「国際情勢を踏まえた資源・エネルギーの安定的な確保のための構造的対応に関する論点整理案」に意見を提出

政府の「総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会」は、「国際情勢を踏まえた資源・エネルギーの安定的な確保のための構造的対応に関する論点整理案」をとりまとめ、8月22日までパブリック・コメントにかけていました。

FoE Japanはこれに対し、「化石燃料輸入依存からの脱却を最優先し、省エネルギーや再生可能エネルギーの拡大を進めるべき」などを指摘する意見を提出しました。バイオ燃料の輸入拡大は、森林の減少・劣化、生物多様性の喪失などをもたらすケースがあるため行うべきではないこと、CCS(CCUS)をエネルギー安定供給や脱炭素化のための重要な手段として位置づけるべきではないことなどについても、あわせて指摘しています。

2026年8月22日

「国際情勢を踏まえた資源・エネルギーの安定的な確保のための構造的対応に関する論点整理案」に対する意見

1.化石燃料輸入依存からの脱却と省エネ・再エネの拡大を優先すべき

・該当箇所:全体

(「石油や天然ガス等の化石資源を安定的に確保するとともに、非化石資源等の供給・利用を拡大することでエネルギー供給源の多角化を図る必要がある。」、「石油や天然ガス等の化石燃料の安定的な確保、非化石資源等供給・利用拡大、鉱物資源の供給源の多角化に向け、制度的措置を含めた構造的な対応策について、一体的に講じる」)

・意見内容:エネルギー安全保障のため、化石燃料輸入依存からの脱却を最優先し、省エネルギーや再生可能エネルギーの拡大を進めるべき。

・理由:

本論点整理案は、中東情勢等によって化石燃料の供給途絶リスクが顕在化したことを踏まえ、資源・エネルギー供給構造の「強靱化」を進める必要性を指摘している。エネルギー安全保障の観点から最も重要なのは、海外から大量の化石燃料を輸入し続ける構造を維持したまま調達先や輸送経路を多角化することではなく、化石燃料そのものへの依存を減らすことである。省エネルギーの徹底と再生可能エネルギーの最大限の導入を通じて、化石燃料輸入への依存を段階的に低減する方向へ大幅に修正すべきである。

今回の中東情勢によって明らかになったのは、日本が海外から大量の化石燃料を輸入し、その輸送を特定の地域や海上交通路に依存していることの脆弱性である。本論点整理案も、日本が化石燃料の大宗を海外に依存し、原油については9割以上を中東から輸入していること、また原油・天然ガス等の調達が海外からの海上輸送に依存していることを認めている。さらに、ホルムズ海峡の通航が困難となったことで原油輸入量が激減し、国家備蓄の放出や代替調達が必要となったことも記載されている。しかし、中東以外の地域から調達することで供給源を分散したとしても、海外の化石燃料資源と海上輸送に依存する構造そのものは残り、かつ戦争を含む国際情勢の変化や、資源価格の高騰などによるリスクも残り続ける。また、化石燃料依存は、気候変動対策とも逆行する。

省エネルギーを進めれば、化石燃料価格の高騰による家計や企業への影響を抑制することにもつながり、エネルギーコストの削減にもつながる。さらに気候変動対策とも合致する。再生可能エネルギーについても、「非化石資源等の供給・利用拡大」の一つとして付随的に扱うのではなく、エネルギー安全保障を実現するための中心的な手段として明確に位置づけるべきである。

本論点整理案では、「化石燃料のサプライチェーンの強靱化」として、調達先や輸送経路の多角化、代替輸送経路となるパイプラインへの日本企業の参画、海上輸送の安定確保等が検討されている。しかし、これらの対策には多額の投資が必要で、化石燃料インフラは長期間にわたって使用されることを前提として建設されるため、新たな油田・ガス田、パイプライン、輸出入ターミナル等への投資を進めれば、結果として化石燃料への依存と温室効果ガス排出を長期化させる「ロックイン」を招く。

