【要請書】ミャンマーで困難な状況にある人びとに確実に届く国際協力を求めます

開発と人権2024.10.11

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2024年10月4日

【要請書】
ミャンマーで困難な状況にある人びとに確実に届く国際協力を求めます

内閣総理大臣 石破 茂様

外務大臣 岩屋 毅様

 気候変動の影響で激化する災害は、日本のみならずミャンマーの人びとをも苦しめています。国連人道問題調整事務所(OCHA)の発表では、9月初旬に首都ネピドー、バゴー、カヤー、カイン、マグウェイ、マンダレー、モン、シャン東部・南部というミャンマーの広範な地域を襲った台風「ヤギ(台風11号)」によって、推定88.7万人が避難を余儀なくされています[1]。しかし、国際的な支援の手は十分に届いてはいません。

 2021年2月1日にミャンマー軍がクーデターを起こしてから、3年8ヶ月にもわたり、軍は違法な状態で国を支配し、人びとを殺戮し、不当に拘束した人たちを拷問やレイプで苦しめています。ミャンマー軍によって殺害された人は確認されているだけでも5,712人、死亡の詳細が未確認の方も約2,500人で、今も2万人以上の人たちが不当に拘束されたままです(9月30日時点。政治囚支援協会調べ)。こうした状況下、軍に対抗する勢力が統治する地域で軍による救援はあり得ません。ミャンマー軍は、自らの支配地域ですら支援が行き届かないためか、これまで軍が拒んできた海外からの支援をミンアンフライン軍最高司令官が要請したとも報じられています[2]。

 クーデターにより、契約先である選挙で選ばれたミャンマー政府が実質的には消滅したにもかかわらず、日本政府は既存のODA(政府開発援助)案件を継続したままです。その総額は7,396億円にものぼり、事業のうちバゴー橋建設のように軍系企業に利益をもたらすものがあります。また、日本政府が貸し出したODA資金がミャンマーの金融機関にプール・管理される「ツーステップローン」という形のODAがありますが、その資金は金融機関を支配下に置くミャンマー軍の管理下に入ってしまう恐れがあります[3]。日本は、ミャンマー軍の資金源となっている、またはその可能性が十分にあるODAの返済を、ミャンマー軍による深刻な人権侵害や残虐行為に苦しむミャンマーの人びとに強いる事態に陥っています。

 これまでの海外からの支援が困難な人びとに届かず、かつ別の問題を引き起こした事例も報告されています。今年3月にタイ政府が行った援助は、タイとミャンマーの赤十字社が実施し、ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)が監督しました。この支援に関し、カレンのコミュニティや国内避難民(IDP)、難民への人道支援を促進してきたカレン民族の市民社会組織最大のネットワーク、カレン平和支援ネットワーク(KPSN)は、報告書「倒錯する優先順位 カレン州におけるタイの人道支援活動の概観(Conflicting Priorities: A review of Thailand’s humanitarian initiative in Karen State)[4]」で、

・支援をそれほど緊急に必要としていないIDP地域が支援の対象になった

・配布された救援物資がIDPの優先ニーズに合っていなかった

・ミャンマー軍の国家統治評議会(SAC)が広報のために人道支援を利用することを許した

と報告しています。

 また、援助を担うミャンマー赤十字がミャンマー軍の高官らが深く関わる組織であることも以前から指摘されていることです。国連など国際機関を通した日本の援助も、ミャンマー赤十字を通して行われており、一部ではミャンマー軍による「援助の武器化」を懸念する声があります。例えば、5月に私たち呼びかけ団体が主催したオンラインセミナーで、AHAセンター元所長のアデリーナ・カマル氏は、「(ミャンマー)軍政の監視下で、援助をどこにどうやって配布するかについて指図を受けながら活動すれば前進はないも同然で、見せかけのためのものになる。支援や資金も無駄になり、もっと悪いことに、軍政によって道具として、武器として使われる」、「軍政やミャンマー赤十字のような軍政の協力団体、または軍政と提携する組織を通じて援助を届ける国家中心主義的アプローチを重視する支援は、危機の文脈や現場の状況に合っていない」と指摘しています。また、同じセミナーでカレン女性機構(KWO)の会長クニョーポー氏は、「日本のような国が、まさに助けようとしている人びとのニーズをそもそも作り出したビルマ軍を通じて援助しないことも必要だ」と述べています[5]。

