【プレスリリース】モザンビークにおけるエニ社の新規事業を国連専門家が批判

日本の国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)などの公的金融機関、複数の民間銀行団が、モザンビークの北部カーボ・デルガード州で計画されているモザンビークLNG事業を支援しています。しかし、同事業を巡っては人権侵害等が多数報告されており、国際的にも問題視されています。開発が行われている地域では2017年以降、慢性的な貧困や社会不満等から治安が悪化し、2021年4月には事業会社である仏トタル・エナジーズ(TotalEnergies)が「不可抗力宣言」を発出し、一時中断されていましたが、2026年1月末に再開されました。現地では、事業施設の警備にあたる部隊による一般市民に対する暴行が多数報告されています。また、地元住民は生計手段回復や約束されていた補償の受け取りが未だにできていないなど多くの問題が続いています。

そのような状況であるにもかかわらず、日本の官民は、同地域での「コーラル・ノースFLNG」という洋上LNG事業にも今後関与していく可能性があります。実際、JOGMECはこの事業に関して2024年10月6日に事業会社の伊エニ(Eni)との間で、日本にLNGを安定供給するために日本の金融機関の支援を促進する覚書を締結しています。1モザンビークLNGが抱える課題は、この事業に固有のものではなく、構造的な原因や現地の情勢なども関わっています。つまり、モザンビークLNGにみられるリスクや問題は、コーラル・ノースFLNGでも繰り返される可能性が高いと言えます。気候危機も深刻になる中、日本の官民は新たなLNG施設への支援を行うべきではありません。

モザンビーク北部のLNG事業地図、Solutions for Our Climate提供

コーラル・ノースFLNGについて詳しくは以下のプレスリリース(Justiça Ambiental!, ReCommon, Friends of the Earth France, BankTrack, urgewaldが共同で作成したものを、FoE Japanが和訳したもの)をご覧ください。

プレスリリース:https://stopmozgas.org/ja-blog-en/enis-new-project-in-mozambique-criticised-by-un-experts/ (PDF版英語原文はこちら/FoE Japanによる和訳はこちら)

モザンビークにおけるエニ社の新規事業を国連専門家が批判

2026年4月1日

「Say No to Gas! in Mozambique(モザンビークのガス開発に反対)」キャンペーンを運営しているNGOのメンバーは、国連が任命した人権専門家が表明した、アフリカ開発銀行(AfDB)によるコーラル・ノース浮体式液化天然ガス(FLNG)事業支援のための1億5,000万ドルの融資に関する深刻な懸念を共有している[1]。彼らは、すべての金融機関がこれらの専門家の呼びかけに応じ、モザンビーク北部でのガス拡張を支援しないこと、そして新たな化石燃料事業への金融支援を停止することを約束するよう求めている。

イタリア企業エニが主導するこの事業は、モザンビーク最北端のカーボ・デルガード州沖にガス採取と液化を目的とした浮体式プラットフォームを建設するものである。これは、2022年11月から稼働し液化ガスを輸出している、エニのコーラル・サウスFLNGの実質的な複製事業だと言える。この地域では過去8年間、モザンビーク軍と反乱軍との間で激しい紛争が続いている。

国連の声明の中で人権専門家らは、コーラル・ノースFLNG事業は「人権侵害の問題を悪化させ、気候変動を助長し、すでに不足している公的資金を再生可能エネルギーへの緊急投資から逸らす恐れがある」と述べている。また、同事業は「カーボ・デルガード州のガス産業によって引き起こされている既存の緊張状態や人権問題を悪化させる可能性がある」とも警告している。

モザンビーク北部では、トタル・エナジーズが主導するモザンビークLNG、エクソンモービル(ExxonMobil)とエニが主導するロブマLNG、エニが主導するコーラル・サウスFLNGなどの他の3つのガス採掘・生産事業が注目されている。国連人権専門家は、「カーボ・デルガード州におけるこれまでのLNG事業は、住民協議が不十分であったため、事業の主要な決定への地元住民の参加が阻害され、漁業、農業、天然資源に大きく依存する地域社会の生計手段の喪失や長期的な社会経済的混乱を招いてきた。雇用創出の約束にもかかわらず、識字率の低さや教育へのアクセスの制限により、地元コミュニティはこれまでに創出された雇用機会からほとんど恩恵を受けていないと報告されている」と指摘している。さらに、このような事態は、武力紛争と気候変動によって既に大規模な避難民が発生している地域で起きていると警告している。

