何が問題? G-Bio石巻須江バイオマス発電所

バイオマス2022.10.17
事業中止を求める地元住民によるスタンディング

宮城県石巻市須江地区で着工されようとしているG-Bio石巻須江バイオマス発電所。出力102,750キロワットで、液体燃料を使うものとしては国内最大規模です。しかし、近くに小学校や保育所があり、大気汚染や燃料用タンクローリーなどの交通量増大の懸念から、地域住民は猛反対。地元自治体も事業への懸念を示しています。 問題はそれだけではありません。環境影響評価が終了し、今年8月にも建設がはじまる予定にもかかわらず、燃料として何を使うのか明らかではないのです。

概要

名称:G-Bio石巻須江バイオマス発電所
事業者:合同会社 G-Bio石巻須江[1]
事業地:宮城県石巻市須江地区
規模:出力102,750kW(液体燃料を使うバイオマス発電としては最大規模)
燃料:不明(事業者は住民に「ポンガミア油」と説明。FIT申請はパーム油。環境影響評価はポンガミア油前提で実施)

経緯

2017年2月事業者がパーム油を燃料としてFIT認定を取得
2018年12月宮城県環境影響評価条例に基づき、県に方法書を提出
2021年2月地元住民団体(「須江地区保護者の会」など)、事業中止を県に要望。反対署名9,751筆を提出。>参考記事(河北新報2021.2.11「石巻・須江地区バイオマス発電計画 地元住民、県に中止要望」)
2021年3月石巻市、本事業に関して、地域住民の理解を得ることを義務化すべきという趣旨の意見書を可決
2021年4月地元住民が事業に抗議してスタンディングを実施
2021年6月地元住民団体、FoE Japanなどの環境NGOが、経済産業省にFIT認定取り消しを求める要請書を提出
2021年7月事業者が開催した説明会で住民らの反対意見が相次ぐ
2021年8月住民3団体、事業撤回を求め、石巻市長に申し入れ 
参考記事)河北新報021年8月21日「須江の液体バイオマス発電所 住民3団体、市長に計画撤回求め要望書
2021年10月宮城県、再生可能エネルギー発電施設に関して、地域との合意形成を明確に位置付けるなどの法整備を求める意見書を可決
2021年11月経済産業省バイオマス持続可能性ワーキンググループ第13回にて、ポンガミアは、燃料としては認められないことが資料に明記される
2022年3月地元住団体、本事業の環境影響評価のやり直しおよびFIT認定取り消しを県および経済産業省に要請
2022年3月環境影響評価書が公開・縦覧に(3月29日~5月8日)
2022年8月着工予定

問題点

1.以下の理由から、住民が強く反対している

通学路。この見通しの悪い道を燃料運搬トレーラーが一日33台通る。道路幅は狭く、ダンプと普通車がすれ違えない状況。
  • 住宅地のほぼ中心にあり、地区全土に影響が及ぶ
  • 小学校、中学校、保育所のすぐそばである
  • 見通しの悪い通学路を燃料運搬トレーラーが一日に33台も通る。
  • 排気ガス(SO2、ばいじんなど)の影響が懸念される
  • 土砂災害危険地区に隣接する

2.燃料が不明

燃料について、事業者は、経済産業省には「パーム油」として申請を出していながら、その後、住民には「ポンガミア油を使う」と説明した。また宮城県条例に基づく環境影響評価はポンガミア油で実施した。
しかし、現段階で経済産業省に申請変更は行っていないため、FIT申請上はパーム油のままである(2022年3月現在)。

着工直前になっても燃料は不明である。

3.燃料生産段階の環境社会影響

アブラヤシ・プランテーション開発のために、伐採された山
(マレーシア・サラワク州)©FoE Japan

パーム油を使うにしても、ポンガミア油を使うにしても、環境社会影響は大きい。

ポンガミアを使う場合は、モザンビークの広大な土地を日本の発電用燃料生産のために囲い込むことになる。FoE Japanはポンガミアの栽培場所や栽培計画に関して問い合わせたが、G-bioは回答しなかった。

パーム油を使う場合は、もしフル稼働するとすれば、年間推定17万トンものパーム油を燃やすことになる。これは日本のパーム油輸入量(2019年77万トン)の2割以上となる。

パーム油の原料となるアブラヤシ生産のための農園拡大は、東南アジアにおいて熱帯林減少の最大の要因として指摘され続けてきた(詳しくはこちら)。

熱帯林や泥炭地の開発による、生物多様性の減少や温室効果ガスの発生に寄与し、影響が大きい。

参考

G-Bioイニシアティブは宮城県角田市のパーム油発電所の計画に携わり、同発電所を旅行大手エイチ・アイ・エスが出資するH.I.S. SUPER電力に譲渡した[2]。しかし、同発電所が大量のパーム油を燃料として燃やすことなどから、内外の環境NGOなどから「熱帯林を破壊する」として批判の声があがった。H.I.S. SUPER電力は事業を進めたが、パーム油の調達価格の高騰などもあり、同発電所は運転開始後まもなく停止し[3]、その後も発電がほとんどできていない。


[1] 代表者は、G-Bioイニシアティブ(東京都千代田区)。

[2] 日刊建設新聞2019年2月1日「石巻でバイオマス発電 21年度から発電所建設へ (G-bio石巻須江)

[3] RIMマーケットニュース2021年5月25日「パーム油発電=エナリスなど稼働停止相次ぐ、燃料価格の高騰で

 

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