日本・インドネシアの環境NGO5団体、阪和興業に森林を破壊するバイオマス燃料の輸入中止を要請ー「インドネシアの森は燃料ではない」
日本およびインドネシアの環境NGO 5団体(注)は11月6日、阪和興業株式会社に対し、インドネシアからの木質ペレット輸入を中止するよう求める要請書および質問書を提出しました。
インドネシアでは、木質ペレット生産の拡大を目的とした「エネルギー産業用造林(HTE)」が急速に広がっており、約130万haにも達しています。これにより天然林の伐採や単一樹種による人工林化が進行し、生物多様性の喪失、洪水リスクの増大、地域住民の生活や土地利用への深刻な影響が懸念されています。
とくにスラウェシ島北部のゴロンタロ州では、阪和興業が輸入している木質ペレットの供給地の一つとみられ、現地では「インドネシアの森は燃料ではない」と強い懸念の声が上がっています。
FWIキャンペーナーのアンギ・プトラ・プラヨガ氏は次のように述べています:
「森林には、人間の生命を気候危機から守るという重要な機能があり、それを守らなければなりません。森林を破壊するような行為に持続可能性はありません。FWIの現地調査の結果によると、天然林の木材利用が大規模に行われていることが明らかになっています。これはV-Legalの報告でも裏付けられています」
WALHIゴロンタロ事務局長のデフリ・ソフィアン氏は、現地のNGOの立場から以下のように指摘しています:
「私たちが、阪和興業と関係のあるコンセッションと重なっている2つの村で行った調査では、企業が地域住民の『自由意思による事前かつ十分な情報に基づく同意(FPIC)』を得ていないことが明らかになりました。地域住民は、森林破壊による洪水や地すべりの発生への懸念、生計に不可欠な森林へのアクセスを失うおそれがあることから、当初から事業を拒否してきました。さらに、この調査では、企業の主張とは対照的に、所得や雇用機会の改善は見られず、生物多様性の大幅な損失と河川水質の悪化が確認されました」
FoE Japanの森林キャンペーナーの三柴淳一は以下のように述べています:
「バイオマス発電は、”環境保全に資する”として、FIT制度によって促進されてきました。これにより、インドネシアの豊かな天然林の伐採や転換が生じていることは本末転倒です。日本の政府・企業はFITが、賦課金を原資とした公的な制度であることを再認識して、政策の見直しを行うべきです」
提出団体は、阪和興業に対して木質ペレット輸入の中止を求めるとともに、調達方針やデューデリジェンスの内容に関する情報開示を求めています。
注)提出5団体
- 国際環境NGO FoE Japan
- インドネシア環境フォーラム(WALHI)/FoEインドネシア
- WALHIゴロンタロ
- Forest Watch Indonesia
- Trend Asia

5団体が阪和興業に提出した要請書および質問書は以下の通りです。
2025年11月6日
阪和興業株式会社
代表取締役社長 中川洋一 様
インドネシアの森林を脅かす木質ペレットの輸入中止を求める要請書
長年、伐採や農園開発で減少を続けてきたインドネシアの豊かな天然林が、現在、「脱炭素」の名のもとに新たな危機に瀕しています。バイオマス発電や石炭混焼などの燃料である木質ペレット生産のためにエネルギー産業用造林(HTE)が設定され、天然林の伐採および人工林への転換が進んでいるのです。2019年に13のHTEの造成が開始され、2025年には57箇所に拡大しました。
インドネシアのNGOの試算では、現在、130万haもの森林がHTEに指定され、木質ペレット生産のために伐採や土地利用転換の危機に瀕しています。
とりわけスラウェシ島北部ゴロンタロ州の状況は深刻です。天然林の伐採や人工林への転換、それによる豊かな生物多様性の破壊や洪水リスクの増大、地元のコミュニティが従来行ってきた土地・森林利用の阻害が生じています。
貴社は、インドネシア・ゴロンタロ州から多くの木質ペレットを輸入されています。これらの木質ペレットは、日本のバイオマス発電所またはバイオマスを混焼する石炭火力発電所の燃料として使われています。しかし、木質ペレットの生産は、上記のように、大きな問題をはらんでいます。インドネシアの環境団体からは、「インドネシアの森は燃料ではない」という大きな懸念の声があがっています。
私たちはこの状況を踏まえ、これ以上、インドネシアの天然林を破壊することがないよう、貴社が木質ペレットの輸入を中止することを要請します。
また、別添の質問書に対してお答えいただけますと幸いです。なお、頂いたご回答は公開させていただきます。
以上
国際環境NGO FoE Japan
インドネシア環境フォーラム(WALHI)/FoEインドネシア
WALHIゴロンタロ
Forest Watch Indonesia
Trend Asia

インドネシアの木質ペレットに関する質問書
1. 貴社は、木質ペレットの輸入が現地の天然林の伐採、生物多様性の破壊、地元住民の土地・森林利用の阻害につながっていることについて、どのような認識をお持ちですか。またその認識をお持ちになった根拠となる情報はどのようなものでしょうか?
2. このような状況は、貴社の環境や社会に対する方針(*1, *2)、とりわけ自然環境や人権への配慮に整合しないのではないでしょうか。
*1 環境方針 行動指針
https://www.hanwa.co.jp/csr/environment/management.html
*2 阪和興業グループ人権方針
https://www.hanwa.co.jp/csr/society/human-rights.html
3. 貴社は、「輸入木質ペレットに対する合法性、持続可能性を証明するための自主的な取組」として、「合法性、持続可能性に準じた原材料調達方針の制定」「自主的デューデリジェンスの実施」等を行っているとしています。
1) 「合法性、持続可能性に準じた原材料調達方針」を開示していただけますか。
2) 「自主的デューデリジェンス」において、貴社がゴロンタロ州で製造された木質ペレットを調達する際に、以下についてどのような書類や情報を根拠にして確認されていますか?
①木質ペレットの生産による天然林への影響について
②伐採地周辺の村々および住民の方々への影響について
③(a)トレーサビリティ(由来証明)、(b)合法性、(c)持続可能性のそれぞれの確認について
以 上