インドネシア・東ジャワ州NGOによる批判的見解:日本政府はパイトン石炭火力発電所への資金供与と誤った対策の実施を止めるべき
※本日本語訳はFoE Japanによるもの。本日本語訳とインドネシア語原文との間で内容に齟齬があった場合には、原文が正しいものとする。
WALHI(インドネシア環境フォーラム/FoEインドネシア)東ジャワによる批判的見解:日本政府はパイトン石炭火力発電所への資金供与と誤った対策の実施を止めるべき
はじめに
気候危機が深刻化するなか、世界は化石燃料からよりクリーンかつ持続可能なエネルギー源への移行を急務としている。しかし、インドネシアの石炭消費量は、主に発電と産業部門の需要によって増加の一途をたどっている。インドネシアは世界最大かつ新しい石炭火力発電所を有している国のひとつであり、発電所の大半は稼動後20年未満である[1]。2023年、インドネシアの稼働容量は43.4ギガワット(GW)に達し、65.6%がジャワ・バリ地域に集中している。系統に接続されていない産業用の自家発電所は、2030年までに17.7GWに倍増すると予想されている[2]。
しかし、この挑戦の中で、有望とされる様々な対策が浮上してきており、そのひとつが混焼技術によるバイオマスの利用である。炭素排出削減への前向きな一歩として推進されることが多いが、このアプローチには批判的な問いかけが必要である。石炭に有機物を混ぜて発電する混焼は、しばしば現実的な移行措置と見なされる。しかし、混焼は石炭への依存を永続させるだけでなく、脱炭素化が進んでいるかのような錯覚を引き起こす。化石燃料に依存し続けることで、私たちは持続不可能なサイクルに陥る危険性があり、一時的な対策によって、真にクリーンな再生可能エネルギーへの緊急投資の必要性から目を背けさせることになる。
実用面では、発電所のボイラーで石炭とバイオマスを混焼するバイオマス混焼は、世界中の多くの発電所で導入されている技術となっている[3]。バイオマス混焼は、既存のインフラを利用しつつ、石炭の使用量を減らすことで排出量を削減するとされている。このため、大規模な石炭火力発電所を有し、バイオマス資源が豊富な国にとっては魅力的な選択肢となっている[4]。
バイオマス混焼は、石炭使用量を削減する対策として世界中で推進されており、石炭生産量・消費量ともに最大級の国であるインドネシアもそのひとつである。インドネシアの石炭確認埋蔵量は157億1,900万トンで、2022年の石炭生産量は6億8,700万トンと世界第3位である[5]。
さらに、バイオエネルギーの開発は、より広範な環境影響を見落としがちである。バイオエネルギーと農業のための土地利用の競合は、食料安全保障と生態系の持続可能性を脅かしかねない。このような状況において、長期的な影響を考慮しないアプローチは、効果的でないだけでなく、地域社会や環境に有害な対策になりうる。
東ジャワの石炭火力発電所が、混焼技術によって維持され続ける
インドネシアの国家エネルギー政策は、2025年までにエネルギー消費の23%を再生可能エネルギーで賄うことを目標としているが、インドネシアはこの目標の達成に遅れをとっている(政府規則2014年第79号)。最新の政策では、2025年までの再生可能エネルギー目標を17~19%に引き下げており、特に風力や太陽光などの再生可能エネルギーの導入が遅れていることを示している。バイオマスの混焼は、インドネシアの石炭火力発電所からの排出を削減するための誤った対策として浮上してきている。インドネシアにおけるバイオマス産業の成長は、バイオマス作物を植えるための土地利用の変化による森林伐採を悪化させ、地域社会、生物多様性、排出目標を脅かす危険性がある。
現在、混焼関連の32の発電所では、農業廃棄物や産業廃棄物を使用しているが、将来の計画では、バイオマス原料の半分をエネルギー用のプランテーションから調達することが示唆されている。このシナリオにおける主な課題は、エネルギー産業のニーズを満たすのに十分なバイオマスの供給を確保することである。
東ジャワでは、パイトン石炭火力発電所で、バイオマス原料としておがくずと練炭を使用し、年間計画最低325,500トンの混焼が実証試験されてきた。PLN(インドネシア国有電力会社)は、パイトン1号機が1日あたり約10,000トンの石炭を必要とし、2号機は8,000トンを必要とするが、バイオマスを利用することで、パイトン発電所の石炭使用量を年間最低325,500トンに削減し、471,500トンCO2の温室効果ガス(GHG)排出量の削減につながる、と主張している。しかし、これには検証の余地がある[6]。
