南極保全の取り組み
1957年~1958年に、世界66カ国による共同プロジェクト「国際地球観測年」をきっかけに、南極の重要性が共有され、南極は人類共通の財産として保全されています。したがって、南極はどこの国にも属していません。
1.南極条約 Antarctic Treaty
1959年に日本、米国、英国、フランス、旧ソ連など12カ国により採択され、1961年に発効しました。現在の締約国数は57カ国です(2024年8月)。 南緯60度以南の地域に適用され、主に以下の内容が約束されています。
第1条: 南極地域の平和的利用(軍事基地の建設、軍事演習の実施等の禁止
第2・3条: 科学的調査の自由と国際協力の促進
第4条: 南極地域における領土権主張の凍結
第5条: 核爆発・放射性廃棄物の処分の禁止
第7条: 条約の遵守を確保するための監視員制度の設定
第9条: 南極地域に関する共通の利害関係のある事項について協議し、条約の原則及び目的を助長するための措置を立案する会合の開催
南極条約協議国会議 Antarctic Treaty Consultative Meeting (ATCM)
南極において基地の設置や調査活動の実施など、積極的に南極で活動する29カ国で構成される「南極条約協議国」が、南極条約に基づいて定期的(年1回)開催する会議のこと。保全や管理の在り方に関する協議を行います。これまでに、環境保護、特別保護区域、南極観測に関する技術的な事柄、条約事務局の運営、南極観光の規制措置など、500以上の決議・勧告及び措置が採択されています。また、特定の問題に関しては「特別協議国会議」を開催し、これまでに「南極の海洋生物資源の保存に関する条約」や「南極あざらし保存条約」等が採択されてきました。2026年に開催される第48回ATCMの開催国は日本で、開催地は広島に決定しています。
2.環境保護に関する南極条約議定書 Protocol on Environmental Protection to the Antarctic Treaty
南極の環境と生態系を包括的に保護することを目的として、1991年に採択、1998年に発効しました。本体、付録、5つの附属書及び末文から構成されています。
3.南極の海洋生物資源の保存に関する委員会
Commission for the Conservation of Antarctic Marine Living Resources (CCAMLR)
南極の海洋生物資源の保存に関する委員会は「南極の海洋生物資源の保存に関する条約」(Convention on the Conservation of Antarctic Marine Living Resources(CAMLR条約))が掲げる目的と原則を実行する国際組織です。CAMLR条約は、南極海(極収束線以南の海域。地球の表面積の約10%を占める)の生物資源を管理するために1980年に採択、1982年に発効されました。委員会は、条約加盟国のうち南極海で対象種の調査活動や漁業を行っている26カ国および1機関(アルゼンチン、豪州、ベルギー、ブラジル、チリ、中国、エクアドル、EU、フランス、 ドイツ、インド、イタリア、日本、韓国、ナミビア、オランダ、ニュージーランド、ノル ウェー、ポーランド、ロシア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、ウクライナ、英 国、米国、ウルグアイ)のメンバー国から構成されます。条約加盟国で委員会メンバーでない国は、ブルガリア、カナダ、クック諸島、フィンランド、ギリ シャ、モーリシャス、パキスタン、パナマ、ペルー、バヌアツの11カ国です。CAMLR 条約は、南極収束線より南に生息する全ての生物に適用されます。ナンキョクオキアミやメロ(マゼランアイナメ、ライギョダマシ)の漁獲量を規制するほか、密漁などのIUU(違法・無報告・無規制)漁業や、漁業に伴う海鳥の混獲などに対する措置を行うほか、海洋保護区の設置について検討をしています。
◎参考
外務省. 南極条約・環境保護に関する南極条約議定書
外務省 経済局漁業室. (2022) ”南極の海洋生物資源の保存に関する委員会”
環境省. 南極地域の環境保護