【共同プレスリリース】気候変動問題に取り組むアジアの市民団体がASEAN首脳に要請「日本の汚いエネルギー戦略を拒否し、風力・太陽光発電の拡大を」

化石燃料
ジャカルタ(2023年9月6日:WALHI)

2023年9月6日 東京、ジャカルタ、マニラ、バンコク、クアラルンプールハノイ、タイ・ミャンマー国境、ダッカ、カラチ、デリー発 ー 9月5日から7日までジャカルタで開催される第43回東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に合わせ、アジア各地で気候変動の問題に取組む市民団体は、同地域のクリーンエネルギーへの移行に向けた協力を強化すること、また日本による化石燃料の推進を拒否することを首脳に求めるアクションを行いました。

今回の首脳会議は、国連「青空のためのきれいな空気の国際デー」に閉幕します。同市民団体らは、気候変動とエネルギー危機への対応と同様に、この地域の大気の質を改善するためには、太陽光や風力などのクリーンで価格競争力のあるエネルギー源を拡大する必要があると述べました。

マニラ(2023年9月6日:APMDD)

トレンド・アジアのエネルギーキャンペーナーであるNovita Indriは、「ジャカルタにおける最近の大気汚染の悪化やアジアにおける異常気象は、この地域が石炭やガスなどの化石燃料からクリーンなエネルギーに移行し、温暖化を1.5℃に抑えることが急務であることを示しています。」と述べました。

劣悪な大気環境は、主に化石燃料に電力を依存しているASEAN加盟国全体で地域的課題となっています。世界の大気質指数によると、ジャカルタは世界で最も汚染された都市のひとつです。ジャカルタの大気汚染の原因は、交通渋滞、工場、野焼きなどとされています。

これらすべての要因が大気汚染の原因となっていますが、石炭のような化石燃料を燃やし続けていることが大きな影響を与えています。CREA(Centre for Research on Energy and Clean Air)の調査によると、インドネシアの石炭火力発電所からの大気汚染物質の排出量は、過去10年間で110%も増加しているとのことです。同国の現在の政策の下では、この数字は2030年までにさらに70%増加すると予想されています。

「ASEANは経済成長の中心であるだけでなく、再生可能エネルギーの成長の中心であるべきです。大気汚染は、インドネシアが石炭のような化石燃料に依存し続ければ、何十万人もの市民の病気を引き起こし、何千人もの死者をもたらすことになる、数多くの問題のひとつに過ぎません。」 と Indriは話しました。

グリーンピース・インドネシアの気候・エネルギーキャンペーナーであるBondan Andriyanuは、化石燃料が原因の大気汚染は、ASEAN諸国、特にインドネシアに莫大な経済的損失をもたらしていると述べました。

「インドネシアでは、社会健康保険による6種類の呼吸器疾患の医療費が、2022年には10兆ルピア(約6億5,600万米ドル)にまで急増しました。この増加傾向は2023年も続きます。この財政負担は、化石燃料による健康被害を考慮しなければならないという、明確な緊急課題を浮き彫りにしています。大気汚染と効果的に闘うためには、化石燃料から脱却し、太陽光や風力といったクリーンなエネルギー源に軸足を移さなければなりません。これは、ASEAN諸国全体でよりクリーンかつ健康的な未来を確保するための重要なステップです。」とAndriyanuは話しました。

同市民団体らは、クリーンエネルギーへの移行を阻んでいる大きな要因のひとつは、日本がこの地域でとっている汚れたエネルギー戦略であると主張しています。化石燃料事業の最大の公的資金供与国のひとつである日本は、アジアにおいて、石炭火力発電所の使用を長引かせる化石燃料に基づいた技術に加え、ガス開発事業の主要な資金提供者です。日本政府はまた、ASEANの協力国の脱炭素化の取り組みを支援するというイニシアティブとして、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」と「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ(AETI)」を推進しています。

