【Q&A】原発「テロ対策」施設とは? 猶予期間の延長の問題点とは? 

いま、原発の「特定重大事故等対処施設」(いわゆる「テロ対策施設」)の建設の猶予期間を、事実上延長する案がパブリック・コメントにかけられています(2026年7月3日まで)。

「テロ対策施設」とはそもそも何でしょう? なぜ、猶予期間が設けられていたのでしょうか? Q&Aをまとめました。

Q1:原発「テロ対策」施設とは?

A1:福島第一原発事故後、原発の規制が見直され、新規制基準が策定されました。この際、故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムへの対応として、原子炉格納容器の破損を防止するため、可搬型の電源車に加え、「遠隔制御(緊急時制御室)」「注水ポンプ」「電源」などを備えた施設を設置することが義務付けられました。これが、「特定重大事故等対処施設(特重施設)」、いわゆる「テロ対策施設」です。

原子炉建屋から100m以上の離隔距離を確保するか、大型航空機の衝突に対して頑健な建屋に収納することが求められています。

実用発電用原子炉に係る新規制基準について -概要- 原子力規制委員会

Q2:なぜ、「テロ対策施設」だけ猶予期間が設けられた?

A2:2013年7月に施行された新規制基準は、既存の原発に対しても最新の基準を遡及適用する「バックフィット制度」が導入されました。これにより、新規制基準を満たさない原発は原則として稼働できないのがルールとなりました。

しかし、「テロ対策施設」は建設に時間がかかることから、例外的に設置までの猶予期間が認められました。

  • 当初のルール: 「新規制基準の施行日(2013年7月)」を起算点とし、5年後の設置を求めました。
  • 2016年のルール緩和: 「本体施設の設工認(設計及び工事の計画の認可)」を起算点とすることに変更されました。これは「本体の設計が固まらなければテロ対策施設の設計もできない」という事業者側の物理的・技術的な事情を考慮し、実質的な期限を後ろ倒しする形での緩和でした。

そして、現在、さらなる緩和が進められようとしています。[TOP]

Q3:今回の改定案はどのようなもの?

A3:いままでは、「本体施設の設工認(設計及び工事の計画の認可)」を起算点として、そこから5年が「テロ対策施設」の建設期限でした。

今回の改定案では、猶予期間の起算点を、本体施設の使用前確認日(商業運転開始の直前)から5年にする案が示されています。

これにより設置期限が実質的に先送りされます。詳しくはこちらの原子力規制委員会の資料をご覧ください。

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Q4:「テロ対策施設」がなくても運転できる期間が長くなるということ?

A4:はい、そうなります。

具体的な例として、東北電力女川原発2号機をあげましょう。

  • 従来のルール(設工認認可日:2021年12月を起点): 期限は2026年12月でした。
  • 今回の改定案(使用前確認日:2024年12月を起点): 期限は2029年12月となります。

このように、ルール変更によって期限が3年程度後ろ倒しされることになります。つまり、テロ対策施設なしで運転できる期間が、3年長くなることになります。

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Q5:事業者側の言い分は?

A5「テロ対策施設」の猶予期間延長に関しては、事業者側からの強い働きかけがありました。2025年10月、原子力事業者と原子力エネルギー協議会(ATENA)は、近年の建設業界の労働環境の変化などを理由に、「テロ対策施設」の猶予期間を3年延長することを求めました。先頭にたったのは、女川原発の「テロ対策施設」の建設が遅延し、2026年12月には原発を停止せざるをえないとみられていた東北電力でした。

原子力規制委員会は、この要請をいったんは退けたものの、最終的には、起算点を後ろ倒しにすることにより、事業者側からの要請を受け入れました。改定の理由として、「期限までにテロ対策施設の完成に至った事業者がほとんどいなかった」ことを挙げています。[TOP]

Q6:「猶予期間」が延長されると、何が問題?

A6: 最大の問題は、本来設置が義務付けられた「テロ対策施設(特重施設)」がない状態で、原発の運転が長期化することです。

新規制基準において、「テロ対策施設」は「意図的な航空機衝突」などの重大な事態に備えるための不可欠な設備として位置づけられています。可搬型の電源車等だけでは新規制基準を完全に満たしているとはいえず、テロ対策施設が未完成の状態は、いわば「安全基準を満たしていない状態での運転」が常態化することを意味します。

規制緩和によって期限が先送りされることは、事業者が十分な安全対策を講じないまま、本来の基準に適合しない状態で稼働を続けることを事実上容認する形となり、住民の安全を守る観点から看過できない問題です。[TOP]

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