日本貿易保険の支援検討事業(キャメロンLNG)に対する意見書提出

脱化石燃料2023.9.8

 本日、FoE JapanとFoE USは、日本貿易保険(日本政府が100%出資する輸出信用機関)が支援を検討している(注1)米国ルイジアナ州キャメロンLNG拡張事業に対し、地域社会や気候に対する多大な負の影響を鑑み、支援を行わないよう求める意見書を提出しました。

 キャメロンLNGプロジェクトは、米国ルイジアナ州ハックベリーにおける液化天然ガス(LNG)事業で、1,200万トン(400万トン×3系列)のLNGの生産と輸出を行うものです。2022年、フェーズ2開発に合意し、年間最大生産能力675万トンのLNG設備1基の追加や、現在稼働中の3基の生産能力増強が計画されています。

 ルイジアナ南西部は、LNG開発のために深刻な社会・環境影響をうけており、追加の投資は地域コミュニティにさらなる負荷をもたらします。キャメロンLNGの周辺40マイル(約65キロ)圏内には、10以上のLNG輸出ターミナルが存在しています。

 キャメロンLNGを含む、ルイジアナに立地するLNG施設はハリケーンの影響に対し脆弱です。2020年にはカテゴリー4のハリケーンが2度もルイジアナ南西部を襲い、大きな損害を及ぼしました。ハリケーン・ローラによりキャメロンLNGは一時操業停止に陥り、217トンものメタンを2日間にわたって大気中に放出しました。

 また、キャメロンLNGの操業は常に周辺環境に汚染をもたらしてきました。LNG輸出ターミナルから排出されるベンゼン、NOx、メタンなどの大気汚染物質はたびたび基準値を上回っています。2019年、キャメロンLNGは操業を開始した翌日に起きたメタン漏洩について情報公開を怠り、2021年には米国EPA(米国環境保護庁)も、2019年時点にキャメロンLNGが基準値を上回る汚染物質を排出していたと報告しています。2021年1月6日、時速63マイルに達した突風により施設の熱酸化装置が停止し、メタン、ベンゼン、揮発性有機化合物が大量に放出されました。

キャメロンLNG施設はカルカシュー川を汚染し、地元の漁業者がえびやオイスター、魚を安全に獲ることができなくなっています。メキシコ湾で操業できなくなり、収穫量と利益が減少しています。

詳しくは以下の意見書(和訳)をご覧ください。
>PDF版はこちらから(原文和訳

注1:プロジェクト情報 【23-007】https://www.nexi.go.jp/en/environment/a/2023051502.html


キャメロン LNG(フェーズ II)への支援可能性に関する NEXI への意見書 

日本貿易保険(NEXI)代表取締役社長 黒田 篤郎 様

NEXI によるキャメロン LNG(フェーズ II)への支援検討についてコメントさせていただきます。FoE Japan と FoE United States は、NEXI が米国南部湾岸における本LNG事業やその他のLNG事業を支援することは、地域社会や気候に悪影響を及ぼすため、本事業を支援しないよう強く要請させていただきます。なお、以下の指摘に加え、Louisiana Environmental Action NetworkによるキャメロンLNGの歴史に関する資料(環境基準違反の報告など)を添付させていただきました。

地元への広範な悪影響 

ルイジアナ州南西部は、世界的なLNG依存の犠牲地帯となっています。キャメロンLNGの半径40マイル圏内には、すでに稼動中あるいは建設・計画中の巨大なLNG輸出ターミナルが10ヶ所以上存在します。液化事業に加えて、貯蔵タンク、広大なパイプライン網、そしてLNG運搬船の絶え間ない往来は、周辺コミュニティに爆発事故という重大な脅威をもたらします。

キャメロンLNGが立地するルイジアナ州ハックベリーは、近年、強いハリケーンによって壊滅的な被害を受けた地域です。多くの住民は、強風や雨で被害を受けた家に住み続けています。この地域と住民は暴風雨に対して非常に脆弱であるため、保険会社はもはや被害を補償してくれません。エルニーニョ現象の影響で、さらなる暴風雨がこの地域を襲う危険が高まっています。ルイジアナ州南西部の湿地帯は、高潮や洪水から内陸部の人々を守る天然の要塞です。しかし、キャメロンLNGとそのCCSおよびガス貯蔵事業の建設計画、そして海岸沿いに建設されつつある他の産業施設は、暴風雨の際に地域を守る湿地帯を破壊しようとしています。

キャメロンLNGが立地するキャメロン郡とカルカシュー郡は、すでに産業施設と汚染施設によって過度な環境負荷を強いられています。産業施設による有毒汚染による悪影響は、メキシコ湾沿いのこれらの施設の近くにある低所得者層や有色人種の人々の居住区域に不当に集中しています。キャメロンLNGは、環境正義調査を行う際に、施設周辺の半径2マイルを対象としています。しかし米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)は最近、LNG施設の環境正義分析を行う際に半径30マイルを対象としています。キャメロンLNGとこの拡張事業は、環境正義コミュニティー(注:貧困や人種などを背景に、他地域と比べて不釣り合いに大きな環境影響を受けるコミュニティを指す)に不当に大きな悪影響を及ぼすでしょう。