したがって、政府による公的資金や政策支援は、化石燃料の供給拡大・インフラ整備ではなく、省エネルギー、再生可能エネルギーなど化石燃料依存を実際に減らす分野を優先すべきである。これは気候変動対策とも合致する。

2. バイオ燃料の輸入を拡大すべきではない

該当箇所:「2.非化石資源等の供給・利用拡大を通じたエネルギー供給構造の強靱化」

「(1)現状認識 ①バイオ燃料」全体

意見内容:バイオ燃料の生産・利用拡大に伴い、森林の減少・劣化、土地利用転換、生物多様性の喪失、食料生産等との競合、地域住民・先住民族の土地・資源へのアクセスの制限など、重大な環境・社会的影響が発生している事例がある。特に森林由来のバイオマス等については、森林・土壌に蓄積された炭素の損失や生物多様性の破壊を伴う場合があり、化石燃料の代替として無条件に「脱炭素」や「エネルギー安全保障」に資するものと位置づけるべきではない。

理由:

本論点整理案は、バイオ燃料を化石燃料の代替として利用の拡大をするとともに、日本企業による海外のバイオ燃料製造事業への参画を促進する方向性を示している。

バイオ燃料の生産・利用拡大に伴い、森林の減少・劣化、土地利用転換、生物多様性の喪失、食料生産等との競合、地域住民・先住民族の土地・資源へのアクセスの制限など、重大な環境・社会的影響が発生している事例がある。そのため、バイオ燃料を「非化石資源」として一括して扱い、その生産・調達の拡大をエネルギー供給構造の強靱化につなげることには大きな問題がある。

【森林・気候への影響】

森林由来のバイオマスは、燃焼時にCO2を排出することに加え、森林を伐採することで森林および土壌に蓄積された炭素が大気中に放出される。森林が再生するまでには長い時間を要するため、単純に「燃焼時のCO2は生物由来なのでカウントしない」とすることは、気候変動対策として適切ではない。原料生産のために森林伐採を伴うことが多く、森林および土壌が蓄えている炭素が大気中に放出される。実際、バイオマス燃料の燃焼時の炭素排出係数が石炭より高いことも研究によって示されている。

事例: 日本において木質ペレットの輸入量が2番目に多いカナダでは、ブリティッシュコロンビア州の貴重な原生林が皆伐され、木質ペレットとなっている事例がNGOより報告されている。また、インドネシアやマレーシアでも、生物多様性豊かな森林地帯の天然林を伐採し、日本も含めた海外向けの木質ペレット、パーム油を生産している。

【社会・人権】

森林は地域住民や先住民族にとって、食料、生活資源、生計、文化を支える重要な基盤である。現地では、木質ペレット生産に伴う森林・土地利用転換について十分な説明や自由意思による事前の情報に基づく同意(FPIC)が確保されず、森林や土地へのアクセスが制限される事例も報告されている。

農産物由来のバイオ燃料に関しては、大面積の土地を単一の作物栽培に利用することから、従来の土地利用や水資源との競合などの社会影響、土地収奪などの人権侵害が生じやすい。

事例:インドネシアでは木質ペレット等の生産を目的とした「エネルギー産業用造林(HTE)」が拡大しており、FoE Japanおよび現地NGOから、天然林の伐採や人工林への転換、生物多様性の喪失、洪水リスクの増大、地域住民の森林・農地へのアクセスへの影響などが報告されている。2025年8月にFoE Japanが行った現地調査では、バイオエネルギー用の植林地の麓に住む人々は、その森林地帯で木質ペレット生産のための企業活動が行われることを事前に知らされておらず、急に生活に欠かすことのできない森林へのアクセスが絶たれたと主張している。