しかし、これらのイニシアティブには、液化天然ガス(LNG)、化石燃料由来の水素、二酸化炭素回収・貯留(CCS)、石炭火力発電所でのアンモニアやバイオマス(木質ペレット)の混焼など、化石燃料への依存を続ける、いわゆる気候危機に対する誤った対策が含まれていると同市民団体らは指摘しています。

気候問題に関するシンクタンクTransitionZeroによれば、東南アジアの石炭火力発電所において、技術的に可能な限りの割合でアンモニアを混焼しても、国際エネルギー機関(IEA)の2050年ネットゼロ目標に沿って排出量を削減することはできないとのことです。同様に、世界的に石炭発電所をガス発電所に切り替えても、気候に関する目標を達成するのに十分な排出量を削減することはできない、とシンクタンクのGlobal Energy Monitorは報告しています。

脱炭素化という目標だけでなく、ASEAN加盟国がガスを含む化石燃料の使用を段階的に削減しなければならない主な理由として、エネルギー安全保障が挙げられると同市民団体らは述べました。専門家によれば、アジアの新興経済国は、昨年のロシアのウクライナ侵攻以降、価格変動が一層激しくなっている燃料であるLNGに縛られるような契約を避けるべきということです。

それにもかかわらず、8月にASEAN+3((中国、日本、韓国)エネルギー大臣会合において発表された共同声明は、これらの技術の導入を奨励し、地域のエネルギー安全保障におけるLNGの役割を強調するものとなっています。

「私たちはASEAN加盟国に対し、公正なエネルギー移行に向けた協力を強化するよう求めます。ASEANは、この地域に対する日本の汚れたエネルギー戦略や誤った対策に立ち向かう必要があります。ASEAN諸国は、化石燃料の採掘や石炭火力発電所の使用の継続を正当化することにしか資さない、この地域におけるガスエネルギーの拡大や、化石燃料に基づいた技術の推進を止めなければなりません。」とAsian Peoples’ Movement on Debt and Development (APMDD)  のコーディネーターであり、Asian Energy NetworkのDon’t Gas Asia Campaignの呼びかけ人であるLidy Nacpilは述べました。

世界的なコスト低下を受けて、専門家たちは、太陽光や風力への投資は、特に石炭火力でのアンモニア混焼のような技術と比較して、排出量を削減するための最も費用対効果の高い方法であると述べています。しかし、ASEANは他の国々と比べ、いまだに太陽光と風力発電で遅れをとっています。現在、エネルギーミックスに占める太陽光と風力の割合は、ASEAN諸国の大半で5%未満です。インドネシアは、昨年1月から6月にかけて、太陽光発電のおかげで1,000万米ドルの燃料費を節約できたにもかかわらず、太陽光発電の設備容量が最低レベルとなっています。

「人びとと地域社会が必要とする基本的なエネルギーへの普遍的なアクセスを確保し、気候の大惨事を防ぐことを目的とした、オルタナティブな道があります。私たちは、再生可能エネルギーシステムへの直接的で迅速な、また公平かつ公正な移行を要求します。」とNacpilは述べました。

これは右記団体による共同プレスリリースです:インドネシア環境フォーラム(WALHI)、グリーンピース・インドネシア、Trend Asia、Asian Peoples’ Movement on Debt and Development、Senik Centre、Asian Energy Network (AEN)、 Don’t Gas Asia、国際環境NGO FoE Japan

詳細および取材については、下記までご連絡ください:

  • Novita Indri, Trend Asia, novita.pratiwi@trendasia.org
  • Dwi Sawung, WALHI, sawung@walhi.or.id
  • Tata Mutasya/ Bondan Andriyanu, Greenpeace Indonesia, bandriya@greenpeace.org
  • Lani Villanueva, Asian Peoples’ Movement on Debt and Development (APMDD), villanueva.lani@gmail.com
  • FoE Japan(波多江)hatae@foejapan.org

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