ツアーレポート ベンチ作りワークショップ&サプライチェーン見学ツアー
村落に住み、そこで生業(なりわい)を営む人たちと交流し、彼らの自然保護と伝統文化の継承への取り組みを学ぶツアーシリーズ。 今回は、7月23日、24日の両日、周辺町村との合併を果たした愛知県豊田市を中心に愛知万博・地球市民村の会場にも展示された間伐材ベンチのような、これまであまり使われていなかった材を使用した木材製品のサプライチェーンを見学と、そのベンチ作りを体験しました。
足助木材協同組合 / 豊田・松平の森 / 参加者の声:「ツアーの感想」
足助町は矢作川流域にあり、その面積の87%が森林で占められています。しかし他地域と同様、木材価格の低下などの理由から管理が行き届いておらず、山林が荒廃してしまっています。 足助町木材協同組合は、間伐材などの小径木を有効利用するための加工施設で、地元で切り出されてきた杉や桧など木材の丸棒加工・仕上げまでを行っています。加工された丸棒は、公園・土木用の木杭やガーデニング製品として用途があり、今後の需要が期待されています。 わたしたちは、木材が運ばれてきて皮をむくところから、乾燥させ、丸棒や角材に仕上げるところまでの過程を見学しました。 家具などに利用するときの狂いを少なくするため、木材は十分乾燥させてから使います。この協同組合では乾燥も行っていましたが、その保存場所がないことが問題だということでした。乾燥させている木の中には、公園や街路樹として植えられていたケヤキもありました。 加工過程では、樹皮やおがくずが副産物として大量に発生します。足助町木材協同組合では、そうしてできた「あまりもの」を廃材として捨ててしまうのではなく、100%使い切ろうと試みています。 例えば、農業用肥料として地元の農家に提供したり、酪農用敷材として養豚場などで利用してもらっています。しかし、それでも大量のおがくずはもて余してしまうし、間伐された小径木は普通の材より小さいので使い道が制限される上、価格がコストに見合わず、その用途については試行錯誤されているところでした。 また、間伐は人の手で行われるため、1日200〜300本、年間2万5,000本しか伐り出すことができません(それでもなかなか買い手がつかないそうです)。これからの日本の森林管理/間伐材利用の難しさを垣間見ました。 森林管理・間伐材利用が困難な中、今年豊田市では、市民を対象に間伐材を利用した屋外家具のデザインを公募したコンテストが実施され(『矢作川水源の森・間伐材利用プロジェクト』)、入賞作品のベンチ等が「愛・地球博」会場をはじめ市内の公園や学校などに設置されました(その後継事業として今年スタートした『矢作川水源の森・森のプレゼントプロジェクト』では、間伐材などを利用して作った木製品を自治体にプレゼントしています)。 木材加工の工程の見学後、間伐材利用プロジェクト・森のプレゼントプロジェクトで作られたような、間伐材(小径木)のベンチを組み立てました。 (文:渡部いづみさん)
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2日目は、豊田市松平の山林で、間伐作業の見学と搬出のお手伝いを体験を行いました。 間伐をしない山は木の枝葉が重なり合って地面まで光が入らず、薄暗い山になってしまいます。適切に間伐を行うことで、林内に光が入り、下層植物が生えて多様性に富んだ生態系が育ちます。 木を切っても、まわりの木の枝に引っかかってなかなか倒れてきません。ロープで引っ張って倒しました。 間伐した木は家具の材料にすることになっていたので、皮をむくところまで作業を行いました。お盆のころまでは木が水を十分に含んでいるので簡単に皮がむけます。手にしていた軍手が、作業が終わるころにはぐしょぐしょに濡れてしまうぐらい、木は皮の内側に水をたっぷり蓄えていました。普段目にする、乾いた木材からは想像できないことです。木って生き物なんだなと実感しました。 普段山を管理されている青山さんは、退職後、山の持ち主である農家の方にお願いして、木工クラブで使う材料にするため間伐を始めたそうです。始めは単に材料調達のために伐採を行っていましたが、農家の方に「助かります、ありがとう」と感謝されるようになり、それが生きる原動力になったそうです。今では山を間伐するのが生きがいになりつつある、と語られるお姿がとても印象的でした。 (文:渡部いづみさん)
搬出して皮を剥きました。ヒノキのいい香りが漂います。