パイトン石炭火力発電所では、1号機と2号機に加え、9号機も混焼を実施している。パイトン発電所の総設備容量は4,700MWで、そのうち1,460MWをPLNがジャワ、マドゥラ、バリ(ジャマリ)の高圧送電網に供給している。バイオマス原料については、PLNはPT. Raja Muda Gemilang(プロボリンゴ県及びシトゥボンド県の地元企業)と協力し、バイオマスの供給に周辺コミュニティを巻き込んでいる。また、シトゥボンド県バニュルグルの地元木材産業とも協力し、パイトン発電所のバイオマス混焼(約5%)を供給している。
プルフタニ(インドネシア国営林業公社)は、パイトン石炭火力発電所における石炭とバイオマスとの混焼実証試験プログラム用の木質ペレット原料も準備している。ボジョネゴロ県、モジョケルト県、ジェンベル県、プロボリンゴ県のエネルギー・プランテーションに関するプルフタニの声明を参照すると、これらの地域には、発電用の木質ペレットの形でバイオマス燃料に加工できるカリアンドラ、アカシア、ギンネムなどの植物種があり、さらなる開発の可能性があると考えている。
地域社会との連携によるエネルギー・プランテーションの開発も見られる。プロボリンゴ県では、プルフタニ社とパイトン・エナジー社が、複数の社会林業事業グループ(KUPS)に対してCSRを通じた協力を推進しており、合計750ヘクタールの社会林業用地が関連している。この協力がエネルギー・プランテーションにつながるのではないかという疑いもある。プロボリンゴ県の他にも、私たちはモジョケルト県で、エネルギー・プランテーション、特に木質ペレット事業について、KUPSと民間セクターが協力する可能性があると考えている。
誤った対策を推し進める日本企業の投資参画
問題はそれだけにとどまらない。エネルギー移行を妨げる努力には、混焼、そして最近ではパイトン石炭火力発電所での炭素回収・貯留(CCS)事業といった誤った対策によって、早期廃止を遅らせることも含まれている。インドネシアは、二国間協力や経済協力を通じて日本と提携しており、CCS事業においては東芝エネルギーシステムズ、バイオマス混焼事業においては三菱重工や住友重機械工業といった企業と提携してきた。
特筆すべき点として、日本企業である東芝エネルギーシステムズは、PLNの子会社であるNusantara Power(PLN-NP)が所有する火力発電所への炭素回収・貯留(CCS)導入を検討する予定である。これは、2060年までにネットゼロエミッションを達成するというインドネシアの目標に沿った措置とされている。2024年8月22日、東芝はPLN-NPと覚書を締結したと発表した。対象には、東芝が納入した蒸気タービンと発電機を使用するパイトン1号機と2号機が含まれる。東芝は1981年以降、インドネシアの火力及び地熱発電所向けに32台(合計8,263MW)の蒸気タービンを納入してきた。現在もPLN-NPが所有する4基の火力発電所で9台(合計1,845MW)の蒸気タービンが稼動している。東芝は、既存の発電所の発電効率を最適化しながら、CCS技術に必要なエネルギー消費を最小限に抑えることを目指すとしている。[7]
さらに、三菱重工(MHI)とPLN-NPとの間で、低炭素燃料の混焼に関する3つの技術研究の開始に向けた重要なステップとして、覚書の締結がなされた
。この提携は、PLN-NPが所有・運営する発電所で実施され、三菱重工の子会社で電力関連の開発事業を手がける 三菱パワーからの支援を受けることになっている。[8]
具体的には、PLN-NPと三菱重工は、パイトン石炭火力発電所における混焼発電の研究開発で協力することを約束した。この取り組みの目標は、パイトン石炭火力発電所での混焼比率を30~50%から100%に引き上げることである。混焼とは、バイオマスを燃料として石炭と混焼することで、発電所を早期に廃止するよりも現実的で経済的とされている。[9]
