フィリピン漁師、NGOが来日!日本の化石燃料への資金支援停止を訴え

化石燃料

昨年のCOP28で「化石燃料からの脱却」が合意され、石炭だけでなくガスも使用を削減する潮流が世界的に醸成されています。今年1月には、米バイデン政権もLNG(液化天然ガス)輸出許可を一時停止すると発表しました。しかし、日本の官民はLNGを「トランジション燃料」と位置付け、エネルギーセクターの脱炭素化が求められている現在も国内外で積極的にガス関連事業への投融資を続けています。

昨年12月にフィリピンの漁師らが国際協力銀行(JBIC)に対して異議申立てを行ったイリハンLNG輸入ターミナル事業(JBIC及び大阪ガスの出資企業が推進)もその一つです。そこで5月末から6月上旬にかけて、JBICによる支援を受けるLNGターミナル建設で悪影響を受けるフィリピン漁師とフィリピンNGOの職員2名が来日しました。5月末に開催した記者会見では、JBICに異議申立てを行った漁師らの所属する漁民連合のリーダーが、日本の官民によるガス案件への投融資で漁民の生活が脅かされている現状についてお話ししました。また漁師らを支援してきた現地NGOスタッフから、日本の官民の投融資がフィリピンの脱炭素化を遅らせている実態と日本に求められる支援の在り方について説明がありました。

同ガス案件は気候変動を悪化させるのみならず、「海のアマゾン」と呼ばれるヴェルデ島海峡(The Verde Island Passage: VIP)の世界的にも類を見ない海洋生態系への影響、そして漁獲量の減少など漁師の生計手段にも甚大な被害をもたらすことが懸念されてきました。また同案件は、土地転換令を取得せずに工事を進める等の違法行為も明らかとなり、2022年8月には現地当局から工事の停止命令も出されました。

漁師らはJBICへの異議申立書の中で、JBICが同事業のフィリピン国内法違反について適切なモニタリングを怠ったこと等から、JBIC自身の環境社会配慮ガイドラインに違反していると指摘。現在、JBICガイドライン担当審査役がガイドライン違反の有無を調査中で、6月末には調査結果が出る見込みです。

同事業が行われているVIPに面する地域では、日本の3メガ銀行が金融支援を行っているフィリピン電力大手のサンミゲル社が推進するガス火力発電事業もあり、JBICと併せ、日本の民間銀行に対しても「VIPを守って!(Protect! VIP)」というフィリピン市民社会の声が高まっています。

フィリピンから来日した2名は、JBIC、MUFG前等で抗議活動にも参加しました。

記者会見や抗議活動等の様子

(credit: 350.org Japan)
 

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