トタル・エナジーズのモザンビークLNG施設付近でモザンビークの治安部隊が犯した一連の残虐行為の報告について直ちに公式調査を行うよう求める

脱化石燃料2024.9.30

共同声明トタル・エナジーズのモザンビークLNG施設付近でモザンビークの治安部隊が犯した一連の残虐行為の報告について直ちに公式調査を行うよう求め

Justiça Ambiental(Friends of the Earth Mozambique)Les Amis de la Terre France(Friends of the Earth France)Milieudefensie(Friends of the Earth Netherlands)、Friends of the Earth Europe、Friends of the Earth Japan、ReCommon、Reclaim Financeによる共同声明

原文英語

2024年9月26日、Politicoは独立系ジャーナリストのアレックス・ペリー[1]氏による記事を掲載し、2021年中頃にモザンビークの公安部隊がトタル・エナジーズの敷地内近くで行ったとされる民間人の虐殺に関する情報を明らかにした。

Justiça Ambiental(Friends of the Earth Mozambique)の事務局長アナベラ・レモス氏は、次のように述べている。「これは、フランスの化石燃料大手企業のモザンビークでの活動を支援する米国、英国、オランダ、イタリアの金融部門を含む金融機関にとって、無視することのできない情報だ。複数の報告書や会議を通じて、私たちや私たちと連携する団体は、この事業に関連するリスクと、トタル・エナジーズが実施した人権デューデリジェンスにおける重大な欠陥について、企業、銀行、各国政府に警告してきた[2]。ガス事業をめぐるさらなる残虐行為の疑いに関するこの報道により、トタル・エナジーズの責任は今日再び疑問視されている。」

この記事は、同地域での軍事化が促進される要因ともなった、パルマ市での大規模な反乱軍の攻撃から3か月後の、2021年7月から9月にかけての疑惑の出来事を概説している。記事によると、モザンビーク軍は安全を求めていた数百人の民間人を襲撃し、モザンビークLNG施設の入り口近くにある、窓のない金属製の輸送コンテナに男性たちを監禁した。そして、180人から250人の男性が3ヶ月間拘留され、水も食料も与えられず、殴られ、窒息させられ、拷問され、刺されるなどし、最後にはほとんどの人が「行方不明」になったとも報じている。調査チームの推定では、とらわれた人のうち生き残ったのはわずか26名だけである。女性は釈放されるまでの1、2日間、屈辱と度重なる性的暴行の対象となった。

アレックス・ペリー氏は以前、カーボ・デルガード州での暴力的な紛争とモザンビークLNG事業による深刻な影響についての記事を発表している。2021年3月と4月にパルマ市で反乱軍が攻撃を仕掛けた後、彼は虐殺中に何名の死者が出たかを明らかにするために、徹底的な調査を行った[3]。この攻撃により、トタル・エナジーズは不可抗力[1] を宣言し、2021年4月から事業を一時停止している。

2023年、これらの攻撃の被害者の家族と生存者らが訴訟を起こし、パルマ市での攻撃中にフランスのエネルギー会社が、下請け業者を保護せず、民間人を避難させるのに必要なヘリコプターの燃料を供給しなかったと非難した[4]。告訴を受けて、フランスの検察官はトタルエナジーズに告訴についてのコメントを求め、この件を追跡するか、終了するか、あるいはさらなる調査を行うかを決定する[5]。

アムネスティ・インターナショナルは、2021年にモザンビークの治安部隊を戦争犯罪の容疑で非難している[6]。最近まで、トタル・エナジーズは事業活動の「安全を確保する」という合意に基づき、モザンビーク軍の統合任務部隊(Joint Task Force)に装備や金銭的補償を直接提供していたが、現在は代わりに政府に対し支払っている[7]。トタル・エナジーズ自身の委託による2023年の報告書は、ジュネーヴ条約に照らし合わせると、モザンビークLNGとモザンビーク軍との恒久的な繋がりは、「事業を紛争当事者たらしめただろう」と結論付けている[8]。

この事業を支援する政府及び民間の関係者[9]は、この事業が地域の安全保障と人権に及ぼす脅威や、気候と環境への影響について警告を受けてきた[10]。情報公開請求を通じて得られた情報によると、これらの警告や意思決定者らが表明した懸念にも関わらず、事業への支援が強行されたことが明らかになった[11]。