住友重機械工業(SHI)との提携は2019年12月から行われており、パイトン石炭火力発電所の小型循環流動層(CFB)ボイラ発電設備に関する研究が含まれている。この研究は、30~50%の割合で混焼の初期段階を準備することを目的としており、可能であれば段階的にバイオマス焚き100%を達成することを目指している。一方、2023年2月28日に締結された三菱重工との提携は、パイトン石炭火力発電所でおがくずや練炭バイオマスを使用する微粉炭(PC)ボイラを搭載した発電機に重点を置いている。
これらの動きは、日本の経済産業省(METI)とインドネシアのエネルギー鉱物資源省(ESDM)が2024年8月21日、包括的な協力枠組みを確立するための覚書に署名したことでさらに強化された。この枠組みは、エネルギー部門の脱炭素化を推進するための協力を促進・強化することを目的としている。こうした類の覚書の調印は、すでに2023年3月3日に東京で開催されたアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)官民投資フォーラムで発表されてきた。経済産業省も参加したこのフォーラムは、日本企業の技術や専門知識に支えられた、アジア市場全体のさまざまな脱炭素イニシアチブを提案するプラットフォームとして機能した。[10]
こうした覚書は、2022年11月にPT PLN Indonesia Power社と(訳者注:MHIが)2022年11月に締結した同様の合意に続くものである。こうした協力関係は、地球規模の気候変動に対処する上で重要な一歩とされる、インドネシアのエネルギーシステムの脱炭素化を加速させる対策を開発することを目的としている。また、ジャワ島に位置し、PLN-NPが所有するパイトン石炭火力発電所に焦点を当てた研究を奨励している。この研究は、代替エネルギー源としてバイオマスを使用することの実現可能性に関する技術的側面を評価するものである。環境に優しいとされるバイオマスは、化石燃料発電所から排出される二酸化炭素を削減することが期待されている。
しかしもちろん、CCSから混焼に至るまで誤った対策を支援する日本からの投資の参入は、インドネシアのエネルギー移行、特に政府によって以前から議論され、2030年を目標に段階的に実施される予定のパイトン石炭火力発電所の廃止計画をさらに妨げるだろう。CCSと混焼の導入は、同発電所の廃止の先送りを意味し、長年にわたる環境・社会影響の問題から稼働を停止すべきであった石炭火力発電所の稼働を長引かせることになる。さらに、このアプローチは、「脱炭素化 」による排出削減ではなく、排出量の増加によって問題を悪化させる可能性がある。
説明では、炭素回収・貯留(CCS)と混焼技術は炭素排出を削減することが目的とされているが、どちらも重大な悪影響を及ぼす可能性がある。CCSは、設置や運用に高いコストとエネルギーを必要とするため、化石燃料の消費を増加させる一方で、発電所の効率を低下させる可能性がある。さらに、化石燃料への依存を長引かせる可能性に加え、炭素漏れのリスクや貯蔵場所での生態系への影響も深刻な懸念事項である。一方、混焼は、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)といった他の汚染物質を排出し、バイオマスと石炭の熱特性の違いから燃焼効率を低下させる可能性がある。また、バイオマスの利用は、森林伐採、土地紛争、長距離輸送による排出の増加を引き起こす危険性がある一方、食用作物からのバイオマスは、食糧安全保障を混乱させ、商品価格を上昇させる可能性がある。
日本政府に対する留意事項
パイトン石炭火力発電所は、何十年も稼働している古い発電所のひとつであり、その設置以来、環境、社会、健康の各分野でさまざまな深刻な問題を引き起こしてきたため、廃止が必要である。上流側では、石炭火力発電所向けの石炭採掘によって大規模な森林伐採が行われ、地域コミュニティは土地と生計手段を奪われるとともに、危険な採掘場は放置されたままで、これまでに50人以上の命が奪われており、その大半は子どもたちである。これらの放棄された露天掘り炭鉱は、物理的な脅威であるだけでなく、土壌や水といった周辺環境も汚染している。[11]
