COP17 (ダーバン会合)
COP17に向けて | COP17 に求めること | 7つのポイント| 用語解説 | 発表資料
COP17のポイント
1.京都議定書と先進国の思惑
危機的な気候変動を防ぐための気候変動枠組み条約を確実に履行するため、国連の気候交渉は今、大きな進展が必要とされています。条約では、先進国の気候変動への責任と途上国への支援の必要性が合意されています。しかしながら、これまでのところ、先進国はこの責任をほとんど果たしていません。
気候変動を止めるためには、科学の助言に従って温室効果ガスを削減する、法的拘束力のある国際約束が必要です。気候変動枠組み条約と京都議定書は、このために機能することのできる既存の枠組みです。しかしながら、 日本など先進国の一部は、中国、米国の入らない京都議定書は無意味だと主張し続けています。このような言動は、削減義務のなくなる「空白期間」を生じさせ、まだまだ合意・発行までに時間のかかる新しい枠組みにのみ固執することは、気候変動に対する自らの責任を減少させるためとしか見えません。また、緩い枠組みを構築した上で、気候変動問題からさえも利益を得るための排出権取引等の誤った解決策を促進させようと図っています。
先進国が、ダーバンにおいて京都議定書の第二約束期間に合意し、排出権取引などの抜け穴のない、高い削減目標を掲げることが出来れば、長い間膠着している国際交渉が前進し、世界の気候危機を避けることができます。
2.気候交渉と国連
気候変動問題は、国連の他、 G8 や世界銀行、地域フォーラム等、様々な場で議論されています。その中でも、 UNFCCC は、国際社会が気候変動対策を約束するための最も適した場所と言えます。国連は、世界中から 192 の国が代表し、少なくとも各国の平等な参加が確保されています。国連交渉にも、透明性の欠如、大国不均衡、リソースの不平等の課題はありますが、 G8 や G20 のように貧しい国が除かれるということはありません。
国連交渉の抱える問題は、多くの政府が気候変動問題に関心を持つ産業界からの圧力を避けられないことでしょう。産業界は、気候変動対策による製造、産業、農業等の成長への影響を懸念しています。また、気候変動対策を促進する政府や企業にも、原子力やバイオ燃料、排出権取引等の誤った解決策を促進する場としても利用されてしまいます。
3.アフリカでの開催
COP17 は特に深刻な気候変動の影響を受けているアフリカで開催されています。
先進国に歴史的排出責任をしっかり認識させ、行動に移させるため、アフリカ諸国の政府、そして市民社会を中心に、最も脆弱な人々のために立ち上がることが期待されます。
4.新興国の削減問題
壊滅的な気候変動を避けるためには、すべての国の行動が必要です。特に、中国、インド、南アフリカ、ブラジル等の新興国は、急速な工業化により、温室効果ガスの排出が増加しています。しかし、それらの国が国際的な義務を負うに至るまでには、歴史的責任と対策のための能力が考慮されなければなりません。
新興国からの排出増加が懸念される一方で、世界の人口の 15 %にしか持たない先進国は、世界の排出の 3/4 をも排出し続けており、未だ削減はほとんど進んでいません。
しかしながら、南アフリカやブラジルのようないくつかの新興国が、先進国が行ってきたような開発の道を辿りつつあることが懸念されます。途上国は、気候変動に最大限に配慮した持続可能な開発を通じて、公平な社会を実現しなければなりません。しかしながら、先進国と同じ気候債務を負う段階ではありません。
5.排出権取引の問題
排出権取引は誤った解決策です。温室効果ガスの排出を相殺し、お金で必要な削減を免除することになります。経済的に豊かな国や人々は、化石燃料を使用し続けることを可能にしてしまします。 これでは、化石燃料依存社会からの脱却が不可能になり、気候変動を阻止することはできません。
しかしながら、多くの国々が国際的な炭素市場の拡大を望んでいます。この新しい市場には、産業界、 NGO 、トレーダー、金融業界が参入しており、非常に強いロビー力を有しています。結果、削減事業の現場では、より多くの排出権を生み出すために環境社会配慮が欠如し、土地紛争、人権侵害、環境破壊が生じています。
ダーバンでは、既存にある京都議定書の下の排出権取引のあり方と共に、将来の新しい炭素市場の可能性に関しても議論されます。各国政府は、排出権取引の実態を理解し、真の排出削減に踏み切るべきです。
6.REDD+ と市場メカニズム
ダーバンでは、 REDD+( 途上国の森林減少と劣化からの排出削減)のプロジェクトへの資金確保の方法が決まる予定です。 REDD+ は、いくつものパイロット事業が実践されており、すでに、森林に依存して生きて来た先住民族やコミュニティの土地の権利や人権が脅かされるような深刻な問題が生じています。
REDD +事業により、莫大な資金と膨大な炭素(排出権)が国際市場で動くことになることから、各国政府、企業からも高い関心を集めています。しかしながら、一方でそれだけ環境社会への影響も大きくなることが懸念されています。森林保全は、市場メカニズムに依存せずに、まずは伐採を止めて、土地の権利を確保する権利ベースのアプローチであるべきです。
また、単一植林、産業植林は、生態系を破壊し、生物多様性も喪失してしまい、さらに土地紛争、先住民族や住民の移転等も生じさせるため、森林として見なされてはならず、気候変動対策とすべきではありません。
7.気候資金
途上国が持続可能な低炭素社会の構築に取り組むため、国際社会からの支援(気候資金)が必要だと考えられます。このための資金は、気候変動の歴史的な責任を負い、対策のための十分な資金力を持つ先進国が、「気候債務」として負担すべきです。
気候資金は、既存の ODA などの途上国支援と排出削減対策とは別個に、 UNFCCC の下に新規で追加的なものとして管理されなければなりません。
これまでところ、既存の途上国支援がダブルカウンティングされる、または転用されることがほとんどであり、莫大なニーズを満たすための安定的な財源確保は遅れています。
新しく設立された「緑の気候基金」には、ニーズに合う規模の信頼できる革新的な資金源を公共の財源から確保しなければなりません。気候基金は炭素市場を資金源としてはなりません。先進国の温室効果ガス削減義務の相殺を促す排出権取引は、地球温暖化防止につながらず、気候変動対策のための資金源とすべきではありません。
すでに多くの革新的な資金源が検討されています。例えば、市民の負担を出来るだけ減らし、国際金融取引からのわずかな税金から年間最大 6000 億ドルを確保することもできます。
気候資金の管理にも課題があります。世界銀行には、気候資金を管理する役割を与えるべきではありません。世界銀行は、気候変動の原因となる石油・ガス開発、そして森林伐採に対し融資し続けています。また、世界銀行の融資を受けた事業は、甚大な環境破壊、社会影響をもたらし続けているのです。このような機関に、気候変動資金を託すべきではありません。
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