日本・インドネシアの環境NGO5団体、阪和興業に森林を破壊するバイオマス燃料の輸入中止に関する質問書を送付

 

2025年12月11日にインドネシアからの木質ペレット輸入を中止するよう求める要請書および質問書に対し、送付先の阪和興業株式会社から回答をいただきました。その回答にて、ほとんどの質問に対する明確な回答が得られなかったことから、2026年1月21日に再度質問書の送付を行いました。

背景

近年インドネシアでは、日本ではバイオマス発電所の燃料として利用されている木質ペレット生産を目的とした「エネルギー産業用造林(HTE)」が急速に広がっており、面積は約130万haにも達しています。
これにより、天然林の伐採および単一樹種による人工林への転換が進行し、生物多様性の喪失、洪水リスクの増大や森林や農地へのアクセス不可による地域住民の生活への深刻な影響が現地NGOより報告されています。

特に、スラウェシ島北部のゴロンタロ州で生産されている木質ペレットは、日本や韓国などへの輸出向けであり、日本では商社の阪和興業が輸入しています。
このような背景から、FoE Japanはこれ以上、インドネシアの天然林を破壊することがないよう、阪和興業へ木質ペレットの輸入を中止することを要請するとともに、以下表1の質問票を昨年の11月に送付しました。
また、阪和興業からの回答において、FoE JapanおよびインドネシアNGOの一団体であるTrend Asiaより評価・コメントを行いました。(以下対象表参照)

質問書と回答に関する対照表

11月6日付け質問阪和興業からの回答評価・コメント 注)
1. 貴社は、木質ペレットの輸入が現地の天然林の伐採、
生物多様性の破壊、地元住民の土地・森林利用の阻害
につながっていることについて、どのような認識を
お持ちですか。
またその認識をお持ちになった根拠となる情報は
どのようなものでしょうか?
・地域社会の支援および経済発展への貢献を目指し、
合法的かつ社会的責任を伴った事業運営を継続して
まいります。
・コミュニティから直接情報を収集し、地域社会の意見
を適切に反映していると理解しています。
・FoE JapanおよびインドネシアNGOの調査では、
地元住民へのヒアリングで、土地・森林利用への阻害に
つながっているという声を確認している。
しかし、このことについての認識や見解について回答が
なかった。
・伐採権区域内における生息地の回復・再生を
示す明確な証拠の提示がない。
2. このような状況は、貴社の環境や社会に対する方針、
とりわけ自然環境や人権への配慮に整合しないの
ではないでしょうか。
当社のバイオマス事業は、当社の環境方針・人権方針
などに沿って運営されています。
このポリシーには、環境関連法規の遵守、
資源・エネルギーの有効活用等が含まれています。
・「整合している」との認識が示されているが、
質問1のような指摘を踏まえておらず、疑問である。
・オイルパームプランテーションを対象とした
環境アセスメントのみしか実施されていないとの理解。
現行事業にはエネルギー用プランテーションを
対象とした新たな環境アセスメントが必要である。
3. 1) 「合法性、持続可能性に準じた原材料調達方針」
を開示していただけますか。
明確な回答がなく、方針の開示はなかった。
3. 2) ①木質ペレットの生産による天然林への
影響について
PT BTL と PT IGL のコンセッションエリアは1990年代
から2000年代にかけて伐採の痕跡が認められる。
二次林地域であることが確認されています。
「天然林への影響」については言及がない。
「二次林地域」であったとしても、「天然林」である。
3. 2) ②伐採地周辺の村々および住民の方々への
影響について
(HCV評価に関して)コミュニティから直接情報を
収集し、地域社会の意見を適切に反映していると
理解しています。
・FoE JapanおよびインドネシアNGOの調査では、
地元住民へのヒアリングで、土地・森林利用への
阻害につながっているという声を確認している。
・作業道作設、伐採、造成を含むすべての事業による
影響があるのか否か、どのような影響があるのか、
に関して言及がなかった。
3. 2)③(a)トレーサビリティ(由来証明)持続可能に調達した木材を原料として加工しています。トレーサビリティが確認できているのか否かについて
言及なし。
3. 2)③(b)合法性当社は、PT BJA、PT BTL、および PT IGL がすべての
法令に適切に準拠していることを確認しています。
・確認した法令の範囲に言及なし。
・現地企業3社は事業用地権/栽培権(Hak Guna Usaha,
通称HGU)を保有していると主張しているが、この権利
は森林コンセッション区域外の許可を対象としており、
オイルパームプランテーションを対象にしたものである。
その後、私有林/権利林(Hutan Hak)を保有している
とのことだが、IGLおよびBTLコンセッション内の森林
区域の状況や地目が不明確なままで、私有林/権利林
として指定された土地の所有権は明確な法的根拠
を欠いている。
3. 2)③(c)持続可能性持続可能なバイオマスエネルギー生産に取り組み、
地域社会の支援および経済発展への貢献を目指し、
合法的かつ社会的責任を伴った事業運営を継続して
まいります。
調達原材料に関する「持続可能性」については言及なし。

