【声明】原発推進「行動指針」に抗議-原発のリスクとコストを社会全体に押し付け、将来に禍根を残す

原発2022.12.11

12月8日、経済産業省資源エネルギー庁の原子力小委員会において、「今後の原子力政策の方向性と実現に向けた行動指針」が概ね了承されました。これをうけ、FoE Japanでは、以下の声明を発表しました。

原発推進「行動指針」に抗議-原発のリスクとコストを社会全体に押し付け、将来に禍根を残す

本日、経済産業省資源エネルギー庁の原子力小委員会において、「今後の原子力政策の方向性と実現に向けた行動指針」(注1)が概ね了承された(注2)。原発立地地域の支援、原発運転期間原則40年ルールの緩和、「次世代革新炉」の開発を名目とした原子力産業への公的リソースの投入、プルサーマルの推進、官民あげての海外プロジェクトへの参画支援などが盛り込まれている。

これは、日本社会に対する原発依存の押しつけだ。莫大な原発維持のコストを担うのは私たちであり、解決不能な核のごみ問題や原発のリスクやコストを次世代にも負わせるものである。将来に禍根を残す。

また、原子力産業の利益を代弁するような委員が圧倒的多数を占める小委員会で、国民を置き去りにして大筋決定したことは、大きな問題である。私たちはこの「行動指針」に強く抗議し、撤回を求める。

指針には「立地地域との共生」がうたわれており、立地地域に対するさまざまな支援策が盛り込まれている。従来、原子力関連では多額の交付金がばらまかれてきた。これは地域経済を原発依存にし、地域の健全な発展を阻害してきた面がある。最近では、老朽原発の稼働やプルサーマルの受け入れなどに対して、交付金を拡充する案も報道されている(注3)。これは地域振興の名のもとに、リスクの受け入れを地域に押し付けることにほかならない。

現在、「原則40年、1回に限り20年の延長可能」と規定されている原発の運転期間については、審査や裁判所の仮処分命令などで停止していた期間を除外し、60年を超える運転延長を可能にする方針を示した。2022年11月29日付の声明で示した通り、これは福島原発事故の教訓として原子炉等規制法に盛り込まれた最低限の安全規制を揺るがすものである。停止していたとしても、配管、電気ケーブル、ポンプ、弁など原発の各施設・部品は劣化する。過去には配管破断の事故・トラブルも多く発生している。交換できない部品も多く、電力会社の点検できる範囲も限定的である。また、何よりも2012年、運転期間の原則40年ルールが与野党合意のもとに原子炉等規制法に盛り込まれた当時の国会審議にも矛盾する。

「規制」として導入された制度を、「利用」という立場の経済産業省主導で緩和し、原子力規制員会がそれを容認するということは大きな問題だ。新たな運転期間の制度は、経済産業省が所管する「電気事業法」に盛り込まれるとみられており、これにより、運転期間を認可するのは原子力を利用する立場の経済産業省となる。「規制」が「利用」に従属することとなるのではないか。

次世代革新炉」の研究開発について国が前面にでて支援を行うことについても盛り込まれているが、これは必要性と実現可能性に疑問がある投機的な研究開発に、税金をはじめとした巨大な公的リソースを費やすことになる。「夢の原子炉」と呼ばれ1兆円を超す国税が投じられながら、ほとんど動くことなく廃炉が決まった「もんじゅ」の失敗を、私たちはまた繰り返すのだろうか。唯一現実的な革新型軽水炉に関しても、何が革新なのかは定かではなく、従来の原発の延長線上でしかない。原発を新設すれば、さらに数十年にわたり原発を動かして、解決不能な核のごみを長期にわたって出し続けることになる。

プルサーマル推進」の非合理性や危険性も、多くの団体が繰り返し指摘している(注4)。プルサーマルは本来ウラン燃料を燃やすはずの炉で異質な核特性をもつプルトニウムを燃やすもので、通常のウラン燃料よりはるかに危険になる。使用済みMOX燃料の熱量は高く、移動できるようになるまでに100年以上、原発敷地内のプールで冷却しなければならない。また現在日本国内で使用済みMOX燃料を処分できる施設はない。「もんじゅ」は廃止となり、六ヶ所再処理工場も26回も竣工が延期され、核燃料サイクルは実質破綻しているのにもかかわらず、その失敗を認めずにプルサーマルに固執し、リスクとコストを住民や国民に押し付けることはゆるされない。

経済産業省は、「エネルギー供給における自己決定力の確保」をうたい、エネルギー安全保障の観点から原発を推進することを正当化している。しかし、原発は核燃料を輸入にたよっている。また、核施設は武力攻撃のターゲットにもなりえることは、現在生じているロシアのウクライナへの侵攻でも明らかだ。事故やトラブルが頻繁に生じて、不安定な電源でもある。大規模集中型の電源である原発は、ひとたび事故やトラブルが生じればその影響は広範囲に及ぶ。気候変動対策としても、電力需給ひっ迫対策としても、原発は誤った選択肢である。

福島第一原発の事故は収束しておらず、事故の被害は継続している。私たちは今一度、福島原発事故の惨状を思い起こし、当時の議論をふりかえり、真に持続可能なエネルギーの未来のために、市民が主体となり、社会的な議論を進める必要がある。

注1)11月28日の原子力小委員会で示された「アクションプラン」を「行動指針」に改名。
注2)松久保委員、村上委員が議論が拙速である、国民的議論が必要などの異論を述べた。
注3)「老朽原発に交付金、拡充 再稼働巡り最大25億円」(朝日新聞デジタル2021年4月7日)によれば、新たな交付金は、老朽原発に関して福井県が国に対し、地域振興策の一つとして電源三法交付金の見直し拡充を求めたことへの回答として示された。40年超運転の原発を抱える立地県に対し、1発電所につき最大で25億円を交付する、とされている。また、報道によれば、経済産業省はプルサーマル発電に新たに同意した自治体に交付金を出す方針を示している(「プルサーマル発電で交付金 経産省、新たな自治体向け」(日経新聞2022年1月3日)など)。
注4)直近のものとしては、本年11月22日付のFoE Japanも含めた5つの市民団体による「抗議声明 危険なプルサーマルは即刻中止せよ」を参照。

 

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