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ボク、違法材「ナラ」いらないよ!
学習机の木材のふるさと
「ナラ」「タモ」のふるさとはどんな森?
ナラ材やタモ材が生産されているのは、ロシアの極東に位置する沿海地方の森です。
この地方はロシア極東において最も温暖湿潤であり、北日本と同様の冷温帯に位置します。南北に走るシホテ・アリニ山脈がこの地方のほとんどを占めています。この山脈の西部には、アムール川の支流であるウスリー川が国境として中国とロシアの領土を隔てながら山脈に平行して走っています。
沿海地方の8割は森林に被われています。まさに見渡す限り森の大地です。北部の山間部では、エゾマツやトドマツ、カラマツなどの針葉樹が優勢していますが、これ以南のビキン川などウスリー支流の流域地帯には、ウスリータイガと呼ばれる北方と南方の樹種、針葉樹と広葉樹が混交した豊かで独特な植生が広がっています。
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この地域の森林の主な構成樹種は、チョウセンゴヨウマツと、モンゴリナラ(ナラ材)、ヤチダモ(タモ材)、ハルニレ(ニレ材)、シナノキなど硬質広葉樹、及びカンバ類(カバ材)、ヤマナラシなどの軟質広葉樹です。なかでもチョウセンゴヨウは、大きな松ボックリから取れる松の実が、動物たちの大切な栄養源となっており、高度な生物多様性を保持するこの森の豊かさの指標となっています。 ちなみに、料理に使われるおいしい「松の実」も大部分はこの沿海地方がふるさとです。
ナラの木
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タモの木 |
「ナラ」「タモ」の伐採の様子は?
沿海地方においても1930年代以降、森林資源が開発され始めました。生産された丸太の多くは日本向けの輸出でしたが、1950-60年代頃から日本市場が高度経済成長期に入り、木材需要を急激に増加させていったことと、木材の輸入関税を削減して木材貿易を自由化したこと、そして日本国内での広葉樹資源が著しく劣化したことなどの要因が重なり、沿海地方の森林資源への圧力が高まりました。沿海地方の森林は以来現在に至るまで開発され続け、さらに90年代終盤から中国市場の需要急増も重なって開発は加速、森林植生は大きく劣化してきています。
伐採後に湿地化して荒廃したままの森
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とりわけ低地林においては伐採後に再更新がされずに湿地化してしまった所も多くみられます。低地以外の場所でも、伐採後は先駆種であるシラカバやヤマナラシばかりが優先し、生態系は大きく撹乱されています。特に固有種であるアムールトラやアムールヒョウは、森林開発に伴う林道建設によって密漁が増加したこともあり、現在、レッドリストにおいて絶滅危惧種に指定されています 。現存する個体数はトラが500頭、ヒョウにいたっては30頭しかおらず近親交配が見られるなど、極めて危機的な状況です。主要構成樹種のチョウセンゴヨウやナラ、タモが選択集中的に伐採され、植生が変化することで、それらの実を餌としている小動物が減少することも、これら大型哺乳類が減少する要因のひとつです。
アムールトラ |
アムールヒョウ |
また、高級樹種とされるナラやタモなどの大径材は、市場でも高価で取引されるために次々と伐採されていますが、本来はヒグマの冬眠時のねぐらや鳥類・小動物の巣を提供する重要な役割を担っています。
伐採されたナラの大径材の山 |
この地域を語る際には、先住する少数民族についても忘れてはなりません。この地方に居住する先住民族は、ナナイ(417人)、タジ(256人)、ウデヘ(918人)など我が国のアイヌと同じカテゴリーで括られる北方先住少数民族に属する人々が主です。これらの先住少数民族たちは、ロシア人が移住する以前からこの地に暮らし狩猟を生業としてきましたが、旧ソビエト連邦体制下ではゴスプロムホズ(国営狩猟組合)の従業員として毛皮の調達に従事していました。狩猟対象である動物種が生息する広大な森林地帯は、狩猟地としてほぼ手付かずのままに残されました。このようなロシア北方先住少数民族の歴史的な背景こそが、狩猟対象である動物と不可分である生物多様性が豊かな針広混交林を未開発な状態で残した主たる要因でした。
しかし、森林伐採による森林生態系の変化は彼らの狩猟対象である動物相の変化として如実に表れます。木材資源を開発しようとする地方政府と、土地に対する帰属意識が高い狩猟を生業とする先住民族との戦いは未だ継続中です。
先住民族のウデヘ |