ADBの原子力に関する政策変更に関する追加要請および質問書を提出:「原発支援は無責任」
本日、国際環境NGO FoE Japan、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、原子力資料情報室、原子力市民委員会、グリーン・アクションの5団体は、アジア開発銀行(ADB)に対して、原発への支援を解禁するADBの方針に関して、追加の要請および質問書を提出しました。
ADBは現在、エネルギー政策の見直しを行っています。この一環として、「原発に融資しない」としていた記述を削除し、原発への支援を打ち出そうとしています。
現行政策では、ADBが「原発に融資しない」としている理由として、「核拡散、廃棄物、安全に関連するリスク」「ADBの資源と比して大変高額なコスト」を挙げています。しかし、これらの状況は現在も変わっておらず、それにも関わらず、なぜ政策変更を行うのかについてADBは説明できていません。また、途上国が、解決できない問題を多く抱える原発を導入することをADBが支援することは、無責任ではないでしょうか。
詳しくは以下をご覧ください。
2025年8月22日
ADBの原子力に関する政策変更に関する追加要請および質問書の提出について
アジア開発銀行(ADB)
総裁 神田 眞人 様
理事各位
先日、書簡をお送りさせていただきました通り(添付参照)、私たちはADBが、現在のエネルギー政策から原子力に融資をしないという規定を削除し、原子力分野に対して支援を行う方針に転換することに対して深く憂慮しております。
私たちは、8月21日に開催されましたバーチャルでのコンサルテーション会合に参加し、懸念を表明するとともに、以下のようないくつかの重要な点について質問させていただきました。しかし、お答えはいただけませんでした。私たちの質問のみならず、参加者からあげられた根本的でかつ重大な質問に対するADBのお答えは、残念ながら意味のあるものではありませんでした。
貴行が、このように重大な方針転換を行うのであれば、まずは、最低限これらの点に関して、明確な説明をされることが必要だと考えております。
改めて、書面にて質問を提出させていただきます。
- ADBが現在まで「原発に対して融資をしない」という方針をとってきた理由として、「核拡散、廃棄物、安全に関連するリスク」「ADBの資源と比して大変高額なコスト」を挙げている。これらの状況は現在も何ら変わっていない。それなのに、なぜ、方針を変更するのか。
- 小型モジュール炉(SMR)の進展に大きな期待を寄せているが、SMRは、既存の原子炉と比して、さらに高価であり、核拡散のリスクも大きい。こうしたことは検討されたのか。
- 原発の運転によって生じる核廃棄物は何万年も管理が必要であり、日本を含むほとんどの国で処分地の選定すら行われていない。このような状況で、途上国に対する原発への支援は正当化できるのか。
- ADBは、「途上国が原発を選択するのであれば、それを支援する」と説明しているが、途上国の選択は当然、支援者の存在が前提となる。リスク・コストともに高く、乗り越えられない課題を多く有する原発を支援することは、無責任ではないのか。
- ADBは個別の原子力建設事業への融資も行うことになるのか。
- 原発の部分は現在の政策を抜本的に変更するものであり、「Amendment」と称する軽微な修正ではない。現在のプロセスで進めることは不適切なのではないか。
ご多忙中とは存じますが、先日の書簡に添付した質問にあわせてご回答をいただければ幸いです。
また、本件に関する日本の市民社会の関心は高いこと、原発事故を経験した日本社会の声を聞き取ることは貴行にとって必要不可欠であることに鑑みて、改めて通訳を入れた形で日本社会向けのコンサルテーション会合を開催していただけますよう、お願いいたします。
添付:アジア開発銀行(ADB)原子力支援ポリシー変更に関する要請書および質問書
国際環境NGO FoE Japan 事務局長 深草亜悠美
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)プログラム・ディレクター 田辺有輝
原子力資料情報室 事務局長 松久保肇
原子力市民委員会 事務局長 村上正子
グリーン・アクション 代表 アイリーン・美緒子・スミス
cc: 財務大臣 加藤 勝信 様
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