FITバイオマス発電事業者にアンケート実施―多くが輸入燃料を使用、情報公開は限定的、ライフサイクルGHGは森林減少・劣化をカウントせず

FoE Japanは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の認定を受けた主なバイオマス発電事業者およびバイオマス燃料を混焼する石炭火力発電事業者に対し、バイオマス燃料の持続可能性に関するアンケートを実施し、その結果を公表しました。

アンケートは、発電出力1万kW以上のバイオマス発電事業所およびバイオマス燃料を混焼する石炭火力発電所のうちFIT認定を得ている計146の施設を対象に、2024年5月5日から2024年7月31日にかけて実施し、58の施設から回答を得ました(回答率約40%)。うち、バイオマス専焼は35件、石炭火力へのバイオマス混焼は19件、未回答は4件でした。主な結果は以下の通りです。

<主な結果>

  1. 輸入燃料を利用する発電所が多かった。
  2. 輸入燃料は、木質ペレットもしくはPKS(パームやし殻)であり、パーム油などを用いているという回答はなかった。
  3. 木質ペレットの輸入先(燃料の原産国)で最も多かったのはベトナム、次いでカナダであった。持続可能性の確認方法として、最も多かったのは「森林認証制度」であった。
  4. 木質ペレットのトレーサビリティについては、回答のすべてが「確認している」というものであったが、「伐採された森林の位置まで確認できる」は一部にとどまった。
  5. FIT事業計画策定ガイドラインでは、輸入木質ペレット等について、「発電所で使用した 認証燃料の量及びその 認証燃料固有の識別番号」をホームページ上での公開を求めているが、ほとんどの発電所が公開していないという回答であった。また、ガイドラインの記載はないが、燃料の持続可能性確認の上で重要な情報である生産地情報について、ほとんどが情報公開を行っていないことが明らかとなった。
  6. PKSについては、ほとんどがインドネシアとマレーシアからの輸入であった。持続可能性の確認方法は、ほとんどが「認証」という回答であった。
  7. FIT事業計画策定ガイドライン上、PKSについても「発電所で使用した認証燃料の量及びその認証燃料固有の識別番号について、 自社のホームページ等で情報公開すること」としているが、公開しているという回答はなかった。
    一方で、ガイドラインには記載がないが、持続可能性確認の上で重要となる、生産地情報や、搾油工場のリストの公開については、一部の事業者が取り組んでいる点は、実質的な透明性の確保を行っていることとなり、評価できる。
  8. バイオマス燃料のライフサイクルGHGに関しては、回答の約7割が「算定している」というものであったが、算定結果をウェブサイト上で公開しているという回答は一部にとどまった。
  9. 「森林の減少・劣化に伴う炭素排出についてカウントしているか」という問いに関しては、ほとんどが「カウントしていない」と回答した。

FITの事業計画策定ガイドラインでは、バイオマス燃料の持続可能性の確認や情報公開、トレーサビリティの確保、ライフサイクルGHG評価について規定していますが、十分なものとはいえません。今回のアンケートで、同ガイドラインの情報公開に関する要求事項が、順守されていない例も多いことが明らかになりました。詳しくは以下をご覧ください。

<詳細>

1.輸入燃料利用が多く、木質ペレットとPKSが主体

燃料について尋ねたところ、輸入燃料のみを使用しているのが31件、輸入燃料と国産燃料を使用しているのが20件であり、合計51件がなんらかの輸入バイオマス燃料を使用していた。国産のみを使用しているのは2件にとどまった。

燃料の種類について尋ねたところ、最も多かったのが輸入木質ペレット(38件)、次いで輸入PKS(パームやし殻)(33件)、国産木質チップ(22件)であった。パーム油、パームトランク、その他の輸入バイオマス燃料とした回答はなかった。

