【プレスリリース】日本の「ゼロエミッション」戦略はグリーンウォッシュ

脱化石燃料2023.7.10

18カ国140団体が、G7議長国に対し誤った気候変動対策ではなく、化石燃料からの迅速で公正かつ公平な移行に対し支援するよう求める要請書提出

Photo : Hanae Takahashi – 350.org Japan

世界18国140団体の市民団体は岸田文雄首相に対し、化石燃料利用の促進と拡大を止め、アジアにおける再生可能エネルギーへの移行を妨げないよう求める要請書を提出しました。3月4日、日本政府はアジア各国の閣僚級を招き、脱炭素化やエネルギー移行に関する日本の協力について議論する「アジア・ゼロエミッション共同体 (AZEC) 閣僚会議」を開催します。要請書はその閣僚級会合に先立って提出されました。

パキスタンでの甚大な洪水被害からフィリピンでの巨大台風被害など、気候危機が日々激化する中、化石燃料からの迅速で公正かつ公平な移行が緊急に必要とされていることは明らかです。世界で最も裕福な国の1つであり、気候危機に対する歴史的責任が大きな日本には、化石燃料に対する支援を止め、各国のクリーンエネルギーへの移行を支援する責任があります。

しかし、日本政府が最近閣議決定した「グリーントランスフォーメーション(GX)」戦略は、ガスまたはLNG、アンモニアや水素混焼、CCSなど、むしろ化石燃料利用を長引かせるような技術に大きく依拠しています。

日本政府は、そのような気候変動に対する「誤った解決策」ではなく、迅速で公正かつ公平な再生可能エネルギーへの移行をもたらすような協力を2日後に開催されるAZEC閣僚級会合や、5月に開催されるG7広島サミットで打ち出すべきです。

Asian Peoples Movement on Debt and Development(APMDD、債務と開発に関するアジアの民衆運動)の共同コーディネーターであるリディ・ナクピルは「日本は、ガスを移行燃料と位置付けて投資を行ったり、化石燃料への依存を長引かせ脱炭素プロセスを遅らせるだけの水素・アンモニア推進をやめなければなりません。再生可能エネルギーにダイレクトに移行することは可能であり、現実的です。日本は問題を生み出すのではなく、気候変動の危機に最も苦しんでいる地域社会への義務を果たさなければなりません。日本が今後数か月、数年で行うことは、私たちのコミュニティと地球に大きな影響を与えるでしょう」とコメントしました。

FoE Japanの事務局次長である深草亜悠美は日本のGX戦略がグリーンウォッシングであると指摘し「日本のGX戦略はグリーンウォッシングです。再生可能エネルギーへの移行を妨げ、気候変動を加速させたりコミュニティや環境に悪影響をもたらしかねません。化石燃料由来の水素やアンモニアの推進などは、化石燃料企業の利益になるだけです」とコメントしました。

日本政府は、化石燃料に依存した「脱炭素」エネルギー計画を作成することで他国のエネルギー移行を妨げることも止めなくてはなりません。国際協力機構(JICA)は技術協力の一環としてバングラデシュの統合エネルギー・電力マスタープランの作成を行っていますが、これらは1.5℃目標と整合せず、化石燃料への依存を深める内容になっています。

CLEANの代表であるハサン・メヘディは「日本が作成するバングラデシュのマスタープランは、再生可能エネルギーよりも石炭とLNGを優先した内容になっています。すでに人々は気候危機の影響やエネルギー価格の高騰に苦しんでいます。危険でコストの大きなガスや化石燃料水素・アンモニアは人々の助けにはなりません。これらは誤った対策で、危機をさらに拡大させます。」とコメントしました。

「JICAはインドネシアが2060年までにカーボンニュートラルを達成するためのロードマップを作成しましたが、アンモニア混焼や水素、CCUSを強く推進しており問題だらけです。実際、三菱重工業などの日本の企業はすでに既存の石炭火力発電所におけるアンモニア混焼の実施可能調査を行っています。石炭火力発電所の運転期間が延びれば、化石燃料の利用を長引かせるだけでなく、石炭火力発電所や炭鉱の近辺に住む地域住民の健康や生計手段もより長く悪影響を受けることになります。日本政府は他国に対し、このような誤った解決策に頼ることを強いたり融資することを止めるべきです」と、WALHIの鉱山・エネルギーキャンペーンマネージャーのファニー・トレ・ジャンボレは付け加えました。

オイル・チェンジ・インターナショナル(OCI)の有馬牧子は、「日本政府は、LNG事業に対する世界最大の公的支援者です。2019年から2021年の間、日本は年平均67億ドルをLNG事業に投じました。日本政府はLNG及び化石燃料由来の技術をエネルギー安全保障の確保と気候変動対策の手段としてアジア地域において推進していますが、むしろLNGに依存することで、変動しやすいエネルギー価格がエネルギー安全保障に悪影響をもたらし、再生可能エネルギーへの移行を遅らせ、気候危機をさらに加速させてしまいます」とコメントしています。

アジア地域におけるLNGやガスインフラの拡大に対して反対の声も強くなっています。フィリピンでは、バタンガス地域に新規開発が集中しています。「フィリピンでは34の新規ガス発電所と11のLNG輸出ターミナル事業が計画されています。国際協力銀行や大阪ガス、東京ガス、みずほ銀行やJERAなどが計画に関わる企業に名を連ねています。LNGやガスは汚く、気候変動を悪化させ、多様な生計手段や豊かな生態系、地元の産業も破壊します。石炭のように、ガスも座礁資産となり、フィリピンや東南アジアの地域コミュニティの反対の声に直面するでしょう。私たちの地域には再生可能エネルギーの高い潜在能力があります。日本は、化石燃料に投資し続けるのではなく、再生可能エネルギーに投資すべきです」とCenter for Energy, Ecology, and Developmentの事務局長ジェリー・アランセスはコメントしました。

詳しくは要請書本文をご覧ください。

 

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