「豊かな森が伐採され、生物多様性と炭素貯蓄が失われる」ーカナダの森林専門家や環境NGOら、経産省に輸入バイオマス支援中止を求める書簡提出 

バイオマス2023.11.30

伐採の危機にさらされるカナダ・ブリティッシュコロンビアの原生林(写真:FoE Japan)

日本のバイオマス発電促進による燃料需要の拡大により、カナダの原生林の伐採が進んでいる実状を訴えるために来日中した、カナダの森林専門家らが、29日、バイオマス発電の支援の中止を求める公開書簡を経済産業省に提出しました。書簡には、FoE Japanなど、日本、カナダ、アメリカ、EU、インドネシア、マレーシア、オランダ、ガーナ、チリなどの19の環境NGOが連名しました。

公開書簡を提出したのは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州で活動する森林攪乱生態学者のミシェル・コノリーさんら。ミシェル・コノリーさんは、先住民族コミュニティとともに野生生物と気候に配慮した森林施業の構築に取り組むかたわら、環境NGO「コンサベーション・ノース」を運営しています。

経産省に書簡を提出するカナダの森林専門家ら

固定価格買取制度が導入された2012年以降、日本の木質ペレットの輸入量は急増しています。2022年、日本はカナダから130万トン以上の木質ペレットを輸入しました。コノリーさんは、「木質ペレットの需要をまかなうため、ブリティッシュコロンビア州の豊かな原生林が伐採されているカリブー(トナカイの仲間)を含む多様な野生生物の生息地が脅かされている。人工林への転換も進められているが、もとの天然林とはまったく別のものである。“持続可能“という言葉とかけ離れた実態に目を向けてほしい」と語りました。

また、同席したビクトリア在住のジャーナリストで資源政策アナリストのベン・パーフィットさんは、「カナダで生産された木質ペレットの55%は日本に輸出している。豊かな森林を切りつくしたために、伐採速度は急激に減少してきている。森林を保護すべきだという市民の声も高まってきている。日本企業がこのままカナダの木質ペレットに依存し続けることは、リスクが高い」と指摘しました。

書簡では、「燃料需要の拡大は森林の減少・劣化の原因となり、生物多様性を脅かすのみならず、森林や土壌の炭素貯留を減少させる」とし、気候や森林を破壊する輸入バイオマス燃料を使うバイオマス発電への支援を中止することなどを求めています。 公開書簡の全文は以下からご覧ください。

オリジナル(英語)はこちらから。

2023年11月29日

公開書簡:気候と森林を破壊するバイオマスへの支援の中止を

経済産業大臣 西村 康稔 様

日本が2012年にFIT制度を導入して以降、日本のバイオマス発電は急増しました。燃料の大半は海外からの輸入に依存しています。

燃料需要の拡大は森林の減少・劣化の原因となり、生物多様性を脅かすのみならず、森林や土壌の炭素貯留を減少させることで、気候変動をかえって加速させる恐れがあります。

2022年、日本はカナダから140万トン以上の木質ペレットを輸入しました。木質ペレットの生産のため、ブリティッシュコロンビア州の豊かな温帯雨林が伐採されています。100人以上の科学者が[1]最近、産業伐採によるカナダの原生林の劣化の停止を求め、27のカナダの著名な自然保護団体が、バイオマスへの補助金と木質ペレット輸出の停止を求めています[2]。

長い時をかけて形成された貴重な森林は、カリブーやクマなどの大型哺乳類を含む数多くの野生生物が生息し、生物多様性の宝庫であるばかりか、樹木や落ち葉、倒木や土壌には、大量の炭素が蓄えられています。このような森は、一度伐採されれば、回復には何百年もの歳月を必要とします。日本のエネルギー需要をまかなうためにこうした森を伐採することは許されません。

実際には燃焼に伴ってCO2を排出しているのにもかかわらず、バイオマス発電の運転時の排出がカウントされていないことは意思決定をゆがめています。木材燃焼の排出係数は石炭をうわまわります。それにもかかわらず、バイオマス発電は「カーボンニュートラル」としてFIT制度等により促進され、石炭火力へのバイオマス混焼、石炭火力からのバイオマス専焼への切り替えが政策的に支援されています。

現在のFITの事業計画策定ガイドラインは、持続可能性の確認を要求事項としてはいますが、実際には、生産地における森林減少・劣化に歯止めをかけるようなものではありません。

輸入木質バイオマスについては、2004年に策定された林野庁の「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」を参照することとされています。しかし、これは、FIT制度が始まる前のものであり、確認手法も、「関係団体による認定」「個別企業の独自の取組」も許容しており、事業者任せとなっている上、木質バイオマスの持続可能性の確認に関して、具体的な基準は示されていません。

気候や森林の危機に強い関心を有するカナダおよび日本の環境NGOとして、私たちは以下を要請します。

  • 気候や森林を破壊する輸入バイオマス燃料を使うバイオマス発電への支援を中止すること
  • バイオマス発電の運転時のCO2排出も、GHG評価に含めること
  • 森林減少・劣化を引き起こす輸入バイオマス燃料をFITの対象事業として認めないこと
  • カスケード原則を採用し、バイオマス燃料として丸太の利用を禁止すること
  • 石炭火力へのバイオマス混焼や石炭火力からバイオマス専焼への転換を促進しないこと

Conservation North- Canada
Friends of the Earth Japan –Japan
Mighty Earth- United States
HUTAN Group -Japan
AbibiNsroma Foundation- Ghana
Nature Nova Scotia-Canada 
Pivot Point – USA
Federation Against Biomass Powerplant – Netherlands
De Klimaatcoalitie – Netherlands
EDSP ECO – Netherlands
Trend Asia – Indonesia
Biofuelwatch, Europe/USA
Colectivo VientoSur – Chile
Sahabat Alam Malaysia (Friends of the Earth)-Malaysia
Global Environmental Forum – Japan
Kiko Network – Japan
Landelijk Netwerk Bossen- en Bomenbescherming – Netherlands
Natural Resources Defense Council – United States
Greenpeace Japan – Japan

[注]

1.Scientists call on Canada to focus on logging for forest protection | Canada’s National Observer: Climate News

2. An open letter to Hon. Steven Guilbeault and Hon. Jonathan Wilkinson on utility-scale electricity generation from forest-based biomass – Stand.earth

【参考データ】

 

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