【声明】G7広島サミット閉幕ーG7は気候危機と核の脅威から目をそらすな
2023年5月19日から21日まで広島で開催された主要7ケ国首脳会議(G7広島サミット)は、会期2日目に成果文書となる首脳コミュニケを発表した。
4月の気候変動・エネルギー・環境大臣会合で採択されたコミュニケで述べられたように、首脳コミュニケにおいても、再生可能エネルギーの導入や排出削減対策が講じられていないすべての化石燃料の段階的廃止の加速などについて触れられた一方、ロシア産化石燃料からの脱却を名目に、一時的という条件つきとはいえ、化石ガスへの公的支援を容認した。石炭火力の全廃時期についても合意はなかった。
さらに、ALPS処理汚染水の海洋放出に関する文言が環境大臣コミュニケに引き続き含まれた。ALPS処理汚染水の海洋放出は、放射性物質を環境中に拡散することにつながることに加え、放出する放射性物質の総量が明らかになっていないこと、地元の漁業者をはじめ多くの人々が反対していることなどを含め、多くの問題がある。環境大臣会合の結果に対しても批判の声が上がっていたにもかかわらず、再び盛り込まれたことに抗議する。
広島での開催とあって、核廃絶について大きく注目されたが、NPT体制を重視するというこれまでと変わらないもので、抑止という名目での核兵器を認め、核兵器禁止条約にすら触れず、核廃絶を求める世界の人々を落胆させるものとなった。さらにコミュニケ本文においても、広島ビジョンにおいても原子力の役割について触れ、後者においては「原子力発電又は関連する平和的な原子力応用を選択するG7の国」は、「原子力エネルギー、原子力科学及び原子力技術の利用が、低廉な低炭素のエネルギーを提供することに貢献することを認識する」としたが、これは大きな誤りである。
ロシアのウクライナ侵攻は今も続き、原子力発電所も攻撃の対象となったことは記憶に新しい。原子力と核兵器は表裏一体の関係にある。原子力を利用するということは、ウラン採掘から、燃料製造、運転、廃炉、核燃料の処分に至るまで、放射性物質で環境を汚染し、人権侵害をひきおこす。トラブルや事故、放射能汚染、何万年も保管を要する核のごみといった原発のリスクやコストを考慮すると、気候変動の解決策にすべきものではない。また、この10年、再生可能エネルギーのコストは劇的に下がり、原発のコストは上昇し続けており、今や原発は最も高い電源となっている。
議長国である日本を含め、気候危機と核の脅威に正面から向き合わず、むしろ解決を先送りにしたG7会合となった。
G7広島サミットの期間中、日本だけでなく米国、イギリス、ウクライナやグローバルサウスを含む世界22カ国で約50もの抗議活動が実施され、日本による化石燃料支援に対する反対の声が挙げられた。気候変動を悪化させ、現地の環境や人々の生活を破壊する日本の化石燃料事業に対して、各国市民は明確な拒絶の意を示している。
日本政府は世界中の市民からの声に耳を傾け、核の廃絶、脱原発、脱化石燃料に真剣に取り組むべきである。
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