[Protect VIP 声明] JBICの責任逃れの試みに私たちは騙されない!

フィリピンの漁民コミュニティや環境保護団体、市民社会組織は、日本国際協力銀行(JBIC)がフィリピンの国内法に違反し、ヴェルデ島海峡(Verde Island Passage, VIP)にあるイリハン液化天然ガス(LNG)ターミナルへ投資を行っていることを厳しく非難する声明を発出しました。

今回の声明は、影響を受けた漁民たちと環境団体「Protect VIP」が2023年12月に提出した異議申立書に対する、JBIC審査役報告書の公表を受けたものです。同報告書では、フィリピン国内法違反があったことを認めつつも、JBIC自身の環境ガイドライン違反については一切認めませんでした。

JBICは、大阪ガスとともに、AG&P社(アトランティック・ガルフ・アンド・パシフィック)に対し1億ドルの出資を行っており、AG&P社はフィリピンのイリハンLNGターミナルに146億ペソを投資しています。

英語原文はこちら

JBICの責任逃れの試みに私たちは騙されない!

2025年1月31日

イリハンLNG輸入ターミナル事業に係るJBIC審査役報告書に関するProtect VIPの声明

日本政府が全株式を保有する国際協力銀行(JBIC)は、「海のアマゾン」とも称されるヴェルデ島海峡(VIP)で自らが引き起こした深刻な環境及び経済的被害について、責任を逃れようとしている。

2023年12月、漁民や地域コミュニティのメンバーを中心とするProtect VIPは、バタンガス市イリハン村にあるLNG輸入ターミナルについて、JBICがAG&P社(アトランティック・ガルフ・アンド・パシフィック)およびリンシード社(リンシード・フィールド・パワー社)の環境面における遵守状況を適切にモニタリングしなかったことを理由に、JBICに対する異議申立書を提出した。

数ヶ月にわたる調査の結果、公表された審査役の報告書では、フィリピンの国内法違反があったことを認めながらも、JBIC自身の環境ガイドライン違反については一切認めなかった。同報告書は、同事業地にかつてココナッツの木が生育していたことを認め、「フィリピン・ココナッツ保護法」の規定に違反していたことを確認している。

しかしながら、同報告書では、これらの木々の伐採はLNG輸入ターミナルの建設が始まった2021年12月よりも前に起きており、AG&P社がリンシード社に出資する以前のことであったと、根拠なく主張している。

また、土地利用転換がフィリピン農地改革省(DAR)からの取得が必要な許可なしに行われたことを認め、2002年DAR行政命令第1号への違反も確認している。

さらに、DARが建設工事の停止命令(CDO)を発出した後も、AG&P社とリンシード社は事業開発を継続していたことを報告書は認めている。

これらのフィリピン国内法違反の認識は、『環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン』と矛盾している。同ガイドラインでは、「プロジェクトは、プロジェクトの実施地における政府(国政府及び地方政府を含む)が定めている環境社会配慮に関する法令、基準を遵守しなければならない。」と明記されている。

また、JBICは漁獲量の大幅な減少や水質悪化に関する私たちの正当な主張を、「理論上の可能性」に過ぎないとして退け、さらに異議申立てを行った漁民たちが「事業による被害を受けていない」と主張している。

イリハンLNGターミナルによって影響を受けた漁民や地域コミュニティの現実を軽視することは、JBICが推進を可能にしてきたガス開発によって苦しんできた人々に対する侮辱にほかならない。

ヴェルデ島海峡沿岸の漁民コミュニティの生計手段が、漁獲量の激減と水質悪化によって脅かされる一方で、フィリピンのエネルギー大手(サンミゲル社、メラルコ、アボイティス・パワー)は、特にヴェルデ島海峡において、人々と環境を犠牲にしながら利益を拡大し続けている。これらの企業はすべてJBICとの協力に向けた合意を結んでおり、またAG&P社の LNGターミナルおよびガス火力発電所二案件の権益を取得するため、33億ペソ規模の合弁契約を締結している。

この失望すべき調査の進め方と結果は、日本の公的資金が、生物多様性が豊かでありながら私たちのような気候変動に脆弱な発展途上国において、ガスおよび化石燃料の開発を加速させる上で果たし続けている危険な役割を改めて浮き彫りにしている。それは、私たち人々の生計手段と、公正なエネルギー移行への希望を犠牲にしている。

先日、フィリピン政府は国内のガス産業の発展を促進する法律に署名した。これにより、フィリピンの人々は今後数十年にわたり、環境破壊的で割高なエネルギーに縛られる危険にさらされることになる。こうした状況が悪化する中でも、私たちはヴェルデ島海峡を守る決意を貫く。ヴェルデ島海峡の地域コミュニティと重要な生態系を犠牲にしながら、JBICが責任を逃れようとしていることに私たちは決して騙されない。

日本政府は、公的資金を投入し、ヴェルデ島海峡周辺の環境と地域コミュニティを破壊する行為を公然と行っている。私たちは、JBICの違反を許さない。日本政府はその責任を問われるべきである。

私たちは、日本政府に対し、JBICによるヴェルデ島海峡の調査およびその調査プロセス全体を厳格に見直すよう強く求める。この異議申立制度は設立以来、一度も異議申立人に正義をもたらしていない。またフィリピン国内法違反が明白である以上、私たちは日本政府に対し、AG&P社およびリンシード社によるLNG輸入ターミナルへの資金提供を停止し、撤退することを求める。

最後に、私たちは、日本がこの地域および世界各地の化石ガスおよび化石燃料に対して継続している資金提供を停止することを求める。


エドウィン・ガリゲス神父
Protect VIP呼びかけ人代表

Protect VIP

 

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