インドネシア・チレボン石炭火力2号機の贈収賄事件で元県知事の公判開始―JBICは貸付実行停止と責任ある説明を!

化石燃料2023.7.10
試運転中のチレボン石炭火力2号機(2022年11月)

丸紅とJERA(東電と中部電力の合弁)が出資し、国際協力銀行(JBIC。日本政府が全株式保有)が公的融資を供与してきたチレボン石炭火力発電事業2号機(100万kW)について、同事業の許認可発行をめぐり賄賂を受領した元チレボン県知事が、インドネシア汚職撲滅委員会(KPK)に起訴されました(2023年3月14日)。3月20日に汚職犯罪裁判所バンドン地裁で開かれた第一回公判では、同元県知事の巨額の賄賂やマネーロンダリング(総額642億ルピア。約5億5,000万円)に関する起訴状の内容がKPK検察官によって明らかにされました。起訴状によれば、チレボン石炭火力2号機の許認可取得が円滑に進むよう、2017年から2018年にかけて70億2,000万ルピア(約6,014万円)の賄賂が建設請負業者の韓国・現代建設(Hyundai Engineering and Construction Co., Ltd.)の関係者から元県知事に支払われたとのことです。また起訴状では、丸紅とJERAが出資する現地合弁企業チレボン・エナジー・プラサラナ社(CEPR)の上級幹部2名も名指しされ、贈収賄への関与が示唆される内容となっているようです。

同事業については、すでに2019年に元県知事に多額の不正資金を供与したとされる現代建設の幹部がKPKから容疑者認定を受け、上述のCEPR上級幹部2名もインドネシア国外への渡航禁止措置を受けていました。

JBICは2019年当時、本贈収賄に係る事実関係の確認を事業関係者のみに行なった結果、贈収賄の事実を確認できなかったとして、2号機事業への貸付実行の停止措置をとれないという立場を示していました。また、インドネシア当局による捜査の状況を踏まえ、融資契約に基づいて適切に判断していくとしていました。しかし今回、同事業の贈収賄について、当局が元県知事を立件したことをJBICは重く受け止め、まずは貸付実行の速やかな停止措置をとるべきです。また、事実関係の徹底的な調査を行うとともに、公的機関としての市民に対する説明責任を真摯に果たすべきです。

事業者や地元の政治家等が不正に巨額の利益を得てきた一方、2号機の建設による影響で、小規模漁業者などはさらに苦しい生活を強いられてきました。以下のプレスリリースで現地の住民グループやNGOが訴えているとおり、今後、元県知事の公判と並行して、現代建設やCEPRを含む同贈収賄の全関係者の不正行為について、徹底的な捜査と迅速な法的措置が求められます。

以下、現地住民グループ及びNGOのプレスリリースの和訳です。(インドネシア語原文はこちら

スンジャヤのマネーロンダリング公判により、
Herry Jung被告の裁判を迅速化すべき

プレスリリース
2023年3月20日

本日2023年3月20日(月)、バンドン地裁で元チレボン県知事スンジャヤに対する訴訟番号49/Pid.Sus-TPK/2023/PNBdgの汚職特別裁判が開始された。スンジャヤは、総額642億ルピアのマネーロンダリングの罪で起訴さ れた。スンジャヤは2014年から2019年までチレボン県知事を務め、2018年10月に汚職撲滅委員会(KPK)によって逮捕された。囮捜査による件では、スンジャヤは懲役5年、罰金2億ルピアを言い渡された。一方、資金の保管場所での調査結果から、囮捜査に基づく金額を遥かに上回る多額の金銭と資産が発見された。本日のマネーロンダリングに関する公判は、KPKの捜査員が発見した金銭や資産の追跡を継続するものだ。KPK検察官は、最初の起訴状で、スンジャヤがチレボン県の部下から約532億ルピアを受け取ったと述べ、2番目の起訴状で、スンジャヤがチレボン石炭火力発電所2号機から70億2,000万ルピアを受け取ったと述べた。

