日本企業のLNG転売に関するIEEFA報告書の和訳公開

報告書「日本の大手電力・ガス企業の余剰LNG問題」はこちら(IEEFAホームページ)
解説記事「国内のLNG需要激減を背景に、日本のLNG海外転売量が2023年度に過去最高を記録」はこちら(IEEFAホームページ)
FoE Japanは、近年増加している日本のLNG転売について分析を行ったIEEFA(Institute for Energy Economics and Financial Analysis、エネルギー経済・財務分析研究所:)の報告書「日本の大手電力・ガス企業の余剰LNG問題(原題:Japan’s largest LNG buyers have a surplus problem)」及び解説記事「国内のLNG需要激減を背景に、日本のLNG海外転売量が2023年度に過去最高を記録(原題:Japan’s LNG resales into overseas markets hit record high in FY2023 as domestic demand plummeted)の日本語訳を作成しました。各々、上記のIEEFAのホームページで公開されています。
日本の大手電力・ガスは国内LNG需要減少に伴い余剰LNGを抱え、打開策として海外への転売量を増やしています。2023年度の海外転売は過去最高を記録し、日本はLNG「最大の買い手」から「転売者」に変化しています。
主な結論
LNGの買い手から転売者へ変貌する日本
日本は過去 50 年間の大半にわたり、液化天然ガス(LNG)の世界最大かつ最も重要な買い手であり続けてきました。 しかしながら、日本の LNG 需要は近年急激に落ち込み、それと同時にかつては LNG の消費者としてのみ見なされていた日本の電力・ガス会社は、現在では海外での転売にますます注力しています。
日本企業は2023年度に、過去最高量の液化天然ガス(LNG)を海外市場へ転売しました。その転売量は、主要なLNG輸入元である豪州、マレーシア、ロシア、米国、パプアニューギニアの各国からの輸入量を上回る規模です。日本のLNG転売量は、2023年に世界第4位のLNG輸出国であったロシアの年間生産量を上回りました。

国内LNG需要減少と余剰LNG
LNGの転売を進める背景に、日本の主要電力・ガス会社が直面する国内LNG需要減少とそれに伴う余剰LNG問題があります。日本の電力・ガス会社が 2030 年までLNG過剰調達状態であり続ける可能性が高い理由として、報告書は(1) 原子力発電所の再稼働と再生可能エネルギーの成長、(2) 長期的なネットゼロ目標、(3) 人口動態、(4) 国内のガス・電力市場の再編によって構造的に国内LNG需要が減少していることを挙げています。
転売による損失リスク
スポット市場価格が、日本の電力・ガス会社の原油連動型契約で設定された価格公式を下回ると、LNG を転売する日本企業が損失を被るリスクが生じます。たとえば 2019 年後半には、アジアのスポット市場価格が 100 万 BTU(英国熱量単位)あたり 4~6 米ドルに下落したことにより、九州電力は LNG の転売で 2 億 4000 万 米ドル以上の損失を被りました。JERA は、2020 年の市場低迷により LNG 転売で 94 億円(1 億 2300 万米ド ル)の損失を計上しました。2021 年以降、日本の長期契約に基づく LNG 輸入価格は平均で 100 万 BTU あたり 12.4 米ドルとなっていますが、この⽔準を 下回るスポット市場価格は、日本の従来型契約に基づく LNG 転売利益に下方リスクをもたらす可能性があるとしています。

