声明:原子力と大規模排出事業者への不透明な資金の流れをつくりだす「GX推進法案」に反対する

原発2024.2.14

2023年3月29日

 本日、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」(以下、GX推進法案)が衆議院経済産業委員会で可決されました。同法案は、政府が定める「GX推進戦略」に基づき、脱炭素分野に150兆円規模の官民の投資を呼び込むという内容で、20兆円もの「GX経済移行債」の発行や「GX推進機構」の設立が含まれています。私たちは以下の理由でGX推進法案に反対します。

1.原子力・大規模排出産業を長期にわたり官民資金で支援する

 2月10日、政府はGX基本方針を閣議決定しました。同方針には、原発の着実な再稼働やそのための理解醸成、次世代革新炉の開発・開発建設、人材育成、事業環境整備、核燃料サイクルの促進などが含まれます。また、水素・アンモニア、CCS、CCUSなどによる化石燃料発電の維持・推進を経済的に支援する内容となっています。「GX推進法案」はこのGX基本方針を実現するための法案です。

 今月末にも国会で審議入りが予想される「GX脱炭素電源法案(注1)」においては、原子力基本法の改正案に、原発を脱炭素電源として位置づけ、国の責務として活用していくことも盛り込まれています。「GX推進法案」と「GX脱炭素電源法案」は車の両輪の関係にあり、長期にわたって原子力産業を国が支援し続けることを法定化することになります。

2.経済産業省への白紙委任となる

 GX推進法案では、20兆円規模の「GX経済移行債」の発行、「GX推進機構」による金融支援や債務保証などにより、150兆円規模の官民のGX投資を生み出すとしていますが、その資金の行先は、政府が定めるGX推進戦略(第6条)に沿ったものとなります。「GX推進戦略」は経済産業省が案を作成し、閣議決定されます。すなわち、GX投資の対象は、経済産業省が決めることになります。

 また、民間企業のGX投資の支援や化石燃料賦課金・特定事業者負担金の徴収などを行う「GX推進機構」の設立が盛り込まれていますが(第5章)、これは経済産業大臣の認可法人です。業務計画、財務・会計などは、「経済産業省令」によって定められます。

 すなわち、GX推進法案によって生み出される官民の巨大なGXマネーの投資先や資金管理が、経済産業省に白紙委任されることになります。

3.脱炭素基準、環境・人権配慮基準の不在

 GX推進法案は「脱炭素」をかかげているのにもかかわらず、GX経済移行債の発行による政府支援、およびGX推進機構が支援を行う民間企業のGX投資の対象について、温室効果ガス削減効果に関する基準が設けられていません(注2)。経済産業省が認めれば、脱炭素効果が見込めない分野・事業であっても、GX投資の対象になりえます。

 すでに閣議決定されたGX基本方針には、化石燃料由来の水素・アンモニア利用が含まれています。これは化石燃料の消費量を増やし、温室効果ガス排出増大をもたらすことになります。また、石炭火力を含め既存の火力発電の積極活用や延命とセットで進められています。これでは、パリ協定にかかげる1.5℃目標は達成できません。

 また、公的資金により投資や金融支援を進めていくのにもかかわらず、環境破壊や人権侵害を回避するための基準が設けられていません(注3)。

4.大規模排出事業者が受益、最終的には国民負担になりかねない

 GX推進法案は、大量の温室効果ガス排出を行っている企業ほど受益する内容となっています。その財源は、GX経済移行債などで賄われ、将来的に炭素賦課金や特定事業者負担金で回収されます。価格転嫁されれば、最終的には消費者、すなわち国民が広く負担することになりかねません。

5.資金の流れが不透明で、監視、検証ができない

 「GX経済移行債」で得られた資金の使途は、現段階では不明であり、具体的には経済産業省が決めていくことになります。また、化石燃料賦課金は「GX推進機構」に流れこむことになりますが、資金の流れが不透明です。国会(つまり国民)によるコントロール、監視、検証ができません。

6.国民の声が反映されていない

 GX推進法案に、国民の意見はまったく反映されていません。2月10日に閣議決定されたGX基本方針は、年末年始をはさみ、30日間のパブリック・コメントに付されましたが、反対する意見は反映されず、各地で行われた説明・意見交換会で出た意見については、最初から反映しないものとして扱われています。国民の現在の生活や将来世代にかかわる重要な法案にもかかわらず、大企業の利益を代弁する有識者や産業界の声にばかり耳を傾け、国民の声をきくプロセスを踏まないことは、大きな問題です。

私たちは以上の理由から、「GX推進法案」に反対し、廃案を求めます。

注1)原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の改正案5つを束ねたもの。
注2)たとえばEUタクソノミーにおいては、エネルギー分野においては、太陽光・風力については閾値なし、水力・地熱に関してはライフサイクルにわたるGHG排出量が、1kWhあたり100g未満、運輸においては直接CO2排出がゼロ(移行段階の活動については1kmあたり直接CO2排出が2025までは50g未満)などと、具体的に定められている。
注3)EUタクソノミーは、気候変動の緩和、適応、水と海洋資源、循環型経済、環境汚染の防止と抑制、生物多様性などの環境分野の一つもしくは複数に貢献し、いずれの分野についても著しい害を及ぼさないこと、ビジネスと人権に関する指導原則など「最低限のセーフガード」を満たしていることなどとされている。

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