COP13, COP/MOP3
国連バリ気候会合、閣僚級に入るまで ~バリ・ロードマップを巡る交渉の行方~
2007年12月11日
2007年12月3日から、国連気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)及び京都議定書第3回締約国会合(COP/MOP3)が、インドネシアのバリで開催されています。また、京都議定書の附属書Ⅰ国(AnnexⅠ)の更なる約束に関するアドホックワーキンググループ第4回再会合(AWG4)、国連の実施に関する補助機関第27回会合(SBI27)と科学的・技術的助言に関する補助機関第27回会合(SBSTA)も同時に開幕しました。
昨年発表された気候変動の経済影響を評価したスターン・レビュー、米国前副大統領のアル・ゴアの「不都合な真実」、今年2月から発表されているIPCC第四次評価報告書による最新の科学的知見、そして何よりも地球規模で頻発する異常気象と自然災害が、世界中の政府、メディア、NGO、世論の気候変動交渉に対する関心と危機感を高め、バリ会合には約190各国の政府代表団と17000人の参加者が集まっています。
いよいよ来年、2008年から始まる京都議定書の第一約束期間を目前に控えたこのバリ会合では、その第一約束期間の終了後(2012年)の次期枠組の合意に向けた交渉のタイムラインの合意を目指します。さらに、適応、技術移転、森林減少・劣化からの排出の削減(REDD)に焦点が当てられています。
開幕初日、豪のラッド新首相が京都議定書に批准し、会場全体が盛り上がりました。これで主要排出国で京都議定書に参加していない国は、米国のみとなりました。午後からは、SBI及びSBSTAが開催され、相反する主張が飛び交い、合意に向かう交渉の困難さが案じられながら初日を終えました。
そのような中、交渉に前向きな動きをもたらしたのは2日目に出された中国の提案でした。中国は、IPCCの示した最も厳しい削減パターンに沿い、先進国工業国は温室効果ガスの排出を2020年までに1990年レベルから25~40%削減すべきだと主張しています。また、2009年までにAWGにおいてAnnexⅠの削減目標の合意を終わらせ、2010年までに途上国を含めた対話のプロセスを延長させることも提案しました。
このような中国の歓迎されるべきイニシアティブが見られる一方で、日本は、初日から京都議定書を廃棄してしまうともとられる発言をしたり、途上国への技術移転を妨害しているように見られたり、CDM(クリーン開発メカニズム)への環境影響が未だ計り知れないCCS(炭素回収・貯留)や原子力の導入を提案したりと、国際社会から非難を受けてしまう言動を繰り返しています。
世界中の気候NGOのネットワークであるCAN(Climate Action Network)は、その日の交渉の中で最も気候変動を助長させるような言動をとった国に「化石賞」を授与しています。不名誉なことに、我が国日本はこの賞を連日受賞する有様です。また、今月11日は京都議定書が、日本で誕生して(1997年採択)10周年目の記念日であり、当時のホスト国として京都議定書を最も尊重すべき国であるにも関わらず、法的拘束力を持つ削減目標でなく、各国が自主目標を掲げるだけのプレッジ アンド レビューを勧めて次期枠組みを弱めようとしているような姿勢も、世界の環境NGOから批判されています。
1週目の最後の日にあたる8日(土)、共同議長によりバリ・ロードマップ(マンデート)の草案が提案されました。前文には、今後10年~15年の間に温室効果ガス排出のピークを迎え、その後減少させ、2020年までに先進国の排出量を1990年レベルから25~40%削減、2050年までに世界の排出量を2000年レベルから半減させることの必要性を、IPCCによる科学的な証拠を強調した上で示しています。
このように草案の中に数値目標が盛り込まれてきたこと等に対し、米国や日本などは強く反対しました。また、途上国間でも意見が異なり、交渉は難航しているようですが、具体的な議論はほとんどがClose Meetingで協議され、外側からは状況をつかみにくくなっています。11日(火)現在の新しい草案の中には、数値目標は残っており、日本も途上国を含む「全ての国の参加」を条件に容認しました。しかし、明日から始まる閣僚級会合における議論の焦点のひとつになっていくとみられています。
これまでの事務レベル交渉の中での一番の成果は、適応基金の合意です。意見が対立してきた運営主体に関しても、5つの地域から構成された理事会を設置と、暫定的に地球環境ファシリティ(GEF)が事務局を担うことが決まりました。また、この適応基金に関するすべての問題について、京都議定書第6回締約国会合と、その後3年おきに見直されることになっています。
今日で、AWG、SBI、SBSTAは閉会し、今後の交渉は閣僚級会合に託されていきます。