注)FoE JapanおよびTrend Asiaによるコメント

1月21日付の再質問書

上記、評価・コメントを経て、1月21日、あらためて質問書を提出しました。内容は、地域コミュニティでの社会的・環境的な影響に対する阪和興業の見解や、環境影響評価の結果の開示を問うものになっています。
詳細は、以下の通りです。

2026年1月21日

阪和興業株式会社
代表取締役社長 中川洋一 様

インドネシア・ゴロンタロ州からの
木質ペレットの輸入に関する再質問書

日本とインドネシアのNGO 5団体による2025年11月6日付の質問書に対して、ご回答(2025年12月11日付)をいただき感謝申し上げます。
しかしながら、すべての質問へのご回答をいただけなかったこと、およびいただいたご回答の意図が不明確であったことを受け、再度、質問をさせていただきたく、本再質問書をお送りいたします。
以下の再質問へのご回答をいただけますと幸いです。
また、ぜひ対面での会合について、再度ご検討いただければ幸いです。
ご多忙中恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

■ 持続可能なバイオマス生産への取り組み

(阪和興業による回答)
持続可能なバイオマスエネルギー生産は、当社のバイオマス事業の中核をなすものです。当社は PT Biomasa Jaya Abadi(以下 PT BJA)から木質ペレットを調達しており、同社は PT BTLおよび PT IGL が持続可能に調達した木材を原料として加工しています。PT BTL および PT IGL はガマル(Gamal)を栽培し、4-5 年周期で収穫されます。森林栽培活動はすべてインドネシアの法令に従って実施されています。

(質問1)「既存の天然林を皆伐してガマルを植栽する土地(転換)に由来する木材」=「持続可能に調達した木材」というご見解と読み取れますが、そのような理解でよろしいでしょうか?

(質問2)「ガマル」を植栽されていることは理解しましたが、現在の調達原材料とは無関係と理解しておりますが、そのような理解でよろしいでしょうか?

(阪和興業による回答)
インドネシア環境林業省の土地履歴情報によれば、PT BTL と PT IGL のコンセッションエリアは 1990 年代から 2000 年代にかけて伐採の痕跡が認められる二次林地域であることが確認されています。

(質問3)「二次林地域」は依然として天然林です。この地域を「皆伐&ガマル植栽地への転換」することは「森林減少」だと認識しております。このことにつきまして、御社のご見解をお示しください。

(阪和興業による回答)
主に栽培されているガマルは、インドネシア環境林業省によるエネルギー作物、ならびに農業省によるプランテーション作物として位置づけられています。ガマルは多年生植物で、1 回の植栽で 4〜5 回の収穫が可能であり、約 4 年のサイクルで更新されます。また、成長が早く根が強いため、新エネルギー資源としての価値に加え、保全や土壌浸食防止にも有用とされています。

(質問4)ガマルの植栽は、具体的に何年から開始されたのでしょうか?
また、約4年で収穫可能とのことですが、具体的にいつから「ガマル」をバイオマス燃料として輸入・販売を開始されるご計画でしょうか?それとも「ガマル」は輸入燃料として想定していないのでしょうか?

■ 環境および社会への配慮と法令遵守

(阪和興業による回答)
当社は、PT BJA、PT BTL、および PT IGL がすべての法令に適切に準拠していることを確認しています。PT BTL および PT IGL は、2013 年および 2014 年に国土庁(BPN)ゴロンタロ州地方事務所から事業用地権/栽培権(HGU)を取得しました。また 2020 年には、環境林業省より木材林産物利用のための「私有林(Hutan Hak)」指定を受けています。

(質問5)確認された法令について、具体的にお示しいただけませんでしょうか?
※法令も事業権取得に関する規定、事業地内における木質ペレット原材料の生産管理に関する規定、木質ペレット製造・加工等、工場内生産に関する規定、木質ペレットの国内輸送に関する規定、木質ペレットの輸出に関する規定等々、サプライチェーンの各段階における様々な規定があるかと思います。その各規定への遵守状況をどのように、どのような書類を根拠として確認をされているのか、具体的にお示しいただけますと幸いです。

(阪和興業による回答)
PT BTL および PT IGL の事業は、環境林業省が認定した独立監査機関による審査を受けており、両社は森林製品合法性検証(VLHH)証明書を取得しています。
当社は、インドネシアの環境影響評価制度(AMDAL)の要件に従って評価が行われたコンセッションエリアからのみ、木質ペレットを調達しています。

(質問6)「(前略)森林製品合法性検証(VLHH)証明書を取得している」とのご回答ですが、原材料に関する「持続可能性」については確認できていない、との理解でよろしいでしょうか?