金融取引報告分析センター(PPATK)広報グループ代表のM Natsir Kongah氏の発言を引用すると、環境関連犯罪によるマネーロンダリング(TPPU)の被害額は45兆ルピアにのぼることが判明したということだ。その一部は多くの政治家に流れている。マネーロンダリングされた資金は、政治家が2019年の選挙資金や2024年の選挙準備に使ったと疑われている。スンジャヤのケースは、PPATKの声明を裏付ける証拠の1つであることを示している。

このスンジャヤのケースでは、他の容疑者はすでに裁判にかけられたにもかかわらず、スンジャヤに賄賂を渡した容疑者の一人はまったく裁かれていないことが、いまだに大きな問題となっている。賄賂を渡した一人であるKING property社のSutiknoは、裁判手続きが終了し、2022年3月7日の再審判決まで出されている。一方、チレボン石炭火力2号機の契約者である現代建設のHerry Jungは、まったく裁かれていない。賄賂を渡した容疑者の一人はすでに判決が確定しているが、もう一人はまだまったく裁判を受けていないという、なんとも対照的な状況だ。証拠や証人の面では裁判をするのに十分なものが揃っているにもかかわらずだ。

「私たちは、賄賂を渡したHerry Jungに関するKPKの調査結果について明らかにしてほしいと考えています。汚職犯罪裁判所に提出されたのかどうか、提出されていた場合、なぜHerry Jung容疑者の裁判が優先されないのか、私たちにとって大きな疑問です。また、Herry Jung容疑者が拘束されたのかどうか、現在の状況についても情報が開示されていなければなりません。」インドネシア環境フォーラム(WALHI)西ジャワのWahyudinは述べた。

「スンジャヤのマネーロンダリングのケースについて、スンジャヤがこの事件に関与している人物を明確にすることを望みます。この件に関して、何も恐れる必要はありません。」と現地住民グループRapelのAanは付け加えました。

「このケースがすぐに徹底的に調査されることを望みます。なぜなら、法的プロセスに対する国民の信頼が維持されなければならないからです。このケースが、チレボン石炭火力2号機の許許可に関する贈収賄の疑惑を明らかにするための糸口になることを願っています。」とチレボン市民グループであるKARBONのコーディネーターM・デヒヤは述べた。

「スンジャヤの公判は、もう一人の容疑者であるHerry Jungの公判と並行して行われるべきです。もう一人の容疑者はすでに裁判の判決を受けたにもかかわらず、Herry Jungはまだ裁かれていません。」と、WALHI本部のSawungは付け加えた。

連絡先:
Aan/Rapel (081212209652)
Dwi Sawung / WALHI本部 (08156104606)
M Dehya / KARBON (085220388548)
Wahyudin / WALHI西ジャワ (081395367383)

(翻訳責任:FoE Japan)

 

関連する記事

【要請書】日本の「ゼロエミッション」戦略はまやかし – 日本は「誤った気候変動対策」ではなく、化石燃料からの公正かつ公平な移行を支援すべき

化石燃料
【セミナー】日本政府の「GX戦略」はアジアの脱炭素化に貢献するのか?現地の声は

【セミナー】日本政府の「GX戦略」はアジアの脱炭素化に貢献するのか?現地の声は

化石燃料

インドネシア・チレボン石炭火力2号機:住民が意見書提出「JBICは融資停止と審査役調査結果の再検証を」

化石燃料

【共同声明】気候・環境・社会の状況はチレボン石炭火力発電所1号機のより早期の閉鎖と2号機の稼働開始の停止を必要としている ― インドネシアにおける石炭火力発電所の早期閉鎖計画 第一号案件の発表を受けて…

化石燃料

インドネシア市民社会団体から日本政府に要請書提出:「『公正なエネルギー移行』の名の下にインドネシアでの化石燃料の延命や環境・生活破壊はもう止めて」

化石燃料

【プレスリリース】インドネシアの市民団体がチレボン石炭火力の環境・人権・汚職問題でオランダのING銀行に苦情申立てを提出

化石燃料

関連するプロジェクト