2.輸入木質ペレット

1)原産国

「輸入木質ペレットを使用している」と回答した施設の2023年の主な輸入先(原産国)は、最も多かったのがベトナム(11)で、次いでカナダ(6)、オーストラリア(5)、アメリカ(4)と続いた。東南アジア(5)、北米(5)といった国名を限定しない回答もあった。木質ペレットを使用している38件中、20件が原産国について何らかの回答をしており、前回調査よりも回答率は高くなった()。

2)持続可能性の確認手法

「輸入木質ペレットを使用している」とした施設に対して燃料の持続可能性の確認手法について尋ねたところ、「森林認証制度」とする回答が最も多く32件であった。「森林・林業・木材産業関係団体の認定による証明」「独自の取組」とする回答は、それぞれ5件であった。独自の取組の内容としては、トレーサビリティレポートの入手、現地サプライヤー訪問、定期的デューデリジェンスの実施などが挙げられた。「森林認証制度」と回答した32件中、具体的な森林認証制度の名称としてFSCと回答したのが最も多く(22)、次いでPEFCであった(5)。FSC-CoC、PEFC-CoCという回答もあった。CoC認証は流通過程での分別管理等の認証であるため、森林の持続可能性を認証するFM認証と併せて使用することが前提であるため、サプライヤーに対して、CoC認証を取得しているのか確認しているだけであれば、実際に認証材を購入していることにはならないことに留意が必要である。

3)トレーサビリティの確認

「輸入木質ペレットを使用している」とした施設に対して、トレーサビリティに関して尋ねたところ、回答を得られた17の設備のすべてが「トレーサビリティを確認している」と回答した。トレーサビリティの確認方法としては、「サプライヤーへの問い合わせ」が9件、「その他」が9件であった。「その他」の内容としては、ヒアリングや現地訪問が挙げられた。「トレーサビリティをどこまで遡って確認しているか」という問いに対しては、回答を得られた16件中、「加工された工場まで確認できる」が最も多く8件、次いで「生産国まで確認できる」が4件であった。「伐採された森林の位置まで確認できる」は2件にとどまった。トレーサビリティの確認の重要性は認識しつつも、伐採地までのトレーサビリティは確立できていない実態をうかがわせた。

4)情報公開

「輸入木質ペレットを使用している」とした施設に対して、情報公開について尋ねたところ、回答を得られた15件のうち、「生産地情報を自社サイトで公開している」は2件、「発電所で使用した認証燃料の量及びその認証燃料固有の識別番号を自社サイトで公開している」は1件にとどまった。「第三者認証スキーム等の名称を自社サイトで公開している」は8件であった。

FIT事業計画策定ガイドラインにおいては、「第三者認証スキーム等の名称」のみならず「発電所で使用した 認証燃料の量及びその 認証燃料固有の識別番号について、自社のホームページ等で情報公開すること」としており、ほとんどの施設においてガイドラインの要求事項が満たされていないこととなる。

また、ガイドラインの記載はないが、燃料の持続可能性確認の上で重要な情報である生産地情報については、ほとんどが情報公開を行っていないことが明らかとなった。

3.輸入PKS(パームやし殻)

1)原産国

「輸入PKSを利用している」とした施設に対して、輸入したPKSの原産国を尋ねたところ、回答を得られた16件のうち、そのほとんどすべてが、インドネシア(14)、マレーシア(9)と回答した(複数回答あり)。国名を特定せず、東南アジアという回答が2件あった。

2)持続可能性の確認方法

「輸入PKSを利用している」とした施設に対して、持続可能性の確認方法について尋ねたところ、22件の回答のうち、19件が「認証制度」と回答。「その他」(3件)の内容としては、「燃料輸入商社、燃料サプライヤーを通じ、流通経路・フローの提出を求め、発生地点以降の流通経路を把握する」「パーム油認証制度に基づく認証取得済み工場(認証工場)からの調達を推奨する」などの回答が得られた。