 日本の市民や在日ミャンマー人のグループも、軍を通さない国境越えの支援を続けています。日本政府は現状を正しく認識し、ミャンマー軍を利するODAを止め、命の危機にさらされている多くの人びとを救うため、軍を通さないミャンマーへの国際協力を、知恵を絞って実施してください。

注:

[1] OCHA Myanmar. Myanmar: Flood Situation Report #2, 20 September 2024.
https://reliefweb.int/report/myanmar/myanmar-flood-situation-report-2-20-september-2024
[2] France 24掲載AFP配信記事. Myanmar junta makes rare request for foreign aid to cope with deadly floods. (2024年9月25日閲覧)
https://www.france24.com/en/live-news/20240914-myanmar-junta-makes-rare-request-for-foreign-aid-to-cope-with-deadly-floods
[3] 【要請書】ミャンマー軍を利するODAと公的資金供与事業の停止を日本政府に求めます
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20231201.pdf
[4] 報告書Conflicting Priorities: A review of Thailand’s humanitarian initiative in Karen Stateの日本語訳.
http://mekongwatch.org/PDF/20240502_KPSN_ConflictingPriorities_Japanese.pdf
[5] 2024年5月18日開催「連続セミナー:ミャンマーからの声を聞く 第4回「危機を切り抜ける もっとも弱い立場の人たちに人道援助を届けるためには」」での発言.
http://www.mekongwatch.org/events/lecture01/20240518.html

呼びかけ団体

メコン・ウォッチ、武器取引反対ネットワーク(NAJAT)、日本ビルマ救援センター、日本国際ボランティアセンター(JVC)、国際環境NGO FoE Japan、アーユス仏教国際協力ネットワーク

賛同団体(合計54団体、うち団体名非公開 2団体)

「環境・持続社会」研究センター(JACSES)

CODE海外災害援助市民センター

アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)

アジア太平洋資料センター(PARC)

アトゥトゥミャンマー

がんばれミャンマー!応援情報チーム

シェア=国際保健協力市民の会

ドキュ・アッタン

ふぇみん婦人民主クラブ

ミャンマ-(ビルマ)市民の訴えを聞く会

ミャンマーの今を伝える会

ミャンマーの人たちを支援する有志の会

ミャンマー民主化を支援する信州の会

ミャンマー問題を考える会

一般財団法人 アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)

一般財団法人 日本ミャンマー友好協会

一般財団法人 ワークスペースエイジア

一般社団法人 平和村ユナイテッド

沖縄YWCA

開発教育協会

外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会(外キ協)

京都YWCA

憲法を生かす会

呉YWCA

公益財団法人 横浜YWCA

公益財団法人アジア保健研修所(AHI)

公益財団法人ジョイセフ

公益財団法人神戸YWCA

公益社団法人 日本キリスト教海外医療協力会

在日ビルマ市民労働組合

松山YWCA

新潟YWCA

静岡YWCA

仙台YWCA

大阪YWCA

地雷廃絶日本キャンペーン

テラ・ルネッサンス

東京YWCA

特定非営利活動法人 ASIAN PEOPLE’S FRIENDSHIP SOCIETY(APFS))

特定非営利活動法人 AMネット

特定非営利活動法人 BORDER ANGELS

特定非営利活動法人 Music Dream Creation

特定非営利活動法人 アジア・コミュニティ・センター21

特定非営利活動法人 アジア女性資料センター

特定非営利活動法人 アフリカ日本協議会

特定非営利活動法人 ミャンマー国際支援機構

特定非営利活動法人 久留米地球市民ボランティアの会

特定非営利活動法人 地球の木

特定非営利活動法人 APLA

特定非営利活動法人 関西NGO協議会

日本YWCA

日本ラテンアメリカ協力ネットワーク

熱帯林行動ネットワーク (JATAN)

名古屋YWCA

他2団体

本件の問合せ先

メコン・ウォッチ 
Email: info@mekongwatch.org 
東京都台東区台東1-12-11 青木ビル3F
Tel: +81-3-3832-5034 Fax: +81-3-3832-5039

 

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