アジア開発銀行(ADB)の原発支援解禁に反対-国際署名6,101筆を提出

FoE Japan、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、原子力資料情報室、原子力市民委員会、グリーン・アクションの5団体は、11月12日、アジア開発銀行(ADB)に対して、原発の融資や支援方針の解禁を撤回するよう求める署名(個人6,101筆、団体賛同100)を提出しました。署名は、日本、アメリカ、ドイツ、モンゴル、インドなどを含む世界48の国々から寄せられ、現在も継続中です。

ADBは、各国政府が出資する国際的な金融機関で、アジア・太平洋地域の途上国の経済開発・貧困削減・インフラ整備等を支援しています。日本はアメリカと並び最大の出資国です。これまでADBは、①核拡散、②安全性、③放射性廃棄物、④高いコスト――などを理由として、原発には融資しない方針でした。しかし、ADBのエネルギー政策の見直しの一つとして、従来の「原発には融資しない」という文言を削除し、環境整備等の支援を盛り込んだ案が、今年8月に公開され、11月24日に開催予定の理事会に提案されようとしています。

署名では、原子力発電がもつ核拡散リスクや核廃棄物の問題、高コストと長工期、先住民族の権利侵害や環境汚染、戦争やテロのターゲットとなる危険性などを指摘しています。また、気候危機への迅速な対応が求められる中で、原発は「遅くて高く、危険な選択」であり、再生可能エネルギーの普及を妨げる「機会費用」を伴うとしています。

ADBは原発支援方針を打ち出す理由の一つとして、SMRなど新技術の進展をあげていますが、SMRは従来型の原発と比しても設備容量(MW)あたりのコストが高いこと、燃料が軍事転用されやすいことなど多くの問題を有しています

5団体はまた、ADBが重大な政策変更を行おうとしているのにもかかわらず、それに応じた協議手続きがとられていないこと、11月3日にADBが公表した「受領したコメントと回答」において、5団体を含めた多くのNGOが提起した問題に関して、意味のある回答がされていないどころか、いくつかの点(核拡散、テロや戦争リスク、情報の秘匿など)については掲載すらされていないことを批判しています。また、ADBの協議会合において、「原発事故被害者団体連絡会」の大河原さきさんが「ADBは原発支援方針を決定する前に福島原発事故の実態を直視するべき。福島での公聴会を開催してほしい」という趣旨の発言を行い、その後書面でも提出しましたが、これについても掲載されていませんでした。

FoE Japan理事の満田夏花は、「本来、ADBが真っ先にきかれなければならない原発事故被害者の声が、なかったことにされてしまっている。このような状況でADBの理事が判断を行うことはあってはならない」と批判。また、国内外で公的な資金で原発を支援していく一連の動きについては、「民間資金が集まらないことの裏返し。高コスト高リスクの原発に、公的資金を費やすことは正当化されない」としました。

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)プログラムディレクターの田辺有輝は、「2021年のエネルギー政策において、原発に融資せずとした4つの障壁(核不拡散、廃棄物管理、安全性に関するリスク、極めて高い投資コスト)を克服するための具体的な方針が示されていない。IAEA等の協力を得るといった回答にとどまっている」ことを指摘しました。

原子力資料情報室事務局長の松久保肇は、「ADBは小型モジュール炉(SMR)に期待をかけているが、SMRは設備容量(MW)当たりの価格は通常炉よりも高い。ADBの予算を食い尽くし、本来、支援しなければならない分野の支援ができなくなる。またSMRは一般の原子炉よりもウラン濃度が高い核燃料を使うことが多いため、軍事転用のリスクを高める」と指摘しました。

11月13日に開催された記者会見の資料およびアーカイブ映像を以下に掲載しました。

▼記者会見資料

満田資料 ・田辺資料 ・松久保資料

▼アーカイブ映像

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