認証制度は、回答した18件すべてが「GGL(等)」であった。

3)トレーサビリティの確認

「輸入PKSを利用している」とした施設に対して、トレーサビリティを確認しているか尋ねたところ、11件すべてが「確認している」という回答であった。

トレーサビリティをどこまで確認しているかという問いについては、回答が得られた10件のうち、「加工された工場まで確認できる」が9件であった。

4)情報公開

「輸入PKSを利用している」とした施設に対して、情報公開について尋ねたところ、回答を得られた16件のうち、「第三者認証スキーム等の名称を自社サイトで公開している」が7件、「生産地情報を自社サイトで公開している」が4件、「その他」6件であった。「その他」の内容は「搾油工場リストをHP上で公開」「PKS調達量およびPKS発生地点一覧をHPで公表している」などの記述があった。

FIT事業計画策定ガイドライン上、「第三者認証スキームの名称」「発電所で使用した認証燃料の量及びその認証燃料固有の識別番号について、 自社のホームページ等で情報公開すること」としており、後者については公開しているという回答はなかった。

一方で、ガイドラインには記載がないが、持続可能性確認の上で重要となる、生産地情報や、搾油工場のリストの公開については、一部の事業者が取り組んでいる点は、実質的な透明性の確保を行っていることとなり、評価できる。

認証スキームの名称や識別番号が公開されても、実際に生産地の状況を第三者が確認することは困難であり、透明性が確保されたとは言い難い。今後のガイドラインの改定が待たれる。

4.バイオマス発電事業のライフサイクルGHG

バイオマス燃料のライフサイクルGHGを算定しているか尋ねたところ、回答が得られた41件のうち、「算定している」が29件、「今後、算定予定」が10件、「算定の予定はない」という回答が2件であった。

また、算定結果をウェブサイトで公開しているかという問いに対しては、得られた34の回答のうち、「公開している」が19件、「公開しておらず、公開の予定はない」が7件、「今後、公開予定」が8件であった。

算定方法については、回答数30のうち、「「FIT/FIP制度におけるバイオマス燃料のライフサイクルGHG排出量の規定値」に基づき算定」が25件、残りの5件も「FIT/FIP制度におけるバイオマス燃料のライフサイクルGHG排出量の規定値」に加え、サプライヤーからデータを取得し個別計算と組み合わせて算定しているという回答であった。

森林の減少・劣化に伴う炭素排出についてカウントしているか」という問いに関しては、回答数15のうち、ほとんどが「カウントしていない」と回答(12)。一方で、「カウントし、事業のライフサイクルGHGに含めている」とする回答が2件、「カウントしているが、事業のライフサイクルGHGに含めていない」とする回答が1件あった。

また、燃焼におけるCO2排出についてカウントしているかという問いに対しては、回答が得られた15件のうち、「カウントしていない」が10件。「カウントし、事業のライフサイクルGHGに含めている」が4件、「カウントしているが、事業のライフサイクルGHGに含めていない」が1件であった。

バイオマス発電に関するGHG排出に関しては、森林の減少・劣化によるCO2排出もしくは燃焼におけるCO2排出のどちらかが評価されるべきである。前者は、その状況の把握や評価が難しいが、現実には、生産地では、森林の皆伐も含む森林減少・劣化の事例も報告されている。

以上

注)2022年5月に実施した前回調査においては、輸入木質ペレットもしくは木質チップを現在利用している、もしくは利用予定と回答した発電事業者36社のうち、原産国を回答した事業者は8社のみであった。

 

関連する記事

【ウェビナー】JERA武豊火力発電所の爆発事故から考える、石炭火力へのバイオマス混焼

バイオマス

【NGO 共同声明】石炭火力発電のバイオマス混焼および専焼化はグリーンウォッシューー気候変動を加速させ森林生態系を破壊する

バイオマス

米カリフォルニア州当局に木質ペレット工場新設事業に反対するコメントを提出、FoE Japan含む米国内外の109団体が署名 (6/30)

バイオマス

「石炭火力のバイオマス混焼やめて」 26の環境NGOがADBに公開書簡-森林や生物多様性、炭素蓄積、コミュニティを損なう

バイオマス

関連するトピック

関連するプロジェクト