以前から専門家らは、コーラル・ノースFLNG事業が過剰な温室効果ガス排出を伴う重大な気候影響をもたらす可能性があると警告しており、この問題はすでに2025年3月には指摘されていた。ReCommonの調査報告書「Hidden Flames」では、コーラル・サウスFLNGプラントの気候影響を調査し、特にガスフレアリング2とそれに伴う排出に焦点を当てた。これらはどちらもエニによって過小評価されていた[3]。

StopMozGasキャンペーンのメンバーとのやり取りの中で、アフリカ開発銀行は、コーラル・ノースFLNG事業が「フレアリングの最小化や排出管理を含む強力な環境および気候対策を統合しており、コーラル・ノースはよりクリーンなLNG事業の一つに位置づけられている」と断言した。しかし、フレアリングはLNGプラントでは珍しい問題ではなく、データデスクによる最近の調査では、LNGターミナルは生産開始後、業界が主張するよりもはるかに長い期間フレアリングを行う傾向があり、多くの施設でフレアリングが数十年にわたって継続していることが示されている[4]。

国連の声明の中で、専門家らは次のように述べている。「化石燃料の拡大による有害な環境および気候への影響がよく理解されてきている最中に、主要な多国間開発銀行がこのような性質の事業に資金を提供していることに、我々は強い懸念を抱いている。金融機関および企業は、国連のビジネスと人権に関する指導原則に基づき、自らの活動およびビジネス関係に関連する人権への影響を特定し、防止し、軽減し、是正する責任を負っている。」

彼らの警告は明確にコーラル・ノースFLNGに言及しており、アフリカ開発銀行に宛てられているが、そのメッセージの裏に隠された対象事業ははるかに多い。トタル・エナジーズを相手に、現在フランスで2件の刑事訴訟が進行している。1件目は過失致死と危険にさらされている人びとへの援助義務違反[5]、2件目は戦争犯罪、拷問、強制失踪への共謀[6]である。このフランスの多国籍企業の、モザンビークLNG事業が建設される予定の場所は、エクソンモービルとエニのロブマLNGと共有されている。コーラル・ノースFLNGや同地域の他の化石燃料事業に関連するこれらの要素は、すでに関与または関与の可能性のあるインフラの国際的な資金提供者によって見過ごされてはならない。

国連の声明によると、アフリカ開発銀行の決定は、同行の2021~2030年気候変動・グリーン成長戦略、国際司法裁判所の気候変動に関する勧告的意見、そして国際人権法に明記されている、今世紀中に経済の脱炭素化を図るという責務と矛盾しているように見える。専門家らは、同行に対し、化石燃料事業への金融支援をすべて停止するよう求めている。

「モザンビークにとってガス開発のコストは増大し続け、約束された収益はさらに減少し、モザンビークのエネルギー安全保障にはほとんど貢献しない化石燃料資源の開発プロセスの中で、地元住民や企業は機会から排除されています。アフリカ開発銀行は、関与し続けているすべての金融機関とともに、コーラル・ノースFLNGとモザンビークLNGの両方への関与を再考すべきです」と、Justiça Ambientalの事務局長であるアナベラ・レモス氏は述べている。

「国連人権専門家の声明は極めて明確です。モザンビークのガス資源を支配している大手企業が、悲惨な人権侵害の実績に責任を負っていることを認めています。この事実は、トタル・エナジーズのカーボ・デルガードでの活動とモザンビークLNG事業に関して、明白に記録されています。これらの事実が明らかになった以上、専門家にとって取るべき行動も同様に明確です。金融機関は義務を負っており、モザンビークおよび世界各地の化石燃料事業への支援を拒否しなければなりません。これは、すでに多くの犠牲者を出しているガス事業においてトタル・エナジーズへの融資を頑なに続けているフランスの銀行、クレディ・アグリコルとソシエテ・ジェネラルにも間違いなく当てはまります」と、FoEフランスの民間金融キャンペイナーであるロレット・フィリッポ氏は述べている。