この虐殺に関するPoliticoの調査報道 は、トタル・エナジーズとモザンビーク軍との物議を醸す繋がり、特に戦争犯罪と見なされる可能性のある重大犯罪で告発されている部隊との関係に新たな注目を集めている。記事によると、「特殊部隊はトタル・エナジーズの敷地内に拠点を置いていた。彼らは石油大手企業の守衛所から拘留と処刑の作戦を実行した」としている。さらに、モザンビークの特殊部隊は、「トタルの事業」を守ることが任務だと言う将校によって率いられていたと報じられている。モザンビークLNG事業の取締役、マキシム・ラビルー氏は、トタル・エナジーズは「報道された疑惑の出来事について何も知らなかった」、「そのような出来事が起こったことを示す情報はなかった」と述べている。さらに、ラビルー氏は、同社は疑惑の事件発生当時は現場にいなかったとし、「疑惑の重大さを考えれば、このメッセージを極めて深刻に受け止めている。」と述べた。記事によると、モザンビーク国防省とモザンビーク大統領府はコメント要請に応じなかったという。

記事は、「モザンビークLNG社とその親会社であるトータルエナジーズ社には、彼らが不在の間に(事業を)守る人たちが人権侵害を行っていたかどうかを調査する十分な理由があったと、検察官が考えるだけの根拠がある。」と主張している。

「Say No to Gas! in Mozambique(モザンビークのガス開発に反対)」キャンペーンを運営しているNGOのメンバーは、事業とその資金支援に関与する全ての公的機関と民間の関係者に、生存者と犠牲者の家族への真実、正義、賠償を確実にするために直ちに行動するよう呼びかけている。また、レイプ、殺人、拷問など戦争犯罪に該当する重罪で告発されている治安部隊にトタル・エナジーズが協力していることから、この事件と同社の潜在的な役割について直ちに公式調査を行うよう求めている。

注釈

[1] Perry, A. 2024. '"All must be beheaded”: Allegations of atrocities at French energy giant’s African stronghold’. Politico. Published 26 September 2024.

[2] Uprights, July 2023, 'Assessment of TotalEnergies’ Mozambique LNG Project Human Rights due diligence’.

[3] Perry, 2023. 'Palma massacre’. ペリー氏の調査により、1,193名のモザンビーク民間人が殺害または行方不明になったことが判明し、Armed Conflict Location & Event Data (ACLED)は801名の死亡を確認した。

[4] FoE France, 10 octobre 2023, “Total faces criminal charges in French courts for its negligence during the Palma attack, in northern Mozambique“.

[5] Le Monde, May 4, 2024, France probes TotalEnergies over 2021 Mozambique attack

[6] Amnesty International, 2021. 'What I saw is death: war crimes in Mozambique’s forgotten Cape'.

[7] Zitamar News, May 20, 2024, “Inside the new security deal between Mozambique and gas project investors“,
TotalEnergies, 2020, 'Total signs agreement with the Government of Mozambique regarding the security of Mozambique LNG project’.

[8] Rufin and Glowacki, 2023. 'Report on the socioeconomic, humanitarian and human rights situation in the Palma-Afungi-Mocímboa area', page 20. Commissioned by TotalEnergies.

[9] 2020年7月、28の金融機関が149億ドルのプロジェクトファイナンスに参加した。輸出信用機関には、国際協力銀行(JBIC、日本)、日本貿易保険(NEXI)、米国輸出入銀行(US EXIM)、英国輸出信用保証局(UKEF)、イタリア外国貿易保険株式会社(SACE)、アトラディウス信用保険会社(ADSB)が含まれる。商業銀行には、ソシエテ・ジェネラル(この事業におけるトタルエナジーズの財務顧問)、クレディ・アグリコル、JPモルガン、みずほ銀行、スタンダード・チャータード銀行などがある。全リストはこちら.

[10] モザンビークLNG事業は、ライフサイクル全体で33億~45億トン相当のCO₂を排出することになる。これはEUに加盟している27ヵ国全ての年間温室効果ガス排出量の合計を上回る。Friends of the Earth EWNI and the New Economics Foundation, October 2021. Tip of the iceberg : the future of fossil fuel extraction.

[11] Knoote and Rosenhard, June 2024, ‘Acceptable Risk? How the security threat in Cabo Delgado was ignored for the benefit of ‘The Netherlands Ltd.’, Milieudefensie and Both Ends.


 

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