ボン会合(2010年8月)
ボン会合(2010年8月)について
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国連気候変動枠組み条約第11回特別作業部会、京都議定書第13回特別作業部会
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2010年8月2~6日の1週間、ドイツのボンで国連の気候変動枠組み条約ボン会議が行われました。コペンハーゲンで行われたCOP15後、3回目の会議になります。
UNFCCCのボン会合(2010年8月)公式ページ
>https://unfccc.int/2860.php
ここでは、第11回めの条約AWG(AWG-LCA)と、第13回目の京都議定書AWG(AWG-KP)が行われました。FoEインターナショナルは今回のボン会議で以下の問題に注目しました。こうした問題で進展をみることが12月にメキシコ・カンクンで行われるCOP16での成功を導きだすカギとなります。通常の交渉期間に加え、これらのカギとなるイシューについてのより詳細を話し合うためのワークショップも行われました。
・アメリカの「新しい気候外交」の役割
アメリカが提案する制約システムは、気候変動の危機を減少させたり公平ない方法でやることへ何の保証もないし、法的拘束力もない。世界の国々はアメリカがグローバルな気候変動の枠組みが間違った方向へと導くのを許すのか、あるいは京都議定書のもと公平性と適切性の原則にもとづいて立ち上がるのか、選択をせまられている。
・京都議定書の抹殺…不充分な削減目標値と京都議定書の抜け穴の拡大
6月ボン会議の最終会合で、いくつかの国々が京都議定書に基づく約束期間を終わらせることを明言した。これはコペンハーゲン合意の「約束ベース」アプローチを作るというゴール、そして先進国の削減義務を含む法的拘束力をもつ唯一の条約を無くすことを意図している。
抜け穴の拡大については、 ホットエアのような排出削減目標の達成余剰分や、土地利用の算定ルールなどの議論において「抜け穴」を広げることをもくろむ先進国がある。ストックホルム環境研究所やサード・ワールド・ネットワークによる研究によれば、これにより付属書Ⅰ国の排出量は約10%増えることになる。
・適切かつ科学に基づいた緩和・適応資金の提供の必要性
今回の会合では、全体としてめぼしい成果があがったとは言えないでしょう。
次回は10月に中国・天津で会合が開催されます。温暖化の国際交渉において中国はカギを握る国の1つです。その中国が初めて会合をホストするため、12月のメキシコ・カンクンで行われるCOP16に向けて少しでも交渉が前進することを期待したいと思います。
交渉終了後のFoEインターナショナルによるプレスリリース(2010年8月6日)
国連気候変動会議:先進国が前進への希望を抑圧
今日ボンで終了した国連気候変動会合の閉幕にあたり、FoE英国のインターナショナル・クライメート・キャンペナーのアサッド・レーマン(Asad Rehman, International Climate Campaigner at Friends of the Earth England, Wales and Northern Ireland)は次のように述べた。
「カンクンでの国連気候変動会議が近づくが、先進国は交渉を遅らせ続けることで、大きな前進へのどんな望みも抑圧している。
今週豊かな国々は自国の排出量を一刻も早く削減する責任を明記した京都議定書を次の段階へと進めることをのろのろとした調子で話し合った。そして途上国にも弱くて不公平な約束を認めることを強制しようとした。
これは炭素排出量削減に対して法的拘束力がなくなる可能性を残すし、何億人もの命を危険にさらす恐ろしい気候変動のリスクが非常に高まることにつながる。」
FoEインターナショナルのクライメート・ジャスティス・エネルギー・プログラムのコーディネータ、ジョセフ・ザクーン(Joseph Zacune, Friends of the Earth International Climate Justice and Energy Program Co-ordinator)は付け加える。
「豊かで工業化が進んだ国々は、カーボンオフセットなしで排出削減を急激に進める義務にすぐ従わなければならない。そうしなければ、恐ろしい気候変動の結果として人類が徐々に絶滅していくのに加担することになる。」
ボン会合の最中、一刻も早く排出を削減すべき豊かな国々を従わせる法的文書である京都議定書の位置付けは、ますます分極した。(1)
特にEUのような豊かな国々は、気候変動に真っ先に取り組むべき主体である豊かな国々の責任を正式に記した議定書にしっかりと約束された事項から後退した。これはLCA交渉の第2段階での進展が十分でないという認識があるためだ。
議会が今年前半に排出量削減法案を否決して以来、アメリカは交渉に対してますます悪影響を与えている。そして、新しい気候変動条約として可能性があり、自発的な排出削減約束のシステムを提案するコペンハーゲン合意の条文をより多く採用するよう、交渉担当者はごり押しをしている。
EUとアメリカの両方が、途上国に対して排出を削減することを約束するよう求めている。しかし国連条約の下ではその必要は求められていないし、途上国の何百万もの人々は未だに電気のような基本的アメニティを持ってすらいないのだ。こんな手法はUNFCCCに違反するものであろう。
サード・ワールド・ネットワークが行った最新の分析によると、京都議定書の抜け穴は当初心配されていたよりもさらに大きなものになる。議定書の大きな4つの抜け穴「森林の会計ルール(LULUCF)」、「国際航空と船舶からの排出」、「旧ソ連や他の東欧諸国からの過剰排出割り当て」、「カーボンオフセットや取引のような逃げ口」は、会議のテーブルで約束した現在の排出削減よりもすべて十分すぎるほどに上回ってしまう。実際豊かな国々は排出量を増やしているのが現状だ。
途上国での「計測・報告・検証(MRV:Measurement, Reporting and Verification)」のイシューもまた注目された。豊かな国々は気候変動に効果的に立ち向かうために必要な強力な排出削減を約束することは拒否しながら、同時にそうした手法へ厳格なルールを適応させようとしている。
参考情報
抜け穴の要約を含む、より詳しいボン会議の分析はこちら(FoE欧州によるブリーフィング):
https://www.foeeurope.org/climate/download/bonn_loopholes_08_10.pdf
→ 日本語訳はこちらのページからご覧ください
ストックホルム環境研究所が行ったプレゼンテーション(英語):
https://unfccc.int/files/essential_background/library/application/pdf/awg_southcentre.pdf
サード・ワールド・ネットワークが行ったプレゼンテーション(英語):
https://unfccc.int/files/kyoto_protocol/application/pdf/twn_notes.pdf