海では、パイトン石炭火力発電所の稼働による環境への影響が非常に大きくなっている。沿岸の生態系は、魚類の重要な生息地であるサンゴ礁が失われるなど、深刻な被害を受けている。その結果、漁師が通常漁獲しているマグロなどの魚の個体数が減少している。漁師は漁のためにさらに沖に出ることを余儀なくされ、海の真っ只中での危険性が増し、燃料費もかさむが、漁獲量はわずかなままだ。そのため、多くの地元漁師はついに海に出ることをやめ、生計を立てられなくなってしまっている。一方、石炭火力発電所から発生する石炭灰もまた、トウモロコシなどの食用作物に被害を与え、タバコなどの地元特産品に脅威を与えている。多くのココナッツの木が枯れ、生態系で重要な役割を果たすカブトムシなどの昆虫までもが、この地域から姿を消し始めている。
この石炭火力発電所による影響は、人々の健康面にも大きな影響を及ぼしている。排出ガスが呼吸器疾患、特に急性呼吸器感染症(ARI)を増加させ、その発生件数は毎年100件に達している。石炭火力発電所周辺に暮らす人々は、息切れや慢性的な咳など、灰や大気汚染にさらされることによる健康被害を訴えることがよくある。環境や健康への影響に加え、パイトン石炭火力発電所の存在は社会問題の引き金にもなっている。適用されている雇用制度は労働者にとって不利な傾向があり、労働者の多くは3カ月から6カ月、最長でも1年という短期の労働契約しか結んでいない。このアウトソーシング・システムは、不適切な賃金支払いや補償なしの突然の解雇など、労働者の規範上の権利を侵害することが頻繁に起こる。すべての地域住民が発電所で仕事を得られるわけではなく、地域間の社会的嫉妬を引き起こしている。この緊張状態は、発電所での仕事が一時的なものになりがちで、周辺地域の住民に長期的な福祉を保証しないという事実によって悪化している。
広範かつ深刻な影響を考慮すると、パイトン石炭火力発電所は電力エネルギーの供給源であるだけでなく、環境、健康、社会的危機の発生源でもある。環境被害や炭素排出を削減し、再生可能エネルギーへの移行を加速させるための取り組みとして、この石炭火力発電所の稼働は停止されるべきであった。しかし、実際に起こったことはその逆で、政府は代わりに「脱炭素化」に向けた一歩として、CCSと混焼による方式を導入したのである。バイオマス混焼は革新的なエネルギー移行対策として促進されることがよくある。しかし、インドネシアで実施される混焼は、このアプローチが実際のエネルギー移行を遅らせ、気候変動に対処するための世界的な公約に沿うものではないことを示している。日本がインドネシアの混焼事業、特にパイトン石炭火力発電所に関与していることは、日本のエネルギー政策の一貫性と、それが引き起こす環境への影響について重大な疑問を投げかけている。
混焼やCCS事業から生じる主な問題のひとつは、深刻な環境社会影響であることに留意すべきである。バイオマス事業は、土地利用の変化や森林伐採の引き金となることがよくあり、温室効果ガス(GHG)の排出を増加させ、地域の生態系に弊害をもたらす[12]。Zero Carbon Analyticsの報告書によれば、木質バイオマスの燃焼、特に混焼は、石炭よりも約30%多く炭素を排出する。さらに、木が伐採された場合、新しい木が大気中に放出された排出を吸収するには44~104年かかる[13]。したがって、このような観点から、混焼によって炭素排出量を削減できるという主張は疑わしい。なぜなら、土地利用の変化がもたらす悪影響が、期待される効果を上回ることが多いからだ。
一方、CCSについては、Thorbjörnssonらの研究によれば、CCSは石炭火力発電所からの炭素排出を制限することができるものの、彼らの検証に基づくと、CCSを使用した場合、CCSを使用しない石炭火力発電所と比較して、石炭消費量が約31%増加する可能性がある[14]。Moreauxらの研究と同様に、CCSの導入には考慮すべきいくつかの悪影響がある。第一に、CCSインフラの建設とメンテナンスに伴う高コストである。第二に、貯留場所からのCO2漏出などの環境リスクは、環境被害や健康リスクを引き起こす可能性がある。第三に、CCSは、再生可能エネルギーなど、より持続可能な他の対策から目をそらしてしまう可能性がある。第四に、世界のCO2排出量を吸収するCCSの効果は依然として限定的である。最後に、貯留場所からのCO2漏出の可能性を含め、回収・貯留による環境・健康被害への懸念を考慮しなければならない[15]。このことから、CCSの利用は排出量を削減するのではなく、石炭消費量の増加を通じて間接的に排出量を増加させることがわかる。後に混焼方式が採用されれば、バイオマスの需要も増加し、排出量も増加することになる。