キャメロンLNGとルイジアナ州沿岸で操業する他のLNG輸出ターミナルは、この地域を頻繁に襲う巨大ハリケーンに対して極めて脆弱です。2020年には、ルイジアナ州南西部をカテゴリー4のハリケーンが2回襲来し、内陸40マイルに至る広範囲に被害をもたらしました。LNG輸出ターミナルの周囲に建設される同じ洪水防止壁が、蒸気雲の形成と爆発に必要な閉鎖空間を作り出します。米運輸省パイプライン・有害物質安全局の最近の報告書は、蒸気雲爆発のリスクと、蒸気雲が集まって爆発する条件、そしてそのような爆発が他の施設に及ぼす連鎖的な影響について概説しています。

しかし、キャメロンLNGはルイジアナ州の悪天候への備えができていません。この施設は2020年のハリケーン「ローラ」の際に大きな被害を受け、操業不能となりました。その結果、2日間で217トン以上のメタンガスが大気中に放出されました。

キャメロンLNGの現在の汚染状況

センプラ社のキャメロンLNGは操業開始から数年が経過していますが、その間常に汚染源となってきました。同LNG輸出ターミナルは、大気汚染に関する許容された量を超える排出を繰り返し、ベンゼン、NOx、メタンに加え、癌やその他の慢性疾患を引き起こし、気候変動の原因となる他の汚染物質も大量に排出しています。2019年、キャメロンLNGは操業開始わずか1日後に発生したメタンガス漏れを公表しませんでした。同様に2021年、米国環境保護庁はキャメロンLNGに対し、2019年に基準汚染物質と有害大気汚染物質に関する許可限度を超過したことを通知しました。これにはベンゼン、一酸化炭素、メタン、揮発性有機化合物などの排出が含まれます。2021年1月6日、最高時速43マイルの突風により施設の熱酸化装置が停止し、メタン、ベンゼン、揮発性有機化合物が大量に放出されました。

キャメロンLNGでは、操業開始以来67件の漏出事故があり、これは月平均ほぼ2件の頻度となっています。これらの事故のうち48件は、熱酸化装置の不具合が原因です。これらの事故はいずれも、メタン、揮発性有機化合物、ベンゼン、その他の有害汚染物質の漏出につながります。規制当局が調査した結果、キャメロンLNGは許可に違反した運用を行っているという結論が2回出されました。こうした恒常的な違反行為でキャメロンLNGと規制当局が訴訟に至るのは時間の問題です。2022年、The Louisiana Bucket Brigadeは、最前線のコミュニティと協力して、キャメロンLNGの運用問題に関する報告書を発表しました。この報告書では、キャメロンLNGは排出違反の報告を怠り、ほぼ常時フレアリングを行っている悪質な業者であると結論付けています。近隣住民は「大気中へのメタンとベンゼンの定期的な流出、制御不能なフレアリング、度重なる機器の故障、天候による損傷」を訴えています。

有害汚染物質の絶え間ない排出は、キャメロンLNG周辺地域の多くの住民を怒らせ、住民たちは健康と安全に不安を抱くようになっています。しかし、度重なる違反は、同社が多額の罰金を支払ったり、公益団体から訴えられたりする可能性にもさらされています。この新たな拡張事業によって、汚染と被害は劇的に増加すると見込まれます。専門家の試算によると、二酸化窒素の排出量だけで国家大気質基準(NAAQS)を超え、許容された限度の18倍に上るとされています。

キャメロンLNGはカルカシュー川を汚染し、地元の漁師がこの地域でエビやカキ、魚を獲るのは危険になってしまいました。そのため漁師はメキシコ湾に追いやられ、操業コストが上昇し、漁獲高と収益性が低下しています。

キャメロンLNG拡張事業

この拡張事業には、この地域の湿地帯の下にある岩塩ドーム内でのメタンガス貯蔵施設建設が含まれます。同様に、キャメロンLNGは炭素回収・貯留(CCS)を施設に追加し、液体炭素をガス貯留施設の隣の岩塩ドームに貯留する計画です。これらのプロジェクトは、地域の湿地帯やその他の重要な生息地に大きな被害をもたらします。また、地域の水資源や水産資源がさらに汚染される危険性もあります。CCSは、地域に深刻なリスクをもたらす実証されていない技術であり、コミュニティはそのリスクを懸念しています。

絶滅危惧種 

我々は、「修正拡張事業の建設と操業は、クロコクイナやその他の種に影響を与えない」という環境社会影響評価(ESIA)の評価に同意しません。クロコクイナ(別名「羽毛ネズミ」)は、2020年以降、米国政府によって絶滅危惧種とみなされており、ルイジアナ州では個体数の4分の3が絶滅したため、絶滅の危機に瀕しているとみなされています。重要な生物多様性を保護し、キャメロンLNG拡張工事のような事業が、すでに危機に瀕している種をさらに危険にさらさないようにするためには、予防的アプローチが必要です。したがって環境社会影響評価は、この事業がクロコクイナに与える影響を十分に分析すべきです。

私たちの意見を検討する時間を割いていただけますと幸いです。NEXI とこれらの問題についてさらに話し合うことができれば幸いに存じます。

 

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