021年12月21日
国際環境NGO FoE Japan
国際環境NGO FoE Japan
2021年12月16日、「GENESIS 松島計画 計画段階環境配慮書」(電源開発株式会社)に対する環境大臣の意見書が、経済産業大臣に提出された。
この計画は、1981年から稼働してきた旧式(超臨界圧)石炭火力2機のうち第2号機に石炭をガス化する設備を付加するというものである。環境大臣意見は、石炭火力発電設備を使い続けるという本計画を容認するものであり、大変遺憾である。
国連気候変動枠組条約第26回締約国会合(COP26)で、世界の気温上昇を1.5℃までに抑える目標が改めて共有され、そのために石炭火力発電をできるだけ早期に廃止しなければならないことが確認された。国際社会は「先進国は2030年までに」石炭火力からの脱却を求めている。第6次エネルギー基本計画や、温室効果ガス46%削減という現在の2030年目標も全く不十分なものであり、次回のCOP27に向けて見直しが求められる。
今回の「石炭火力延命を容認」する判断は、こうした現実と真っ向から対立するものであり、気候正義を求める国際社会からも大きな批判を受けるべきものである。
環境大臣意見は、「(1)石炭火力発電を巡る国内外の状況が極めて厳しい状況を十分認識し、可能な限り早期にバイオマスやアンモニア等のカーボンフリー代替燃料の導入を進めること」「(2)我が国の温室効果ガス削減目標と整合した対応の道筋が描けない場合には事業実施の再検討を含め、あらゆる選択肢を検討すること」等を求めている。
(1)について、すでに実用化している技術がバイオマスの混焼だが、これには大きな問題がある。バイオマスを「カーボンフリー」燃料とすることは、燃料を生産した植生が元通り再生されるという前提にたって、「燃焼」という一つの段階のみをとりあげたものであり、実際には、燃料の栽培、加工、輸送といったライフサイクルにおいて大きなCO2排出がある。輸入燃料が利用される可能性が高く、輸入国での燃料生産に伴う森林伐採等も大きな問題である。バイオマスの混焼は行うべきではない。
2050年での実用化すら見通しの立たない技術を見込んでGENESIS松島計画が実行された場合、それまでの数十年間、石炭やバイオマス燃料の燃焼が続き、大量のCO2が排出され続けることになる。電源開発株式会社のバイオマスやアンモニア、CCUSに頼った「カーボンニュートラルの実現を目指す」構想は石炭延命の隠れ蓑にすぎず、許すべきものではない。
日本政府は、非効率石炭火力のフェードアウトにとどまらず、遅くとも2030年までに高効率なものも含め石炭火力を全廃するための議論を一刻も早く開始するべきである。
▼環境省「GENESIS 松島計画に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見の提出について」
https://www.env.go.jp/press/110312.html
▼計画段階配慮書に対するFoE Japanのパブリックコメント(2021年10月26日)
https://foejapan.wordpress.com/2021/10/26/genesis-matsushima-eia-comment/
▼J-POWER “BLUE MISSION 2050”
https://www.jpower.co.jp/bluemission2050/
▼J-POWER GENESIS Vision
https://www.jpower.co.jp/news_release/pdf/news210430_1.pdf