さらに、混焼事業で設定された排出削減目標が達成されないことも多い。こうした事業は、真の環境保護よりも短期的な利益を優先するビジネスの利害に左右されることがしばしば見受けられる。インドネシアにおけるバイオマス産業の大規模な拡大は、意図された排出削減目標に反して、土地利用の変更による排出量の増加につながる危険性がある。インドネシアにおけるバイオマス混焼、特にパイトン石炭火力発電所におけるバイオマス混焼は、環境問題を悪化させるリスクのある一時的な対策に過ぎない。排出削減の可能性を提示してはいるが、森林や地域コミュニティに悪影響を及ぼすことから、インドネシアのエネルギー移行のための対策としては考えにくい。多くの場合、このような事業は、バイオマス産業による土地利用転換の犠牲となることが多い地域コミュニティのニーズや権利を考慮していない。
このような状況の中、日本政府は、石炭火力発電所におけるバイオマスやアンモニアの混焼事業への支援、そして炭素回収・貯留(CCS)技術の導入支援など、炭素排出を削減するための誤った対策を推進してきた。こうした誤った措置は、グリーントランスフォーメーション(GX)政策とAZEC構想の一部であるが、実際には石炭火力発電所を廃止するのではなく、延命させるだけである。さらに、日本は2021年から2022年までに石炭やその他の化石燃料事業への公的融資を終了するという公約にもかかわらず、日本の3メガ銀行(MUFG、みずほ、三井住友銀行)は、依然として世界の石炭火力産業への主要な資金提供者である。将来的にも、商業的に採算が合わず、石炭と同等の影響を及ぼすと考えられるCCSベースの発電所に資金提供することが予想される。
したがって、日本政府はインドネシアにおける混焼発電とCCSへの協力と資金提供の計画を再考しなければならない。これらの事業は、炭鉱地域や石炭火力発電所(特にパイトン石炭火力発電所)周辺に暮らす地域コミュニティの苦しみを長引かせることは間違いない。パイトンの地域コミュニティが被る負担を増大させることになる。実際、エネルギー移行の背景にある考え方は、排出を止めることで間接的に生態系の破壊も止め、人々の生活空間を回復し、より持続可能なものにするというものである。
日本政府への要望
パイトンのような石炭火力発電所は、特に最も汚いエネルギー源である石炭に依存しているため、人々の健康と福祉に実際に悪影響を及ぼしてきた。提案されている炭素回収・貯留(CCS)や混焼のような技術の導入は、解決策にはならず、化石燃料への依存を長引かせるだけの誤った対策である。これらの技術は、高価でリスクが高いだけでなく、エネルギー消費の増加、環境被害、地域コミュニティへの追加的な負担など、新たな問題も引き起こす。こうしたことを踏まえ、私たちは日本政府に対し、インドネシアにおけるCCSと混焼の支援を中止し、その代わりに真のエネルギー移行を推進するよう求める。
日本政府は、クリーンで持続可能かつ低リスクの再生可能エネルギーの開発において役割を果たすべきである。日本政府は、これまでインドネシアにおいて汚いエネルギー事業に関わってきた経緯があるため、歴史的責任として、債務ではなく無償資金協力の形で、再生可能エネルギーへの移行を加速させる役割を果たすべきである。例えば、より持続可能で、リスクが低く、地域規模で採用できる太陽光発電、風力発電、マイクロ水力発電を活用する取り組みにおいて、日本政府は役割を果たすことができる。同時に、将来世代の損失を増やすことなく、インドネシアのゼロエミッション目標の達成を支援することができるだろう。
WALHI(インドネシア環境フォーラム/FoEインドネシア)東ジャワ
連絡先:
Wahyu Eka Styawan
wahyuekas@walhijatim.org
[1] Baral, H., Shin, S., & Murdiyarso, D. (2023). The Critical Nexus Between Bioenergy and Land Use. Cent. Glob. Sustain. Cent. Int. For. Res.-World Agrofor. CIFOR-ICRAF.
