能登半島地震を踏まえ要請書を提出ー「原発避難計画・対策指針は欠陥だらけ」「住民を危険にさらす」→規制庁の回答は?

原発2024.2.16

1月31日、全国の市民が連名し、能登半島地震により、原子力防災計画の欠陥が明らかになったため、これ以上原発を動かすべきではないという趣旨の要請書を政府に提出しました。国際環境NGO FoE Japanおよび原子力規制を監視する市民の会が呼びかけ、全国各地から163団体、1,373人が連名しました。提出後、政府との意見交換を行いました。

石川県珠洲市在住の北野進さんは、以下のようにのべました。

「今回の地震では市内は壊滅状況になった。奮闘する市長や職員も被災した。連日連夜の懸命の作業が続いている。それでもまったく人手が足りず、全国各地から応援に訪れている。もしここに原発事故が重なっていたらどうなるか。珠洲市にはかつて原発の計画があった。もし原発事故があったら、全国各地の応援のみなさんは誰もくることができなくなり、孤立状態の中、住民は放射能汚染にさらされる。政府はこうした状況に向き合ってほしい。地震災害と原子力災害の両立はありえない」

また、島根県から参加した芦原康江さんは、「避難計画には実効性がない。原発を動かすべきではない」と述べました。

規制庁「複合災害では自然災害が優先。能登半島地震を踏まえて原子力災害対策指針を見直すことは考えていない」

要請書を提出する中垣たか子さん(石川県)および芦原康江さん(島根県)

参加者から怒りの声「放射能防護の放棄だ」

現在の原子力災害対策指針やそれに基づく避難計画では、PAZ(5km圏内)では全面緊急事態になった場合に避難開始、UPZ(5-30km圏)では一定の放射線量になるまで屋内退避を行い指示に基づき避難ということになっています。

「今回の能登半島地震において、現行の原子力災害対策指針の規定と現実との乖離が明らかになった。原子力規制庁の受け止めや対応は?」という主催者側の質問に対して、原子力規制庁の担当者は、以下のように回答しました。

「1月17日に開催された原子力規制委員会で行われた議論では、家屋倒壊が多数発生するような地震等の自然災害と原子力災害との複合災害に際しては、人命最優先の観点から、まず自然災害に対する安全が確保されたあとに原子力災害に対応することが重要であるという考え方が示された。能登半島地震を踏まえ、原子力災害対策指針における防護措置の基本的な考え方を変更する必要はない、というのが委員の共通認識であった。原子力規制庁として能登半島地震を踏まえて原子力災害対策指針を見直すことは考えていない」。

参加者からは、「被ばくはやむを得ないから、放射能防護を放棄するということか」と怒りの声があがりました。

規制庁は「避難するときに被ばくする可能性はあるが、まずは自然災害優先ということ。原子力がある以上、放射線は出るリスクはある。被ばくをゼロにするという考え方は安全神話につながる」と説明しました。

珠洲市の北野さんは、「陸路からの避難も無理、海路も空からの避難も無理、そういう状況で住民には被ばくしてくださいということなのか」と憤りました。また、金沢市在住の中垣たか子さんは「人命優先ということだが、放射能が降り注ぐ中、人命救助にあたるということになる」と指摘しました。

集会では、石川県、新潟県、宮城県、福井県、佐賀県、鹿児島県など、原発周辺に住む市民が参加し、各地の状況を報告しました。

要請書(提出版) >質問書

 

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