(質問7)「環境影響評価制度(AMDAL)の要件に従って評価されたコンセッションエリアのみ」とのご回答ですが、PT. BTLおよびPT. IGLが所有する事業権(HGU(国土庁)とHutan Hak(林業省))において、AMDALが実施されていない、またはその対象となっていないエリア(区画)があると理解してよろしいでしょうか?

(質問8)そうしたエリアでもPT. BTL、PT. IGLは伐採事業を実施しているが、御社の調達原材料には含まれていないという理解でよろしいでしょうか?

■ 環境影響評価(EIA)プロセス

(質問9)この環境影響評価が実施された年や時期が記載されておりませんが、具体的にいつ実施されたものでしょうか?
また、EIAの承認はどの機関が行っていますでしょうか。

(質問10)6つのステップのうち「6. パブリックコンサルテーションおよび承認」につきまして、「地域住民」や「ステークホルダー」に関する情報が記載されておりませんが、具体的に「いつ」、「誰に対して(州・県・郡・村など地方自治体の役職など)」実施されたものなのでしょうか?

(質問11)EIAは、スコーピング段階、ドラフト段階で一般公開され、ステークホルダーからのコメントを求める期間が設定されますが、このEIAはそのような手続きが踏まれましたか。その場合、公開期間はいつからいつまででしたか。

(質問12)上記のステークホルダーからのコメント期間中、ステークホルダー向けの説明会などは開催されましたか。

(質問13)質問をさせていただきましたインドネシアNGOを含む5団体の関心は、その環境影響評価の結果にありますが、EIA報告書は地域住民を含むステークホルダーに公開されていますでしょうか?
また、その写しをいただくことは可能でしょうか?

※勿論、インドネシア語のままで構いません。

(質問14)6ヶ月毎に行われている環境モニタリングの結果は、地域住民を含むステークホルダーに公開されていますでしょうか?
また、直近の環境モニタリング結果/報告書の写しをいただくことは可能でしょうか?

■ 生物多様性の保護に向けた取り組み

(質問15)(同じ質問になりますが)インドネシアNGOを含む5団体の関心は、その環境影響評価の結果にありますが、EIA報告書を開示いただくことは可能でしょうか?
※勿論、インドネシア語のままで構いません

■ HCV 評価に関する地域社会との関わりについて

(阪和興業による回答)
PT BTL および PT IGL では、「自由意思、事前通知、十分な情報に基づく同意(FPIC)」の原則を優先し、コンセッションの下流に位置する地域を含む複数の村を対象に、ステークホルダー・マッピング、参加型マッピング、フォーカスグループディスカッション、さらに関連する主要ステークホルダーへの詳細なインタビュー等を実施しています。これらのプロセスを通じて、コミュニティから直接情報を収集し、地域社会の意見を適切に反映していると理解しています。

(質問16)「(前略)コンセッションの下流に位置する地域を含む複数の村を対象に(後略)」とのご回答ですが、具体的な地域名および村名についてお示しいただけませんでしょうか?

(質問17)「ステークホルダー・マッピング、参加型マッピング、フォーカスグループディスカッション、さらに関連する主要ステークホルダーへの詳細なインタビュー等を実施」とありますが、何年に行われたのでしょうか?また、上段のEIAとは別のプロセスで行われたのでしょうか?それとも、EIAの一環で行われたのでしょうか?

(質問18)草の根コミュニティとの自由意思に基づく事前同意(FPIC)を実施したとのことですが、コミュニティの意見に基づく文書を作成し、企業の伐採権に異議を唱える方法は存在するのでしょうか?もし存在する場合は、どのような方法かご教示いただけますでしょうか?

■地域社会や住民への影響について

(質問19)11月6日付けの要請書および参考資料でお示しした通り、FoE JapanおよびインドネシアNGOが実施した、地元住民へのヒアリングで、事業が土地・森林利用への阻害につながっており、森林破壊による洪水や地すべりの発生への懸念、生計に不可欠な森林へのアクセスを失う恐れがあることから、当初から事業を拒否してきた住民もいると理解しています。こうしたことを踏まえて、再度、地元社会や住民への影響について、貴社のご見解を再度お示しください。

国際環境NGO FoE Japan
インドネシア環境フォーラム(WALHI)/FoEインドネシア
WALHIゴロンタロ
Forest Watch Indonesia
Trend Asia

 

 

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