COP30で市民社会が日本に「化石燃料への資金支援停止」とAZECの「誤った気候変動対策」の撤回を求める抗議活動を実施

COP30の「エネルギー・デー」である11月14日に、アジアおよびグローバル・サウスの市民団体は、日本に対し化石燃料への公的資金支援をやめること、そしてアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の枠組みのもとで推進しているバイオマス/アンモニア/水素混焼やCCS(二酸化炭素回収・貯留)など、各国を化石燃料依存に縛りつける「誤った気候変動対策」の推進を撤回するよう求めるアクションを2つ実施しました。
一つ目のアクションでは、巨大なピカチュウの着ぐるみと「Stop Fossil Fuel Expansion and False Solutions!(化石燃料拡大と誤った気候変動対策をやめろ!)」と書かれたバナーが使われました。一方、午後の「トキシック・ツアー(toxic tour)」では、アジア各国のパビリオンを巡りながら、日本が「アジアの脱炭素」の名のもとに、いかに化石燃料に依存した技術を輸出しているかが記者たちに説明されました。
日本が3つの賛同国の一つとなっている「持続可能燃料に関するベレン4倍誓約(Belém 4x Pledge on Sustainable Fuels)」と同様に、日本主導の地域イニシアチブであるAZECもまた「誤った気候変動対策」を推進しています。LNG(液化天然ガス)、バイオマス、水素・アンモニア混焼、CCSなど、化石燃料に依存した高コストな技術が、多数の覚書(MoU)や、アジア諸国のエネルギー計画の策定・改定支援の過程で盛り込まれる形で積極的に押し進められています。COP30の場で、そしてAZECの枠組みのもとで、日本は化石燃料依存を長引かせるこれらの誤った気候変動対策を広めようとしています。
こうした取り組みは、世界各地で化石燃料インフラを維持しようとする日本のより広範な戦略の一部です。パリ協定が発効した2016年以降、日本の輸出信用機関である国際協力銀行(JBIC)は、15カ国で26カ所の化石燃料ガス事業に対して直接資金支援を行ってきました。しかしその支援が深刻な事態を招いています。最新の調査では、2024年にJBICに起因する排出量が4億800万トン(CO₂換算)に達し、世界で20番目の排出大国に匹敵することが明らかになっています。
さらに開発現場のコミュニティが被る重大な社会・環境影響も忘れてはなりません。アクションでは、フィリピン、マレーシア、オーストラリアからのスピーカーが、日本の支援するガス拡大が、世界的な海洋生物多様性ホットスポットであるヴェルデ島海峡に位置するイリハンLNGターミナルの事例のように、海洋生物多様性と地域住民の生計手段をいかに脅かしているかを訴えました。
今回のアクションは、世界各地のコミュニティが団結して掲げる要求を改めて訴えるものとなりました。すなわち、日本による化石燃料への公的支援を終わらせること、誤った気候変動対策をやめること、そして公正な移行のための気候資金を拠出することです。
アマレン・サタナンタル(The Artivist Network アジア・コーディネーター)
「マレーシアを含む東南アジアや南アジアの国々には、とりわけ太陽光を中心に、非常に大きな再生可能エネルギーのポテンシャルがあります。にもかかわらず日本はAZECを使い、ガスや石炭の利用を長引かせる技術を押し付けています。マレーシア首脳は、日本の汚れたエネルギー戦略にお墨付きを与えるべきではありません。その代わり、安価でアクセスしやすい再生可能エネルギーを推進し、地域でエネルギー主権をもつ存在となるべきです。」
リディ・ナクピル(Asian Peoples’ Movement on Debt and Development コーディネーター)
「世界第3位の経済大国である日本には、化石燃料の世界的な段階的廃止を主導する力と能力があります。それにもかかわらず日本は、アジアにおける汚れたエネルギーの拡大に資金を出し続けています。日本による東南アジアでの化石燃料支援は、海洋生物多様性と漁民の生計手段の両方を破壊してきました。COP30では、世界の市民社会が日本に圧力をかけ、化石燃料からの資金支援を転換させ、アジアの再生可能エネルギーへの移行を主導させなければなりません。」
シャリーフ・ジャミル(Waterkeepers Bangladesh コーディネーター)
「世界がパリ協定の目標達成に失敗しかねない危険な段階に近づくなかで、豊かな国々が化石燃料からの移行を主導することは、かつてないほど重要になっています。しかし日本は、化石燃料と非効率な炭素貯留技術に、なおも莫大な資金を投じ続けています。日本は、官民問わず化石燃料資金支援を転換し、迅速かつ公正なエネルギー転換に資金を拠出するべきです。」
アリヤン・デ・オカンポ(Center for Energy, Ecology, and Development / Protect VIP キャンペーン担当)
「日本はJBICを通じて、フィリピン初のLNG施設を資金面で支えました。それは、私たちが『海のアマゾン』と呼ぶ生物多様性豊かなヴェルデ島海峡の真ん中に位置しています。日本はまた、東南アジア全域で石炭とガスの拡大に燃料を供給し続けていますが、地域の人々はすでに極度の気候災害リスクにさらされ、“片足を墓場に突っ込んだ”ような状況にあります。フィリピンと東南アジアの漁民、コミュニティ、市民運動は、日本が押し付ける汚く致命的な化石燃料を拒否します。私たちは、日本がこの地域で迅速で公正な再生可能エネルギーへの移行を妨げることを許しません。」
伊与田 昌慶(350.org Japan キャンペーナー)
「高市首相がCOP30への参加を見送ったことは、日本が依然として世界有数の化石燃料資金支援国という立場から脱却する意思がないという、憂慮すべき印象を与えています。日本は再生可能エネルギーの主導者になる代わりに、化石燃料ガス、石炭とのアンモニア混焼、CCUS、原発といった“誤った気候変動対策”の主導者であることを自ら示しています。さらにCOP30では、日本はバイオ燃料やバイオマスなど、森林破壊や食料安全保障の低下に繋がってしまう『持続可能な燃料』を4倍にする誓約にも加わりました。まだ軌道修正の時間は残されています。私たちは、日本が気候変動の悪化にこれ以上加担するのではなく、これまで歴史的に引き起こしてきた被害に対しての賠償を求めます。日本の化石燃料資金支援で苦しんできた世界中のコミュニティは、すでに超えてはならない一線を明確に示しています。日本の新政権が正当性を得ようとするなら、その一線を踏み越えてはなりません。」
長田 大輝(FoE Japan キャンペーナー)
「COP30で日本に焦点を当てたアクションが行われたこと自体、グローバル・サウスが日本の「脱炭素」戦略に対して抱く深刻な懸念を明示しています。事業現場からのコミュニティの人々の話は、少数の日本企業を喜ばせるためだけに化石燃料に基づいた技術を輸出することがいかに深刻な社会・環境影響をもたらしているかを露呈しています。」