【海外NGOによるプレスリリース】政府機関による化石燃料融資に気候訴訟リスクのおそれ
輸出信用機関の化石燃料支援に関する法的義務を考察した法律専門家による意見書(以下、意見書)が、本日、国際NGOオイル・チェンジ・インターナショナル(OCI)より発表されました。意見書はOCIが専門家に調査を委託したもので、「輸出信用機関(以下、ECA)およびそれらを監督する政府が化石燃料関連事業への支援をすぐにも削減する措置を講じない場合、国際的な法的義務に違反する可能性がある」と指摘しています。詳しくはプレスリリースおよび法的意見書本文をご覧ください。
本プレスリリースに関する連絡先: Laurie van der Burg, laurie@priceofoil.org, +31 6 390 209 14
プレスリリース(原文英語、以下FoE Japanによる翻訳)
ブリュッセル – 「輸出信用機関(以下、ECA)およびそれらを監督する政府が化石燃料関連事業への支援をすぐにも削減する措置を講じない場合、国際的な法的義務に違反する可能性がある」とする法律専門家による意見書(以下、意見書)が、2日後にペータースベルク気候対話を控えた今日発表されました。意見書は国際NGOオイル・チェンジ・インターナショナル(以下、OCI)が委託したもので、年間数百億ドル規模で化石燃料事業支援を行うECAの国際法上の義務を初めて示しました。
また、OCIを含む複数のNGO(Oil Change International、ActionAid Denmark、Above Ground、BothENDS、Center for International Environmental Law、Friends of the Earth United States、Milieudefensie、Jubilee Australia、Les Amis de la Terre、Swedwatch、JustiçaAmbiental、350.org)は、オーストラリア、オランダ、フランス、スウェーデン、カナダ、日本、米国、南アフリカ、デンマークの関係当局に書簡を送付し 「この機会に国際法上の義務に鑑み、化石燃料事業および関連インフラへの公的支援を即時停止する政策を策定する」よう、求めました。
意見書は、政府の方針を踏まえて動く、または政府による規制を受ける、または別個の組織として活動するECAに適用される国際法の枠組みについて考察しています。主に国際慣習法、人権、気候変動に関する協定や条約、OECDの基準や手法などを参照し、「既存および新規の化石燃料関連の事業や活動に伴う温室効果ガスの排出を可能にしているのが、実質的にECAによる支援であることを考慮すると、原則として、政府は、問題への寄与を拡大したり、増加させたりするのではなく、低減するために最大限の努力をする場合にのみ、デューデリジェンスの義務を遵守している。」と結論づけました。
意見書を執筆した専門家らは、ECAの出資者である政府は、気候変動に関連し、その国際法上の義務を満たすために、以下の5つの行動を追求しなくてはならないと指摘しています。
1. 新規の化石燃料関連事業への支援や、既存案件への追加支援を行わないこと
2. 科学的根拠に基づく時間軸に照らし合わせ、化石燃料関連の事業や活動に対する既存の支援を減らすこと
3. 残されているカーボンバジェットの大部分を使い切ってしまう可能性のある化石燃料事業で排出を固定してしまうのを積極的に回避すること
4. 支援する可能性のある事業からの二酸化炭素排出量を評価するための適切な手順を採用し積極的に実施すること
5. 気候危機におけるECAの活動を監視するための行動指針を実施すること
OCIのシニア・キャンペーナーであるLaurie van der Burgは、「この意見書は、政府やECAに対する警告です。化石燃料事業への融資を中止しなければ、訴訟リスクに直面することになります。すでに道義的かつ財政的理由で、化石燃料事業を下支えしたり、世界中ですでに何百万人もが影響を受けている気候危機を悪化させたりするために公的資金を使うべきではないと言われている中、今回の意見書は新たに法的見地からも化石燃料への公的支援停止が求められることを示しています。」と述べています。
カナダのNGO Above GroundのプログラムオフィサーであるKaren Hamiltonは、「もし、ECAが石油、ガス、石炭への支援を止めなければ、これらの機関とそれら機関に責任をもつ政府は、法的措置に直面する可能性があります。気候変動問題に取り組む市民社会グループは、私たちの共通の未来を守るため、近年より一層法的手段に頼るようになってきており、この意見書は、化石燃料事業を支援するECAが気候変動訴訟の次の標的になる可能性があることを指摘しています。」と述べています。
また同意見書では、パリ協定の目標に沿い、石炭火力発電の輸出金融に関するOECDの規制対象を、すべての化石燃料及び関連インフラへと拡大する必要性についても言及しています。OECD加盟国は2015年に石炭火力発電所への輸出金融を制限することに合意していますが、化石燃料への融資のさらなる制限に関する進展はトランプ政権の間に行き詰まっていました。バイデン大統領が主催した気候サミットで、米国は、「OECD諸国のECAが提供する公的輸出金融に関する規律を修正し、公的支援の方向性を炭素集約型の事業から転換する取り組みの先頭に立つ」と発表しました。
OCIのデータによると、G20諸国のECAは化石燃料事業に年間401億ドルの支援を行なっている一方、2016年から2018年の間のクリーンエネルギーへの支援はわずか29億ドルであり、パリ協定の採択以降も、化石燃料への支援は減少していません。
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・この法的意見書はケンブリッジ大学ホルヘ・E・ヴィヌアレス教授と、マトリックス・チェンバーズのケイト・クック法廷弁護士によって執筆されました。法的意見書はこちら:https://priceofoil.org/eca-legal-opinion
・OCI及びE3GによるECAが取りうるアクションについてのブリーフィングペーパーはこちら
・OCIによる英国の新方針に対する声明
・Export Finance For Future(E3F)に対する市民社会によるリアクションはこちら
・FoE英国による、モザンビーク・ガス開発に関する英国での訴訟についてはこちら