COP18
FoEI プレスリリース
「ドーハ気候交渉:切迫するも見えない進捗」(和訳)
2012年 11月23日
カタール・ドーハ
ドーハで開催される国連気候交渉に向けて各国の代表団が準備を進めているが、破壊的で悲劇的な気候変動を止めるために率先して行動すべきはずの先進国の思惑により、進展の見られない交渉について、FoEインターナショナルは強い懸念を発表します。*1
国連気候交渉は、過去20年の間、わずかな進展を見せることもありましたが、現状では後退しています。最近では、2020年に始まる、実行力の期待できない新しい枠組み(議定書)を2015年に合意することが決められています。*2
気候危機に対して、多くの国々は、誤った解決方法の促進と、排出削減の枠組みを弱体化させるためだけにドーハ会合に参加する心づもりのようです。
もし私たちがさらなる気候変動を防ぎ、また取り返しのつかない気候変動影響がもたらす苦悩や環境破壊を回避するため、温室効果ガス排出量を安全なレベルにまで減らすことを望むのであれば、世界の排出量のピークは2015年でなければなりません。
Sarah Jayne(FoEI・クライメート・ジャスティスコーディネーター)は次のように述べます:
「ハリケーン“サンディ”による多くの犠牲者やナイジェリアの破壊的な洪水等、気候変動の影響は今や明白であり、驚くほど頻繁に生じています。二酸化炭素濃度は最高値を記録し、6℃もの気温上昇も想定されています。残念ながら、米国に先導される先進国諸国により、気候変動対策のための公平な国際枠組みの実現は困難な状況となっています。さらに、それらの国々は、気候変動対策と同時に、気候危機を助長する石油、ガス、石炭等の化石燃料開発や排出権取引、アグロ燃料、大規模農業、そして“緑の砂漠(プランテーション)”等を促進し続けています。
米国、豪、カナダ、日本は、足を引っ張り、妨害しながらも国際交渉の主役の座は譲りません。また、ヨーロッパは排出増加を許容するような削減目標を設定しました。さらに大企業と金融業界のためだけの危険なしくみである、排出権取引の拡大を促進しています。 同時に、それらの国々は、破壊的なプロジェクトや土地収奪を生じさせるような間違った気候変動対策を支援し、それによって引き起こされた環境破壊や不公平に立ち向かう人々の声を無視し続けています。
各国の政策や国連交渉のプロセスにまさって、既得権力と多国籍企業の影響力が、交渉の失敗を招いています。*3 交渉の行き詰まりを打破するためにも、それらの問題についても対策を講じる必要があります。例えば化石燃料企業に支払われる何十億ドルもの公的資金等が問題提起されることで、気候変動対策に前向きな結果をもたらす可能性があります。」
Asad Rehman(FoE英国気候変動キャンペナー)は次のように述べます:
「FoEインターナショナルは、ドーハ会合の参加国に、気候危機の現実と向き合い、公平で野心的な気候変動対策の基盤づくりを急ぐために、以下のことを求めます。
科学に基づく公平な排出量削減、開発途上国の対策のための公的資金による支援、技術移転の推進、そして排出権取引の廃止などです。すべての人々の健康と福利の向上と同時に、経済システムの転換を促進し、真に持続可能なエネルギーと食糧需給を実現すること、そして排出量削減が必要とされています。
我々は急がなければなりません。迅速な行動ができなければ、各国政府は、人々と環境を守る能力の低さに信頼を失うことになるでしょう。」
FoEインターナショナルは次のことを求めます:
・科学と公平性に基づき、緊急に先進国が拘束力のある排出量削減を。
・途上国の持続可能な開発と適応のために先進国による適切な気候資金と技術移転を。
・排出権取引とカーボンオフセットの廃止。
・UNFCCCの原則を尊重する将来枠組みは、「共通だが差異のある責任」の原則と先進国と新しい市場メカニズムのためではない拘束力のある削減目標を含むこと。
・持続可能でない経済システムの転換を促進するため、各国政府は、地域社会の暮らしや権利を守り、安全な気候とより良い健康と福利を実現する努力をすること。
*1
先進国は世界人口の15%しか占めていないにもかかわらず、歴史的排出量の3/4の責任を負っています。先進国には、気候変動枠組み条約の下、最も早く排出量を削減し、適切に公的資金を開発途上国の気候変動対策に提供するという、道徳的また法的な義務を持ちます。
*2
2011年に南アフリカのダーバンで行われたCOP17では、2007年に約束されたバリ行動計画の実行を前進させる代わりに、新たな枠組みのための新しい交渉のラウンドを始めることに同意しました。ダーバンプラットホーム(ADP)はドーハで交渉を始め、2015年までに終了することになっています。ダーバンプラットホームには、今後10年の排出削減活動を遅らせ、向上心は低く、国際枠組みの基本である公平性が失われ、京都議定書よりさらに弱くて影響力がないシステムの構築に向かうリスクがあります。ドーハでのCOP18では、京都議定書の第2約束期間の、先進国の排出量削減の目標設定、気候資金の進捗、そして京都議定書に参加しない米国の排出量削減目標の進捗が必要とされています。
*3
400もの世界の市民団体と社会運動が、環境に関する国際交渉の失敗の原因としてコーポレートキャプチャーを非難しました。国連気候交渉のようなプロセスにまさる企業の過度な影響力に終止符を求める提案を国連に提出しました。今のところ、国連からの反応はありません。コーポレートキャプチャーに関するFoEインターナショナルの報告は、こちらからダウンロードいただけます。
https://www.foei.org/en/resources/publications/pdfs/2012/reclaim-the-un-from-corporate-capture/view