南極保全
南極南大洋連合(ASOC)のインターベンション
FoE Japanが参加する南極南大洋連合(ASOC)は本年のCCAMLR年次会合の交渉結果に関し参加国政府代表団に向けて以下のインターベンション(公式発言)を行いました。
南極南大洋連合(以下、ASOC)は、ASOCを構成する25団体および南極海同盟の30団体の世界各国のサポーター数百万の声を代表し、本日、遺憾の意を表明致します。また、ASOCは、「南極の海洋生物保存に関する委員会」(以下、CCAMLR)が南極海の生態系保護のために理性的な決定を下すため、その決定によって影響を受ける数千万の生物を代表します。彼らはCCAMLRにおいて票を持ちえないのです。
過去2年間の海洋保護区(MPA)プロセスにおいて多くの難題がありましたが、ASOCは、ロス海および南極東岸海域のために意義ある成果を持って帰ることできるという大きな期待を抱いてホバート(CCAMLR開催地)にやって参りました。提案国および多くの参加国は、CCAMLRにおいて良い結果を得るべく尽力しました。我々は彼らに感謝の意を表します。
我々は、NGOとして、元々の提案を合意するための取り組みについては必ずしも常に満足していたわけではありません。貴方は、我々の主張を概説した南極海連盟(以下、AOA)の報告書および地図に既に目を通しています。しかしながら、CCAMLRの参加国は、最終的に、将来世代のために南極東岸海域およびロス海の生態系を保護すべく、海洋保護区設置という正しい判断をし、自身のコミットメントを光栄に思うものと信じていました。本会議において、多くの参加国が海洋保護区設置に賛成したことは励みとなりました。数ヶ国が早期のコミットメントをする準備ができていなかったことは残念でした。我々は再び、海洋保護区の設置を決めることなく、会議を終えてしまいました。
ASOCは、CCAMLRがこの結論に至ったことが全く理解できません。南大洋において海洋保護区のネットワークを設置するという決定は合意を得ていました。初期ネットワークのための2012年目標の設定は合意を得ていました。海洋保護区設置のためのフレームワークをつくるための保護対策91-04は合意を得ていました。これらの歩みは、CCAMLR参加国がコミットメントをする準備ができていたということを意味しているのです。
しかし、参加国すべてが準備できていたわけではなかった、というのが悲しい現実です。我々の提案は科学的検証が不十分であるとの主張がありましたが、提案は長年の科学的検証に基づくものです。また、これらの海洋保護区が漁業に甚大な影響を及ぼすと訴えた国もあります。ASOCは漁業自体に反対しているのではありません。海洋保護区は(漁業とは)異なる目標を持っているだけであり、これはCCAMLRの本来の目的と一致します。これは、海洋保護区の設置には、漁業権を開放するよりも多くの証明が必要というおかしな状況を生み出します。
CCAMLRは、もうひとつの「かつお・まぐろ類の地域漁業管理機関」(RFMO)というだけではなく、それ以上の存在であることを常に誇りに思ってきました。我々は、CCAMLRの二つ目の「C」が「保存(Conservation)」以外の意味を有していると結論づけてよいのでしょうか。おそらく、(CCAMLRは「南極の海洋生物保存に関する委員会」ではなく、)「南極の海洋生物消費(Consumption)に関する会議」を意味するのではないでしょうか。
我々は、代表団が自国に戻り、CCAMLRを後退させた遺産について、反省することを望みます。これは失敗のひとつになるのでしょうか。あるいは成功のひとつとなるのでしょうか。我々は、海洋保護区に関する他の重要提案が他の地域(ウェッデル海、アムンゼン海、デル・カノ海およびスコシア海)で進展していることを指摘します。この行き詰まりは打開しなければなりません。各国はいつまでも提案に投資し続けることはできません。提案国はたくさんの資金、時間、科学的研究に投資してきました。このような状況を続ける限り、CCAMLRはコミットメントを得ることはできません。
ASOCは、すべての参加国に対し、意思を改め、これら2つの提案について合意を得る準備をして来年ホバートに戻ってくることを求めます。それこそ、将来世代への本当に価値のある遺産となり、また、CCAMLRが海洋保護のリーダーという地位を取り戻すことにもなるのです。
●関連情報:
ロシア・ウクライナ、南大洋海洋保護への世界の努力を再び阻害
>https://www.foejapan.org/climate/antarctica/pdf/aoa1101.pdf
AOAブログ〝Russia and Ukraine block again: Now what″(英語)
>https://antarcticocean.org/2013/11/russia-and-ukraine-block-again-now-what/