日本のLNG転売とJBICの温室効果ガス排出量に関する研究結果発表: JBICの排出量は世界上位国規模

国際環境NGO FoE Japanは本日、近年拡大する日本のLNG転売に関する研究報告、加えて国際協力銀行(JBIC)による海外化石燃料事業に対する資金支援が伴う温室効果ガス排出量についての研究報告を発表しました。

独立研究機関Datadeskが委託調査を実施したLNG転売に関する研究では、Kplerの航行・契約データを統合し、日本企業関与した全LNGカーゴを長期契約/スポット別に分類して、合計32社の2020–2024年の転売フローを定量化し、主要転売先国や転売量など日本のLNG転売の全貌を明らかにしました。

温室効果ガス測定の専門家が実施した研究「日本の公的投融資がもたらす気候変動影響:JBICの化石燃料支援に伴う温室効果ガス排出量と1.5度目標の整合性」はJBICが関与する1999〜2024年の化石燃料案件を事業単位で網羅し、各事業について利用可能な最も最適な推定値を用いてJBICのファイナンスド・エミッションを算定しました。

FoE Japanは、各研究についての要約ブリーフィングも同時に発表しました。

JBICの温室効果ガス排出量に関する報告書のポイント

  • JBICによる温室効果ガス排出量は2024年に約4億800万トン(CO₂換算、GWP20、動員排出量)。世界第20位の排出量に相当し、フランス、イギリス、イタリア等の国々の年間排出量を上回る
  • JBICが資金支援した化石燃料事業によって排出された温室効果ガスを全て考慮に入れた場合、2024年の年間排出量は合計で約19億5千万トン(GWP20)。世界第5位に相当
  • JBICの年間温室効果ガス排出の推移(19年比での2030年時点での想定排出削減量は27%減。動員排出量)は、IPCCが求める削減率(19年比で2030年時点に43%減)に届かず、1.5度目標に整合していない。

LNG転売に関する報告書のポイント

  • 「エネルギー安全保障」のためとして海外LNG事業に対して公的資金支援を行う一方、2023年度にはLNG最大輸入相手国であったオーストラリア(同年の日本の総LNG輸入量の41%)からの輸入量を上回る量を転売IEEFA著、FoEJapan訳の報告書も参照)。
  • JBICが多額の公的資金支援を提供した米国のキャメロンLNG事業から日本企業が取り扱ったLNGも64.5%が転売。新規化石燃料ガス支援がいかに不必要かを示す。
  • 最大転売先国は中国(2020–2024年で約1,458万トン)で、これは日本の2023年度国内ガス需要の約2割超に相当。

提言

  • 日本政府及びJBICは、新規の化石燃料ガス事業に対する資金支援を例外無く終了するべき。LNGの大規模転売は新規ガス事業支援が必要ないことを示しており、JBICの排出量は既に1.5度目標に整合していない。

執筆者等コメント

長田大輝 (FoE Japan 開発金融・環境キャンペーナー)
「この調査結果は、日本の公的金融が「エネルギー安全保障」という名目のもとで、実際には汚染・リスク・ガス依存を海外へ輸出していることを示しています。日本政府とJBICは、海外での化石燃料依存を強化するのではなく、国内外での真のエネルギー移行を支援する方向へ資金を転換すべきです。」

ダニエル・ホレン・グリーンフォード博士 (SSHRC:カナダ社会・人文科学研究会議 ポストドクトラル・フェロー マギル大学)

「私たちの調査によれば、JBICの投融資は、今世紀末までに地球温暖化を1.5℃以内に抑えるために必要な取り組みと整合していません。JBICが引き続き化石燃料事業に投融資を続けている傾向は、金融業界自身が設けているより緩やかで不十分な基準とさえ矛盾しています。基準を自ら緩めたにもかかわらず、その整合性がいまだに取れていないのです。」

ルイス・ゴッダード(Datadesk 研究責任者)

「日本国内のガス需要が減少しているにもかかわらず、こうした攻撃的な戦略を追求し続けることで、経営陣や政策立案者は、世界のガス生産のさらなる持続不可能な拡大を助長し、太平洋の国々を、変動が激しく信頼性の低いエネルギー源への長期的な依存に縛りつける危険を冒しています。」

発表資料一覧

・ダニエル・ホレン・グリーンフォード博士、「日本の公的投融資がもたらす気候変動影響:JBICの化石燃料支援に伴う温室効果ガス排出量と1.5度目標の整合性

・要約ブリーフィング「日本の見えざる排出責任:化石燃料への公的支援に伴う温室効果ガス排出量

・Datadesk、「日本のLNG転売:公的資金が支える転売の実態をデータで読み解く

・要約ブリーフィング「転売されるLNG:新規海外LNG事業への公的支援は必要か

 

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