オンライントーク:COP28と原発-「原発発電容量3倍」のねらいとは?
先日、ドバイで開催された気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の会期中、アメリカ、日本などの23か国による「原発の発電容量3倍」宣言が発表されました。その内容やねらいはどのようなものだったでしょうか?
また、COP28のグローバル・ストックテイクの成果文書に「ゼロ排出・低排出技術」の一つとして原発も追加されました。これは何を意味するのでしょうか。
COPの議論や世界の原発の趨勢のデータをご紹介しながら、みなさまとともに考えていきたいと思います。>解説
日時:2023年12月25日(月)14:00-15:30
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参加費無料・ご寄付歓迎
報告:
・深草亜悠美/国際環境 NGO FoE Japan気候変動・エネルギーキャンペーナー
・満田夏花/国際環境 NGO FoE Japan 事務局長
質疑およびディスカッション
主催:FoE Japan
【解説】
ドバイで開催された第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)の3日目、アメリカや日本を含む23か国が、「2050年までに世界の原発の発電容量を3倍にする」と宣言しました。この宣言はあくまで、正式なCOPの文書ではなく、有志国による宣言文であることに注意が必要です。また、賛同にはロシア・インド・中国などは加わっていません。この宣言は、途上国なども含めた国々の原発の新規建設をあてにしたものと思われますが、世界の原発の発電量は横ばい状況であることを考えれば、非現実的と言わざるをえません。再生可能エネルギーに関しても、「2030年までに世界全体の再生可能エネルギーの発電容量を3倍に引き上げる」という宣言が出され、こちらには120カ国以上が賛同しました。これに比べると原発3倍宣言への賛同は少数にとどまりました。
最終日に採択されたCOP28のグローバル・ストックテイクに関する成果文書には、「ゼロ排出・低排出技術」の一つとして原発も追加されました。これについても、再エネについては「2030年までに発電容量を3倍にする」と具体的に書きこまれたのに対して、あくまで技術の例示の一つという書きぶりで、その差は歴然としています。
過去のCOPにおける原発の扱いはどうだったのでしょうか。
京都議定書の実施ルールが採択された2001年のモロッコ・マラケシュCOP決定の前文で原発について言及されて、京都議定書に盛り込まれている共同実施(先進国間の排出量取引)やCDM(クリーン開発メカニズム)で原発を議定書目標達成に使わないようにという文脈でした。つまり、原発を気候変動対策として位置づけることに関して、国際社会は慎重だったとみることができます。
【見解:原発は気候危機対策を妨げる~COP28成果文書をうけて】
“原発は、その莫大なリスクとコスト、計画から稼働までの期間の長さなどを考えれば、気候危機対策として有効でも現実的でもない。世界の原発の発電量は横ばいもしくは微減であり、世界の発電量に占める原発のシェアは下落し続けている。…原発の発電コストは上がり続け、価格競争力はなくなってきている。さらに原発の建設期間も長期化する傾向にある。”
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