[2] Global Energy Monitor. Global Coal Plant Tracker. (2023).
[3] IRENA. (2012). Biomass for Power Generation. https://www.irena.org/publications/2012/Jun/Renewable–Energy–Cost–Analysis—Biomass–for–Power–Generation
[4] IEA-ETSAP & IRENA. (2013). Biomass Co-Firing Technology Brief. https://www.irena.org/publications/2013/Jan/Biomass–co–firing
[5] ESDM. (2022). Indonesian Minerals, Coal, and Geothermal Resources and Reserves 2021. https://geologi.esdm.go.id/storage/publikasi/BZndhEYcRYSGJHh3XKSnEVsrE3HwbzDohxcs3veV.pdf
[6] PLN. (2022).Sustainability Report 2022. https://web.pln.co.id/statics/uploads/2023/08/SR–PLN-2022_0706_230802_202929.pdf
[7] Toshiba. (2024, August 22). Toshiba and PLN Nusantara Power to Explore Early Application of CO₂ Capture Technology to Thermal Power Plants. Retrieved from https://www.global.toshiba/ww/news/energy/2024/08/news-20240822-01.html
[8] RRI. (2023, March 4). Dorong Co-Firing Menuju Transisi Energi, PLN NP Gandeng Perusahaan Jepang. Retrieved from https://www.rri.co.id/bisnis/179180/dorong-co-firing-menuju-transisi-energi-pln-np-gandeng-perusahaan-jepang
[9] Global Energi. (2023, March 4). Targetkan 100% Co-Firing PLTU Paiton, PLN NP Gaet Jepang. Retrieved from https://globalenergi.co/2023/03/04/targetkan-100-co-firing-pltu-paiton-pln-np-gaet-jepang
[10] Ministry of Economy, Trade and Industry (METI). (2024). 2nd AZEC Ministerial Meeting MOU Abstract. Retrieved from https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/azec/2nd_ministerial_meeting/2nd_AZEC_mm_mou_abstract_en.pdf
[11] Styawan, W. E., Haq, A., Sudiarjo, T., & Pramandira, A. (2022). Melihat Ulang Dampak PLTU di Tiga Wilayah: PLTU Paiton, PLTU Pacitan dan PLTU Cilacap. Cetakan Pertama, Agustus 2022. ISBN 978-623-435-062-3.
[12] Casson, A., Muliastra, Y. I. K. D., & Obidzinski, K. (2014). Large-Scale Plantations, Bioenergy Developments and Land Use Change in Indonesia. https://citeseerx.ist.psu.edu/document?repid=rep1&type=pdf&doi=b6fa94e10e8f1e67cf9f52be9573160c04dec700
[13] Zero Emissions or Fossil Fuels: Tracking Japan’s AZEC Projects. (n.d.). Zero Carbon Analytics. Retrieved January 11, 2025, from https://zerocarbon-analytics.org/archives/energy/zero-emissions-or-fossil-fuels-tracking-japans-azec-projects
[14] Thorbjörnsson, A., Wachtmeister, H., Wang, J., & Höök, M. (2015). Carbon capture and coal consumption: Implications of energy penalties and large scale deployment. Energy Strategy Reviews, 7, 18-28.
[15] Moreaux, M., Amigues, J. P., van der Meijden, G., & Withagen, C. (2024). Carbon capture: Storage vs. utilization. Journal of Environmental Economics and Management, 125, 102976.