【経済産業省に要請提出】イェタグン・ガス田開発プロジェクトからミャンマー国軍に資金が流れないよう早急な措置を求めます

#ミャンマー国軍の資金源を断て
#JapanStopODAtoTheTatmadaw #NoMoreBusinessWithTheTatmadaw

ミャンマー南部に位置するイェタグン・ガス田には、日本の合弁会社 JXミャンマー石油開発 が19.3%を出資しています。そして、このJXミャンマー石油開発の50%分を出資しているのは経済産業大臣です。

現在、コロナ禍の影響で同ガス田におけるガス生産は一時停止されています。しかし、今後、ガスの生産が再開されれば、イェタグン・ガス田の生産に伴う配当や税などの各種支払いが、ミャンマー市民への暴挙的な弾圧を続けているミャンマー国軍を利する可能性があります。

9月15日、FoE Japanとメコン・ウォッチは、そのようなリスクを回避するために適切な措置を講じるよう、経済産業省に要請しました。 

詳細は、以下の要請書本文をご覧ください。


> 要請書PDF版はこちら

2021年9月15日

経済産業大臣 梶山弘志様

メコン・ウォッチ
国際環境NGO FoE Japan

要請書:
イェタグン・ガス田開発プロジェクトから
ミャンマー国軍に資金が流れないよう早急な措置を求めます

ミャンマーでは、4つの沖合の海洋上にある大規模ガス田(ヤダナ、ゾウティカ、シュエ、イェタグン)から生産される天然ガスが、外貨獲得に大きな役割を担ってきました。この中でイェタグン・ガス田開発は、その開発段階から日本の政府と企業に深い関わりがあったものです。

イェタグン・ガス田の権益は、オペレーター(事業主体)でもあるマレーシア国営企業のペトロナス・チャガリ社が40.9%、ミャンマー石油ガス公社(MOGE)が20.5%、タイ政府系のPTTエクスプロレーション・アンド・プロダクション(PTTEP)が19.3%、そして、日本のJXミャンマー石油開発(1)が19.3%を保有しています。JXミャンマー石油開発は、日本政府(経済産業大臣)50%(2)、JX石油開発40%、三菱商事10%(2013年から参画)の共同出資会社です。

2000年に生産を開始したイェタグン・ガス田は、他のガス田と同様、当時のミャンマー軍政の重要な収入源となっていました。また、この収入は、国軍の予算も増加させていたと見られています(3)。

私たちは、ミャンマーにおけるガス田の生産に伴い、生産分与契約(PSC)、エリア・レンタルフィー、ロイヤリティ、所得税、輸出時の付加価値税等、ミャンマー政府に対して多くの支払い義務が生じると理解しています(4)。現状で、ガス事業関連のこうした支払いが実施されれば、武力で実質的な権力を掌握し、日本政府を含む国際社会から承認されていないミャンマー国軍の政治体制の外貨獲得につながることを強く懸念します。また、かつて天然ガスの収入が軍事費増強に繋がったと見られる中、現在行われている国軍による市民への弾圧に、このガス事業関連の支払いが流れてしまう可能性は否定できず、在日ミャンマー人を含む日本の納税者である私たちが国軍の弾圧に間接的に加担することとなり、容認できるものではありません。

イェタグンでのガス生産については、2021 年 4月初頭、運営を担うペトロナス・チャガリ社が技術的問題で「不可抗力宣言」 を発出し、生産を停止していました。しかし、貴省(資源エネルギー庁)が石橋通宏参議院議員の問合せに対して寄せた回答書(2021年8月31日付)において、「その後、ガス生産設備の修理を行い、2021 年7 月21 日に生産を再開」したことが判明しました。同回答書によれば、「複数の作業員に新型コロナウイルスの感染が認められたため、8月17日に再度生産を停止」しており、「生産再開の具体的な見込みは未定」とのことですが、基本的には、「ガス購入者との契約上、ガス供給を継続する義務があるため、」問題が解消されれば、ガス生産が再開される予定であると考えられます。

また、貴省は同回答書の中で、生産分与契約(PSC)を始めとする契約上のミャンマー政府への支払いに関して、「事業に参画する JX ミャンマー石油開発株式会社及びミャンマー石油ガス公社との間の契約上の守秘義務条項に該当するため、回答は差し控える」と、一切の情報公開を拒んでおられます。

更に、貴省はイェタグン・ガス田事業への出資が直接、乃至、間接的にミャンマー国軍を利する可能性や人権侵害への加担を回避するための対応について、「JX ミャンマー石油開発株式会社によれば、油ガスの売上の一部は、ミャンマーの法律およびペトロナス・チャリガリ社、PTTEP インターナショナル社、ミャンマー石油ガス公社との契約上の定めにより、ミャンマーの国の収入と なっているが、ミャンマー軍事政権に対し、当該ガス田事業に係る資金が渡ったとの事実は承知しておらず、また、 ミャンマー国軍にその資金が渡っているのかを確認することは極めて困難」と回答をされています。

JXミャンマー石油開発株式会社との意見交換や共同出資者へ働きかけるとする一方、「国軍に資金が渡っているのかを確認することは極めて困難」と述べ、資金の流れを止める具体策は何も提示されていない中、既に生産再開を認めていたことになります。これは、現下のミャンマーの人道危機に何ら注意を払わずに、漫然と「ミャンマー国」に支払いを続ける、と明言されているに等しく、日本の市民として受け入れられるものではありません。また、日本政府がミャンマーの市民や国際社会から、国軍の人権侵害に加担している、と受け止められる懸念も強くあります。

これらの強い懸念から、私たちは経済産業省に対し、以下の点を要請します。

要請:

  • ガス生産が再開される前に、イェタグン・ガス田の生産に伴う支払いがミャンマー国軍を直接及び間接的に利することがないよう、適切な措置を講じること。それには、民政化が実現するまで、当該支払いをミャンマー国軍がアクセスできない海外口座等に保管すること等も含まれる。国軍に資金が渡らないような措置を講じることが不可能な場合は、生産を再開すべきではない。
  • イェタグン・ガス田に関するミャンマー政府への支払いに係る条件は、民間の競争力を確保するために必須の情報とは考えられないため、日本の納税者にすべて開示すること。

注:
(1) JXミャンマー石油開発は、1991年に、ミャンマー南部のイェタグン・ガス田がある鉱区M-13、14、そして翌92年にM-12の権益を取得、探鉱を行い、埋蔵量の評価作業、パイプラインを含む生産・出荷設備の建設を行ない、同ガス田を開発してきた。
(2) 日本政府の出資分は石油公団が保有していたが、同公団が多額の損失から強い批判を受け、石油天然ガス・金属鉱物資源機構に改変された後、経済産業省が承継している。(石油鉱業連盟. 「わが国石油・天然ガス開発の現状と課題」 https://www.sekkoren.jp/pdf/oil_naturalgas_2020.pdf )
(3) 中西 嘉宏. 「国軍 正統性なき統治の屋台骨」. 『ミャンマー政治の実像 : 軍政23年の功罪と新政権 のゆくえ 第2章』 (2012年) 81ページ
(4) JOGMEC. 「ミャンマーにおける天然ガス生産減少と上流開発投資の誘致に関する課題」.2018年.  https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1004762/1007564.html

この件の連絡先:
特定非営利活動法人メコン・ウォッチ
担当:木口
TEL. 03-3832-5034 FAX:03-3832-5039

#ミャンマー国軍の資金源を断て これまでの要請・アクション

 

関連するトピック

関連するプロジェクト