【現地NGOプレスリリース】石破首相訪比中に気候問題に取組む団体が日本のAZECの枠組みを非難ー化石燃料支援の停止を日本に求める

4月29日、フィリピン首都マニラのマラカニアン宮殿(大統領府)近くでアクションを行うAPMDD、PMCJのメンバー(写真:APMDD提供)

4月29日、石破首相のフィリピン訪問に合わせ、APMDD(Asian Peoples Movement on Debt and Development)や気候正義のためのフィリピン運動(PMCJ)等の市民団体がフィリピン大統領府近くでアクションを行い、日本が化石燃料ベースの技術を推進しているアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想は脱炭素化を装った「グリーンウォッシュ」であり、真に必要な対策を遅らせるものだと非難の声をあげました。ガス、水素、アンモニア、炭素回収・貯留(CCS)といった化石燃料の利用を長引かせる『誤った気候変動対策』への支援ではなく、地域コミュニティのニーズに基づく、迅速、公正かつ公平なエネルギー移行への支援が日本に求められています。

以下は、現地の市民団体によるプレスリリースの和訳です。

石破首相訪比中に気候問題に取組む団体が日本のAZECの枠組みを非難化石燃料支援の停止を日本に求める

2025年4月29日

プレスリリース

APMDD(Asian Peoples Movement on Debt and Development)

日本の石破茂首相が4月29日から30日までフィリピンを訪問することを受け、市民団体は日本が主導するアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)について、地域のクリーンエネルギーへの移行を阻害する「グリーンウォッシュ」の取り組みであると警鐘を鳴らしている。

社会正義運動の地域連合体であるAPMDD(Asian Peoples Movement on Debt and Development)は、AZECが脱炭素化を装って化石燃料ベースの技術を推進していると非難した。「AZECは、日本が化石燃料技術を売り込み、アジアのエネルギー依存から利益を得るためのまやかしの枠組みである」とAPMDDのコーディネーターであるLidy Nacpilは述べた。

「AZECの化石燃料ベースの技術(特にLNG(液化天然ガス)、石炭火力発電所でのアンモニア混焼、ガス火力発電所での水素混合、炭素回収・貯留(CCUS))への支援は、気候の破局を回避するために世界が切実に必要としている、石炭とガスの完全な段階的廃止と再生可能エネルギーの段階的導入を遅らせるだけだ。日本の誤った対策は高コストで、実証されていないものであり、風力や太陽光のような真の対策から遠ざけるものだ」とNacpilは指摘した。

APMDD、気候正義のためのフィリピン運動(PMCJ)、Fossil Free Japan(FFJ)は、日本政府の「AZEC外交」を「危険信号」であり、懸念すべきものであると捉えている。

今年初めにマレーシアとインドネシアを訪問した石破首相は、AZECに対する日本のコミットメントを再確認し、化石燃料関連技術に関する協力強化を宣言した。火曜日に石破首相とマルコス・ジュニア大統領が会談する際にも、フィリピン政府と同様の取り決めがなされる見込みだ。

第3回AZEC閣僚会合はマレーシアで開催される予定であり、AZEC首脳会合は今年後半に開催される日ASEAN首脳会議の際に予定されている。APMDDとPMCJは、東南アジアの指導者たちに対し、このイニシアティブへの参加を再考するよう求めている。また、日本がコミュニティベースの再生可能エネルギーシステムに資金を振り向け、気候に関する国際的な約束事項を守ることを誓約した富める先進国としての役割を果たすことを要求している。

「私たちは、これから数十年にわたり、気候への影響を増大かつ深刻化させ、致命的な化石燃料への依存へと私たちの地域を追いやるような、いかなるパートナーシップに縛られることも拒否します。真のエネルギー安全保障は、再生可能エネルギーへの迅速かつ公正な移行にあり、日本の有毒なガスの輸出にあるのではありません」と、PMCJの全国コーディネーターであるIan Riveraは述べた。

一方、FoE Japanのファイナンス・キャンペーナーである波多江秀枝は、地域のエネルギー移行における日本の役割と説明責任を指摘した。「AZECの下での合意はすべて、コミュニティや市民団体とのいかなる協議もなしに、政府機関や大企業の間でなされている。AZECの下での多くの事業は、化石燃料ベースの技術の使用を長引かせるだけでなく、地域コミュニティに対する被害も長期化させる。気候危機に対する歴史的責任を負っている日本は、公正で迅速かつ公平なエネルギー移行に向けて、地域コミュニティのニーズに真摯に耳を傾け、支援しなければならない。」

世界的なエネルギー分野のシンクタンクEmberが発表した報告書によると、東南アジアにおける太陽光と風力による再生可能エネルギーの潜在力は、99%以上が未開発だということでだ。しかし日本は、ネットゼロ排出への「多様な道筋」があるという説明を用いて、いまだに化石燃料への投資を支援している。このような語り口は、日本企業の利益を永続させるものだと市民団体は主張している。彼らは、AZECの覚書の大部分(35%)が、JERAや三菱重工業といった日本のエネルギー大手によって推進されている化石燃料技術に関するものであることを指摘した。

Oil Change Internationalに所属するFFJの有馬牧子は、日本政府とその関連機関は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、さらには南アジアのバングラデシュまでも含む国々の脱炭素化ロードマップに影響を与えており、再生可能エネルギーよりもLNG、水素、アンモニアを推している、と述べた。また、明らかに日本企業の影響により進められているこれらのエネルギー戦略は、日本が書面で約束した気候目標達成のための真のコミットメントよりも日本の経済的計略に似ている、と加えた。

 

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