【声明】3.11から13年-私たちは原発事故から何を学んだのか

原発2024.3.15

FoE Japanでは、原発事故の「見えない化」に抗い、原発ゼロを達成するために、粘り強く活動を継続していきたいと思います。ぜひみなさまのお力添えをお願いいたします。

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東京電力福島第一原発事故の発生から13年。被害にあわれたたくさんの方々に、心から哀悼の意を表します。FoE Japanでは以下の声明を出しました。


2024年3月11日
国際環境NGO FoE Japan

声明:3.11から13年-私たちは原発事故から何を学んだのか

東日本大震災とそれに続く東京電力福島第一原発事故の発生から13年経過した。

たくさんの人たちがふるさとから離れ、避難を余儀なくされた。生業、生きがい、コミュニティを失い、経済的にも困窮している人が多くいる。

事故はまだ収束していない。福島第一原発では、燃料デブリ(溶けた核燃料などが冷えて固まったもの)の取り出しは暗礁に乗り上げ、試験的な取り出し開始すら何度も延期されている状況だ。賠償・廃炉・除染などの費用は膨れ上がり、政府発表でも23兆円に達した。本来、加害者である東電が支払うべきこの費用は、被害者や将来世代も含めた一般市民が担わされる。国や東電の責任はあいまいにされたままだ。

2023年8月、ALPS処理汚染水の海洋放出が開始された。放出される放射性物質の総量は示されず、モルタル固化案などの現実可能な代替案は、真剣に議論されることはなかった。政府は、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束していたが、この約束は完全に反故にされた。こうした論点がおきざりのまま、「処理水は安全」という宣伝がメディアやインターネットを支配し、懸念を口にする人たちを「風評加害者」としてレッテル貼りする空気がつくられている。

除染によって生じた放射性物質が含まれる土を公共事業等で再利用する方針についても、各地で反対運動が生じているが、「復興を邪魔するのか」とばかりにこうした声を黙らせるような圧力がある。

政府は、「理解醸成」として、広告代理店に巨額の税金を投じ、一方的な宣伝活動を行っている。私たちの税金が、健全な議論が行える言論空間を失わせるために使われているのだ。

ALPS処理汚染水の海洋放棄も、汚染土の再利用も、集中管理すべき放射性物質を環境中に拡散することになること、福島の復興に資するわけではないこと、誰もが参加できる場で、きちんとした議論が行われ、社会的な合意が形成されたわけではないことを忘れてはならない。

私たちは、原発事故からいったい何を学んだのだろうか。ひとたび原発事故が起これば、環境が広い範囲で汚染され、大勢の人たちがかけがえのないものを失うこと、地域が、社会が、家族が分断され、深刻な対立を生み出すことを学んだのではないか。

原発事故から13年もたたない2023年、政府ははっきりと原発推進に舵を切った。「脱炭素」の名のもとに、原発再稼働や運転期間の延長を後押しし、次世代革新炉の開発・建設に資金を投じるGX推進法、GX脱炭素電源法(原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法など5法の改正)が国会を通過した。

本年元日に発生した能登半島地震では、震源近くに立地する志賀原発も強い揺れに襲われ、多くのトラブルが生じた。幸いにして長期停止中だったため、深刻な事故にこそ至らなかったが、改めて原発の脆弱性、とりわけ原子力防災の非現実性を浮き彫りにした。

原発は、ウラン採掘から燃料加工、運転、核燃料の処分、廃炉に至るまで、放射性物質による汚染や人権の問題がつきまとう。原発のコストは上昇を続け、今や最も高い電源である。

原発は、電気やエネルギーをじゃぶじゃぶ使い続ける非持続的な社会、原発利権が一部を潤し、過疎に悩む地域や弱い立場の人たち、将来世代にツケを押し付ける不正義の構造のシンボルだ。私たちはこの構造をこそ変えなければならない。

FoE Japanは、全国全世界の人たちとつながり、原発のない持続可能なエネルギー社会の実現のために、活動を継続していきたい。

 

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