「国連の人権専門家でさえ、人権問題の多さを理由に、モザンビークにおける新たなガス開発事業に反対を表明しています。トタル・エナジーズのモザンビークLNG事業は、こうした事業が直面する課題の典型例です。シーメンス・エナジーは、国連専門家の助言に耳を傾け、この破滅的な事業へのガスタービン供給計画を中止すべきです」と、urgewaldのエネルギーキャンペイナーであるソンヤ・マイスター氏は述べている。

「モザンビークにおけるガス開発の拡大は、人権を侵害し、手つかずの自然を破壊し、気候変動による大災害に最も脆弱な国の一つであるモザンビークの気候危機を助長しています。最近発生し、そして今もその影響が続いている大規模な洪水がそれを物語っています。何十万人もの人々が影響を受け、広範囲にわたって避難を余儀なくされています。スタンダードチャータード銀行、ランドマーチャント銀行、ネド銀行、アブサ銀行などの商業銀行は、モザンビークのガス開発拡大への資金提供をすべて停止する義務があります。さもなければ、ますます多くの証拠が示す有害なビジネス慣行に資金を提供することで、リスクが高まることになるでしょう」と、Bank Trackの銀行と気候変動キャンペーン責任者であるディオゴ・シルバ氏は述べている。

「SACE3とCassa Depositi Prestiti4は、この事業に関連する深刻な人権侵害にもかかわらず、モザンビークLNGへの資金援助を継​​続することを決定しました。現在Intesa Sanpaoloの傘下にあるUBI Bancaは、コーラル・サウスFLNGに資金を提供しました。これらの金融機関はすべて、コーラル・ノースFLNGとロブマLNGの両方に公的資金と民間資金を投入しようと競い合っています。私たちは、金融機関に国連の専門家からの警告に耳を傾け、これらの事業に資金支援を行わないよう求めます。イタリア国内の状況においては、これらの事業はイタリアの化石燃料への依存を悪化させるものであり、ホルムズ海峡の最近の閉鎖によって生じたエネルギーと経済への影響を考えると、近視眼的な選択です」と、ReCommonのキャンペイナーであるシモーネ・オグノ氏は述べている。

連絡先

プレスリリース本文の注釈
[1]Mozambique: UN experts concerned by African Development Bank funding for floating LNG project | OHCHR
[2]Mozambique: Harsh economic warning from Standard Bank and Oxford Economics – By Joseph Hanlon; Poisoned Gift – Moz24h
[3]ENI non ha rivelato la reale portata delle emissioni di gas climalteranti in Mozambico, lo rivela il nuovo rapporto di ReCommon “Fiamme Nascoste”; Hidden flames: flaring at Coral South FLNG – StopMozGas
[4]Revealed: the hidden climate impact of LNG
[5]French prosecutors launch manslaughter probe against TotalEnergies over Mozambique attack
[6]TotalEnergies faces criminal complaint for complicity in war crimes, torture and enforced disappearance in Mozambique

FoE Japanによる注釈

  1. JOGMEC「伊Eni S.p.Aとガスセキュリティ強化及びLNG供給・調達多角化に向けた協力覚書を締結」2024年10月7日 https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_08_00053.html ↩︎
  2. フレアリングとは、原油・天然ガスの生産時に発生する余剰ガスを焼却処分すること。環境省.「1.B.2.c.Flaring.iii フレアリング(コンバインド)(Flaring – Combined)(CO2, CH4, N2O)」https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/methodology/methodology_1B2cFiii_2019.pdf ↩︎
  3. SACEは、イタリアの輸出信用機関であるイタリア外国貿易保険。https://www.sace.it/en ↩︎
  4. CDPはイタリアの国営金融機関であるイタリア預託貸付公庫。https://www.cdp.it/sitointernet/it/homepage.page ↩︎

 

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