C7気候・環境正義分科会の有志パネルによる重要鉱物調達にかかわるG7及びG7環境大臣会合への提言
2023年4月14日、FoE JapanはC7サミットの分科会「気候危機へ抗する緊急性と環境配慮の両立のために」に参加し、フィリピンにおけるニッケル開発事業が現地でもたらす環境・社会・人権への影響について発表しました。
気候危機のこれ以上の悪化を食い止めるため、迅速な気候変動対策が求められるなか、脱炭素化を図っていく上で必要とされる重要鉱物(Crinical Mineral)への需要が高まっています。フィリピンでも、バッテリー材料の一つであるニッケル開発の拡張計画が新たに進み、先住民族や地域住民の暮らしが更に脅かされようとしています(参照:上記動画)。
同分科会では、インドネシア・スラウェシ島の現地NGOからも、ニッケル開発による熱帯雨林の伐採、生態系の破壊、地域住民の生計手段の喪失・影響、懸念の声をあげる住民の不当逮捕など、さまざまな問題が発表されました。また、トンガやパプアニューギニアなど、太平洋諸島の市民団体からも深海採掘の問題点と市民の取組みについての紹介がなされました。
分科会では、2023年4月15、16日に札幌で開催されるG7気候・エネルギー・環境大臣会合を前に、同分科会に参加した6団体からG7首脳及びG7環境大臣に向けて、以下の提言も発表しました。
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C7気候・環境正義分科会の有志パネルによる
重要鉱物調達にかかわるG7及びG7環境大臣会合への提言
気候危機が差し迫ったものとなっている中、グローバルサウスに不当に大きなしわ寄せが来ていることはすでに明らかになっています。今日、すでに漁民は異常気象のために漁に出られる機会が限られています。それは子どもたちが教育の機会をあきらめ、家族を支えなければならない事態も生み出しています。危機の影響は世代を超えていくのです。
そして、この人災に最も責任があるのはG7諸国であるという事実から目を背けてはなりません。したがって、G7諸国はリーダーシップを発揮し、即座に行動し、地球規模の気候危機が悪化することを防がなくてはならないのです。
しかしながら、近年G7諸国で進められている脱炭素政策の中には、甚大かつ不可逆的な環境・社会影響が危惧されているものもあります。そしてこれらの負の影響もまたグローバルサウスに不当に負担を課すものです。東南アジアにおける大規模ニッケル採掘や太平洋における深海採掘は、そうした影響の一例にすぎません。自分たちの責任でさえない気候危機によって不当に影響を受けている人びとが、今度はその脱炭素対策のために負担を強いられるという事態を私たちは容認できません。
私たちはグローバルサウスとの国際連帯に基づく市民社会の一員として、G7首脳及びG7環境大臣に向けて以下を提言します。
1)「公正な移行」の定義に脱炭素技術の採用・促進によって引き起こされる負の環境・社会・人権影響に対する十分な配慮を盛り込むこと
2)SDGsの「誰も取り残さない」という約束に基づき、あらゆる脱炭素を目的としたインフラ及び開発プロジェクトに際して「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意(FPIC)」の権利ならびにプロジェクトを「拒否」する権利を含めて地域住民・先住民族やそのコミュニティの権利が保障されること
3)気候危機が緊急性の高い問題であることを認めつつも、その対策として必要となる戦略上重要鉱物の調達にあたっては下記の特別の配慮を行うこと
・地域固有の生態系や絶滅危惧種への影響が見込まれる地域から調達された鉱物を使用しないよう、拘束力のあるサプライチェーンデューディリジェンスの義務化を行うこと
・国際自然保護連合(IUCN)決議122(2021年9月22日採択)に従い、最低限深海採掘に対するモラトリアムを支持し、さらに禁止に向けた国際潮流を作ること
本ステートメントに関するお問い合わせ:
特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター(PARC)
担当:田中 滋
alter@parc-jp.org / 03-5209-3455