FoE Japan声明「原子力と化石燃料推進のGX方針に抗議」

原発2023.7.10

12月22日、第5回GX実行会議が開催され、今後10年間で「官民合わせて150兆円の投資」を促す方針が決定される。GX(グリーントランスフォーメーション)というが、その内容は、原子力推進、化石燃料利用の維持推進に力点を置くものであり、これらを「グリーン」と呼ぶことは到底できない。

脱炭素やカーボンニュートラルを掲げながらも、気候危機の現実からは目が背けられ、持続可能で公正な社会の構築からはほど遠いものである。議論の根幹は「エネルギー安定供給の再構築」とされているが、既存の産業・エネルギー構造を維持するものに他ならない。

原発推進方針への転換は次世代へのリスク押し付け

特に原子力について、「新増設はしない」「運転期間は原則40年、1回に限り20年延長」というこれまでの基本方針を覆し、次世代革新炉の開発・建設を進め、運転期間についても実質的に60年以上の延長運転を認めることが決められた。

このような重大な方針転換が、環境団体や市民など経産省の方針に批判的な委員の参加が非常に少ない審議会とGX実行会議で、3か月程度の期間で決められ、市民の声を聴く機会の設定もない。福島第一原発事故以降、世論は圧倒的に脱原発を支持し、「原発依存度を可能な限り低減」する方針はこれまでのエネルギー基本計画でも大前提として掲げられていた。これを覆して「最大限の活用」とすることは、市民参加をまったく無視し、原発のリスクやコストを次世代に押し付ける決定であり、強く抗議する。

水素、アンモニア、CCSは化石燃料維持に他ならない

気候危機に向き合い、脱炭素を目指すのであれば、化石燃料からの脱却に正面から取り組まねばならない。水素・アンモニアやCCS(炭素回収・貯留)などを非化石エネルギーとして位置づけ、導入にかかる多大なコストを政府が支援する方針がまとめられた。しかし、技術的にも確立しておらず、導入には時間的にもコスト的にも高いハードルがある。水素やアンモニアは、当面は海外で化石燃料から生成し輸送してくるものが政府支援の対象となり、「脱炭素」からほど遠いものである。今後、海外での生産時の炭素回収等によりクリーン化を目指すとされているが、具体的にいつ実現するかも見通せない。

そもそも既存の火力発電所での水素やアンモニア、バイオマスの混焼で脱炭素化はできず、排出を増やすだけである。

GXはアジアの脱炭素化を阻害

日本政府はGXで、アジア諸国の脱炭素化を支援するとし「アジア・ゼロエミッション共同体」の実現を掲げ、化石燃料由来の水素・アンモニアや、CCS、LNG技術を輸出しようとしている。すでに、日本の官民が連携してインドネシアで数々の水素・アンモニア、CCSの調査・実証事業を行っている他、フィリピンなどでもガス開発が推進されている。それにより生物多様性や地域社会の生活に甚大な影響が及ぶケースも出ている。日本の既存産業の利益を守るために、アジアなど途上国の人々が被害を受けているのだ。到底、支援などとも呼ぶべきではなく、また大量の温室効果ガス排出や高いコストを押し付けることは許されない。アジア諸国の脱化石燃料化は、コミュニティのニーズに基づく形で、省エネルギーや再生可能エネルギー、エネルギーの効率利用などを支援していくべきだ。

脱原発・脱化石燃料に資源の集中を

エネルギー基本計画でも今回のGX戦略でも、「あらゆる選択肢を追求」するとされ、莫大なコストやリスクがあっても原子力や化石燃料の脱炭素技術を進めるとされている。しかし、すでに世界では再生可能エネルギーのコスト低下が進んでいる。日本でも、今後さらなる普及と合わせてコスト低下も進めることが必要であり、そこにこそ資源と投資を集中させなければならない。原子力や化石燃料発電の維持は、省エネや再エネへの投資を大きく妨げる。また、大規模集中型の原子力や化石燃料発電と、地域分散型で柔軟な調整を必要とする再エネでは、目指すべきエネルギーシステムのあり方がまったく異なる。現在の大規模集中型システムを温存することで、再エネの大量導入を妨げ、再エネ中心社会への転換を大幅に遅らせることとなってしまう。

人や地域を中心にすえたシステムチェンジへ

エネルギー危機への対応は、徹底的な省エネ、そして地域に根差した再生可能エネルギーをできる限り早期に主力とし、化石燃料や原子力と置き換えていくことでこそ達成できる。原子力や化石燃料など、海外からの輸入資源に頼り続けている限り、問題は解決しない。

加えてFoE Japanは、多国籍企業等の利益や大量生産・大量消費の経済を前提とする社会から、自然や自然と共に生きる人々を中心にすえた持続可能で民主的な社会への抜本的な変革(システムチェンジ)を目指す。様々な形の人権の尊重、市民参加、格差・差別の解消とともにあるエネルギーのあり方は、地域分散型の再生可能エネルギーを、省エネルギーとともに進めていくことに他ならない。

誤ったGX(グリーントランスフォーメーション)ではなく、システムチェンジのあり方こそ、今議論すべきである。

* GX実行会議
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/index.html

* 資源エネルギー庁 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第52回会合)
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2022/052/

 

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