【エネルギー安全保障】

エネルギー安全保障を目的とするのであれば、本来であれば海外から燃料を調達し続けることを前提とするのではなく、省エネルギーと国内の再生可能エネルギーを拡大することで、燃料輸入そのものへの依存を減らすことを優先すべきであるが、本案はバイオマス燃料輸入を大幅に増加させることを示唆している。

また、前述の通り、環境・社会影響や人権上の問題は、地域社会との対立を生み、安定供給上のリスクにもなりうる。

3. CCUSを化石燃料の利用の免罪符にすべきではない

・該当箇所:2.非化石資源等の供給・利用拡大を通じたエネルギー供給構造の強靱化②CCS 「脱炭素化の手段として CCUS の活用も重要な選択肢の一つ」特に、CCUSによる化石エネルギーの将来にわたる有効利用、既設火力の最大限活用、CCSへの政府支援に関する記述。

・意見内容:CCUSによって「化石エネルギーの将来にわたる有効利用」を可能にするという位置づけ、および既設火力の最大限の活用をCCUSによって支えるという方向性を削除すべきである。

・理由:

CCS(CCUS)を、エネルギー安定供給や脱炭素化のための重要な手段として位置づけ、化石燃料や既設火力の利用を将来にわたって維持する方向性には反対する。本案では、CCUSについて「化石エネルギーの将来にわたる有効利用を可能とする」技術と位置づけ、既設火力を最大限活用しつつ、その脱炭素化手段としてCCUSを活用することが示されている。また、CCS事業について、政府による支援措置を講じ、事業化・自立化を促進する方向が示されている。

CCSはそもそも、排出削減が難しいセクターへの利用が前提とされていた。再生可能エネルギーや省エネ技術などの代替が存在するエネルギーセクターは排出削減が難しいセクターとは言えず、火力の温存のためにCCSを活用するというのは本末転倒である。エネルギー安全保障の観点からも、化石燃料への依存を長期化させることは適切ではない。

仮に、CCSによって発電部門を「脱炭素化」できたとしても、化石燃料の輸入・輸送への依存、化石燃料の採掘に付随する環境・人権影響の問題も残る。加えてCO2の回収、圧縮、輸送、貯留という新たな設備・インフラとコストを必要とする。これは、エネルギー供給構造の強靱化という本論点整理案の目的とも整合しない。

そもそも、CCS技術によるCO2回収率は想定された9割以上回収に達するものはほとんどなく、分離・回収のためにも大量のエネルギーや水が必要となる。CO2の輸送・貯留に伴う漏出リスクも存在する。再生可能エネルギーや省エネルギーなど、より確実かつ費用対効果の高い対策と比較して優先すべき技術とはいえない。

CCS事業の経済性・実現可能性についても検証が必要である。過去のCCS事業では、資金不足等を理由として中止・延期された事業が多数存在する。日本政府自身も今回の論点整理案において、CCS事業について「まだ予見可能性が低い」と認め、そのために政府による支援が必要であるとしているが、事業者だけでは負担できないコストやリスクを公的資金によって支える構造になれば、CCSの失敗リスクとコストを国民が負担することになる。限られた公的資金をCCSに投入することで、再生可能エネルギー、省エネルギー、電化など、化石燃料への依存そのものを減らすための対策に振り向けられる資金が圧迫される可能性がある。

また、日本のCCS政策には、マレーシアやインドネシア等、外国へのCO2輸送・貯留の推進も含まれている。長距離のCO2輸送によるコストの上昇や、航行中の安全性への懸念、CO2貯留先の国や運搬中に漏出や事故が発生した場合の責任の所在の曖昧さなど、重大な問題や懸念が多数残されている。 

したがって、本論点整理案から、CCUSによって「化石エネルギーの将来にわたる有効利用」を可能にするという位置づけ、および既設火力の最大限の活用をCCUSによって支えるという方向性を削除すべきである。さらに、削減効果、コスト、リスク等の総合的な観点からCCS推進政策を抜本的に見直すべきである。

 

 

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