【フィリピン市民団体のプレスリリース】JBIC環境ガイドライン担当審査役がフィリピンの生物多様性ホットスポットでのLNG事業を調査へ

ヴェルデ島海峡の豊かな海洋生物多様性(©︎CEED)

以下、フィリピン市民団体によるプレスリリース(和訳)です。
>異議申立書の概要はこちら


プレスリリース|2024年2月6日

国際協力銀行(JBIC)の環境ガイドライン担当審査役は、生物多様性のホットスポットであるフィリピンのヴェルデ島海峡(VIP: Verde Island Passage)に液化天然ガス(LNG)輸入ターミナルを建設したアトランティック・ガルフ・アンド・パシフィック・カンパニー(AG&P)への資金支援に関するJBICのガイドライン違反の可能性を調査することになりました。

JBICと大阪ガスは、2023年5月に操業を開始したフィリピン初のLNGターミナルの開発会社であるAG&P社に、共同で1億米ドルを出資しています。

2023年12月、フィリピンを拠点とする環境保護グループ「Protect VIP(ヴェルデ島海峡を守ろう)」を中心とする漁民リーダー、地域住民、関係団体がJBICに異議申立書を提出しました。バタンガス市にあるAG&P社のLNGターミナルは、樹木伐採、土地転換、環境適合証明書に係る許可違反に関連して、ステークホルダーから数件の申し立ての対象となっています。実際、土地転換の要件違反が確認され、フィリピン農地改革省は2022年8月、同事業に対して停止命令を出しました。

「私たちはJBICの決定を歓迎します。JBICが、私たちの海のアマゾン(ヴェルデ島海峡の呼称)において汚いガスエネルギーの拡大に貢献し、コミュニティの生計手段と幸福を脅威に晒し、国内法に違反する事業を支援したことについて、今回の決定はJBICがようやく説明責任を果たすための第一歩です。同時にこれは、他のすべてのLNG事業者や資金支援者に対して、コミュニティが彼らの破壊的な計画に反対する姿勢を示すものです」と、Protect VIPの呼びかけ人であるエドウィン・ガリゲス神父は述べました。

Protect VIPと地元のステークホルダーが要請した調査は、AG&P社の現地法人であるリンシード・フィールド・パワー社がフィリピンの国内法を遵守しているかをJBICがモニタリングしなかったこと、JBICが自身のガイドラインに基づいて事業の環境カテゴリを適切に分類しなかったこと、そしてJBICのガイドラインで定められた行動をJBICが取らなかったことに関連しています。

FoE Japanの長田大輝は、「イリハンLNG輸入ターミナルを含むガス関連事業がバタンガス市の海洋生物多様性と漁民の生計手段に甚大な影響をもたらすのを見てきました。脅迫や嫌がらせの可能性があるにもかかわらず声を上げた漁民の権利を守るために、JBICが責任ある行動を取るよう、JBICの審査役は、現在進行中の調査において、当事業がJBICの複数のガイドライン規定に違反していることを丹念に審査しなければなりません」と述べました。

今回の異議申立ては、JBICがLNGに関して初めて調査を受け入れた案件になります。

「JBICのような銀行が、AG&P社のLNGターミナルのような破壊的な事業に資金を提供することは、私たちのような漁民の生計手段の喪失に資金を提供することと同じです。私たちは、JBICがこの調査を徹底して行ってくれることを信じています。私たちとしては、ヴェルデ島海峡の漁民とコミュニティに正義がもたらされるよう、注意深く見守っていきます」と、バタンガス漁民連帯(Solidarity of Fisherfolk in Batangas)のロドリゴ・デ・ヘスス会長は語りました。

日本の銀行は、東南アジアにおける化石燃料ガス事業に対する最大の融資者であり、JBICは2016年から2023年までに33億米ドルを融資した最大の金融機関です。ベトナムと並んで、フィリピンは現在、東南アジアで最大規模のガス拡大計画に直面しています。

「日本は、化石燃料依存を続けさせようとする世界最大の推進者の一つであり、今日の世界的なガス拡大を牽引しています。公的金融機関で今回調査を開始したことは、日本にとって、化石燃料による社会経済危機、環境破壊の危機、気候危機に苦しむコミュニティや国々に対する過ちを正す重要な機会です。バイデン米大統領がLNG輸出認可の発行を停止するという決定を先日下したことも、日本がフィリピンやその他の国々にLNGや化石燃料を押し付けるという方針を見直す時期に来ているというサインとして受け止めるべきです」と、シンクタンクCEED(Center for Energy, Ecology, and Development)の事務局長であり、Protect VIPの共同呼びかけ人であるジェリー・アランセス氏は述べました。

連絡先

国際環境NGO FoE Japan 
電話: 03-6909-5983 または、問合せフォーム

Center for Energy, Ecology, and Development
Weng, 電話: +63-9685399514

 

関連する記事

フィリピン・LNGターミナル:漁民らがJBICに異議申立て「違法かつ生計手段を破壊する事業者から出資の引き揚げを」

脱化石燃料

【特別セミナー】日本の政策は東南アジアの脱炭素化を遅らせる~ASEAN市民の声

脱化石燃料

【フィリピン市民団体のプレスリリース】資産運用会社の化石燃料ガスからの撤退を受け、コミュニティと活動家は日本の金融機関に同様の対応を要請

脱化石燃料

アースデー特別ウェビナー:日本の「開発」がフィリピンの環境を破壊?現地住民が苦しんでいる理由とは?

脱化石燃料

【プレスリリース】フィリピンのLNGターミナル建設現場で道路崩落事故 ~ JBICに即時工事停止と事業撤退を再要請

脱化石燃料

【プレスリリース】フィリピンと日本の環境団体、日本のJBICに対しバタンガスLNGターミナルへの支援撤回を要請

脱化石燃料

関連するプロジェクト