温暖化の影響
食糧不足
気候変動による気象パターンの異変で降雨量が局地的に多くなったり少なくなったりすることはわかりました。そうなると、どうなるのでしょう?砂漠化や水不足ということになりますが、その波及的悪影響として、食糧不足があります。水不足や気温変化による栽培状況の変化が起こると、農作物が今までどおりに収穫できなくなります。特に穀物自給率が29%しかなく、穀物の7割以上を輸入に頼っている日本では、これは深刻な問題です。
今のところ、先進国は気候変動によって収穫高が上がると見られていますが、中国を除く開発途上国では、深刻な被害をもたらすと予想されています。ヨーロッパ諸国やカナダ、日本、中国のような中高緯度に位置する国々の収穫高は向こう80年間僅かに増加するという予測結果が出ていますが、アフリカ諸国や中東、特にインドのような低緯度諸国では、収穫高は下落すると見られています。
農家が気候変動に適応できる範囲というのも地域によって差があります。アメリカやオーストラリアのような先進諸国では、異常気象が発生した際の短期的な損害はあるにしても、こうした国々では適応能力が高い傾向にあります。しかし、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国、東南アジア、南アジア、東アジア地域、ラテンアメリカの熱帯雨林地域や太平洋の島嶼国などでは、適応コストが高くなり対策の遅れなどで特に被害が大きくなります。また、国家の利害が絡んでくるため、先進国などでの食糧生産性の向上によって、開発途上国の食糧問題が解決するとは考えられません。
現在、世界中の全人口をまかなうだけの食糧があるにもかかわらず、約8億人の人々が食糧不足に苦しんでいます。これは貧困、社会制度の欠乏などの要因が足かせとなっていまだ未解決のままです。気候変動による影響で食糧不足の被害を受ける人々は2080年までに、さらに8000万人増えると予測されています。