聞こえてますか、私たちの声 -オンダンカクサの現場から
スワジーランド/Swaziland
アフリカ南部のスワジーランドは、温室効果ガスの排出量はとても少なく、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量と吸収量が同じ)の国です。しかし、高温や干ばつ等の温暖化の深刻な影響に苦しむことになると予測されています。すでに、温暖化影響は人々の生活に大きな被害を及ぼしています。今年は、深刻な不作により、非常事態宣言まで出されましたが、政府は温暖化対策を国の優先課題とはしておらず、人々がそれらの影響に適応していくための支援は十分ではありません。

■ 脆弱なアフリカ

アフリカは、最も温暖化の影響を受けやすい大陸の一つであり、貧困や様々な環境社会問題が、温暖化への対応能力の脆弱性をさらに高めます。最新の科学の知見によると、スワジーランドを含むサハラ以南アフリカへの影響は特に深刻で、2050年までに気温が0.5−2℃の上昇し、雨量が10%減少し、ほとんどの国では河川の水量が減少すると予測されています。さらに、マラリアの感染地域の拡大も心配されています。

■ 温暖化影響を受けやすい農業への依存

スワジーランドでは、雨に頼る小規模農業によって、ほとんどの食糧生産と75%もの雇用が賄われています。しかし、年々激しさを増す干ばつや、予測できなくなった気象パターン、極寒の冬により、水不足、食糧不足が深刻化しています。農業収入の減少は、国の経済を大打撃しています。今後、食糧価格は高騰し、貧しい人々は主食まで買えない状況になると予想されます。

■ 適切な対策の必要性

政府は2007年の凶作を受け、非常事態宣言を発令して経済支援を約束しました。しかし、対応は不十分、もしくは適切とはいえず、人道的危機はさらに悪化すると見られています。スワジーランドは1998年に京都議定書を批准しましたが、今まで政策上の議論に上ったことはなく、「温暖化影響にどう対応するか」といったことに対する知識も理解力も不足しています。
政府は、バイオ燃料生産開発が農家のための最新の解決策と促進しています。しかし、このような解決方法では、食糧との競合等により、さらなる農作物の価格の高騰を助長することも予想され、気候変動の被害がさらに広がることになるとも懸念されています。
スワジーランドでは、農民達は昔からのやり方を変えるのに時間がかかります。至急、適切な対策をとり始めない限り、スワジーランドはさらに悲惨な状況に陥るでしょう。

スワジーランド 暑さを目の当たりにして

エマニュエル・ドラミニ
(スワジーランド気象局局長)

スワジーランドには、長期の気象統計はありませんが、過去15年を見る限り、35℃を超える日が12%増加し、雨季の始まりの9月と10月の降水量が最大50%減少している地域もあります。強い嵐が起こる頻度も増加しています。今、最も必要とされるのは、異常気象、災害対策です。もし、先進国で伝染病が発生したら、人々はすぐにワクチンを供給され、拡大を防ぐことができるでしょう。もし、大洪水が起これば、救助ヘリコプターがすぐに派遣されるでしょう。しかし、これらの対策準備はこの国では難しく、結局、人々は大災害の矢面に立たされるのです。政治、経済、そして国家間紛争等、政府を取り巻く状況が、政府の優先課題を人々が苦しんでいる問題ではなく国防へと向かわせてしまっています。

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マケ・ノーレコ
(長老)

今年はほとんど作物が育たず、とても大変な年でした。雹の嵐によって、商店の屋根は完全に吹き飛び、作物や馬も被害に遭いました。これまで自分で栽培できていたトウモロコシや豆も、今じゃ買わなければなりません。昔は集落長が人々を集め、畑の草取りや収穫をさせて、食べ物がない人たちに収穫した作物や牛を分け与えていました。それで、全ての人が飢えずにすみました。しかし今や、収穫するものが減り、彼らを助けることができません。家畜を食べさせる牧草もほとんどなくなりました。牛たちは水を探して長時間移動しなければなりません。水不足は人間にも大問題です。川や井戸は涸れ、入手できる水もいつも汚れているので、コレラや下痢などの病気が蔓延しています。

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ムソカジ・シバンゼ
(47歳、高校教師・農家)

季節が変化し、私達農民はいつ種を蒔けばいいのかが分からなくなりました。かつては11月15日までに種を蒔けばたくさんの収穫が得られました。今では、11月に種を蒔いても、雨が降ることはないのです。特に今年は最悪の年でした。今までは少なくとも300袋のトウモロコシが収穫でき、家族の1年間分の食糧を賄えた上に、残りのトウモロコシを現金収入のために売ることもできました。しかし今年は30袋しか収穫できず、私の教師としての給料を合わせても、家族全員を養うことができません。学校でも、子供たちは飢え渇いています。栄養が足りず、生徒の集中力も低下しています。水不足も深刻で、雨水集水装置もありますが、今はもう空です。学校には菜園もあり、学校にいるエイズ孤児たちに作物を分配していましたが、今年は水不足で収穫できず、孤児たちに食べさせることすらできません。

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スワジーランドの現状 1/3
スワジーランドの現状 2/3
スワジーランドの現状 3/3

情報提供:ナターシャ テロット / FoE スワジーランド
(Voice from communities affected by climate change)

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