声明:原発運転期間「原則40年ルール」の骨抜きは許されない―法制化当時の国会審議に矛盾し、利用と規制の分離に反する

経済産業省は11月28日、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会において、「原子力政策の方向性と実現にむけたアクションプラン」を発表しました。「再稼働への総力結集」「既設炉の最大限活用」「次世代革新炉の開発建設」などが含まれています。アクションプラン全体が、原発のコストとリスク、解決不可能な核のごみの問題に目をつぶり、原発推進に前のめりの問題の多いものですが、FoE Japanでは、とりあえず原発運転期間の延長についての抗議声明を出しました。

声明:原発運転期間「原則40年ルール」の骨抜きは許されない

法制化当時の国会審議に矛盾し、利用と規制の分離に反する

経済産業省は11月28日、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会において、「原子力政策の方向性と実現にむけたアクションプラン」を示し、この中で、「再稼働への総力結集」「既設炉の最大限活用」「次世代革新炉の開発建設」などを盛り込んだ。私たちはこれに強く抗議し、撤回を求める。

現在、「原則40年、1回に限り20年の延長可能」と規定されている原発の運転期間については、審査や裁判所の仮処分命令などで停止していた期間を除外し、60年を超える運転延長を可能にする方針を示した。

現在の原発運転期間の規定は、福島第一原発事故の教訓に基づき、2012年、原発をめぐる規制の一環として「原子炉等規制法」に盛り込まれたものである。当時の国会審議では、停止期間も含めた原発の老朽化のリスクが繰り返し説明された。たとえば、担当大臣として国会で政府側の見解を述べた細野豪志氏(当時環境大臣)は、「作動するそのそれぞれの機器の耐用年数というものも考慮にした中で40年というところの数字を導き出した」「例えば電気製品をとっても、車を見ても、40年前の技術で今そのまま通用するものは、逆に言うとほとんどない」(注1)とし、また、原子炉に中性子が当たって劣化することに加え、「システム自体の古さ」も挙げ、「そういったことを考えれば、四十年の運転制限制度というのは必要である」とした(注2)。さらに、参考人として招致された田中俊一氏(初代原子力規制委員会委員長、当時は候補)は、「40年運転制限制は、古い原子力発電所の安全性を確保するために必要な制度」「四十年を超えた原発は、厳格にチェックし、要件を満たさなければ運転させないという姿勢で臨むべき」と述べた(注3)。

結果として、与野党合意の上で、原発の運転期間の上限を原則40年とすることが定められ、原子力規制委員会が所掌する原子炉等規制法に当該規定が盛り込まれた。今も、原発の老朽化をめぐるリスクは変わっていないはずである。原発の利用政策を担う経済産業省主導で、運転期間の上限を骨抜きにすることは論外である。

原発が停止していても、原子炉、配管やケーブル、ポンプ、弁など原発の各設備・部品は劣化する。交換できない部品も多く、電力会社の点検できる範囲も限定的である。

運転期間から停止期間を除くことは、安全を犠牲にすることにほかならない。

原子力規制委員会は、原発の運転期間の上限について「規制ではなく利用政策である」としたが、これはまぎれもなく「規制」である。2012年の原子炉等規制法の議論の際は、当然のこととして運転期間の上限は規制の一環として議論された。今回、原子力規制委員会が、原発の運転期間の上限について、「経済産業省が決めるべきこと」と規制から切り離したことは、福島原発事故の教訓を踏まえた規制の独立性をないがしろにし、自らの責任を放棄した行為である。

規制委は、30年を超えた原発については、10年を超えない期間ごとに高経年化(老朽化)に関する審査を行うとしている。しかし、これは現在も行われていることであり、規制の強化にはあたらない。老朽化に関する電力会社の評価は限界があり、原子力規制委員会の審査は電力会社の評価を前提としたものである以上、万全とはいいがたい。法制化当初は、「原則40年」「延長を認めるのは例外中の例外」とされていたのにもかかわらず、規制委は、電力会社の延長申請をことごとく通してきた。

経済産業省および原子力規制委員会は、次期通常国会において、原子炉等規制法から原発運転期間の上限に関する規定を削除し、類似の規定を電気事業法に盛り込み、停止期間を運転期間から除外する法改正を行おうとしている。これは、「利用」を「規制」に優先させるものであり、国民の安全を犠牲にする。これを許してはならない。

重大なリスクをかかえ、コストも高く、事故やトラブル続きで不安定な原発にしがみつくことは、電力需給ひっ迫の解決にもならず、エネルギー安全保障上も決して得策ではない。何万年も管理が必要な「核のごみ」を将来世代に押し付けることにもなる。今一度、福島原発事故の惨状を思い起こし、当時の議論をふりかえり、真に持続可能なエネルギーの未来のために、市民が主体となり、社会的な議論を進める必要がある。

注1)第180回国会衆議院環境委員会(2012年6月5日)
注2)第180回国会衆議院環境委員会(2012年6月15日)
注3)第 180 回国会衆議院議院運営員会(2012年8月1日)

【緊急署名】原発運転期間延長に反対

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脱原発の必要性

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3.原発は不安定でリスクが大きい
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