脱原発・エネルギーシフトに向けて
SPEEDIを使わない? 30km以遠は屋内退避だけ?
原子力災害対策指針の改定ににパブコメを! <締切は4月3日>
ポイントをまとめました。
2014年4月2日改定
原子力規制委員会が、4月3日(金)まで、原子力災害対策指針改定に関して、一般からの意見(パブリック・コメント、略してパブコメ)を募集しています。 もともと、原子力災害対策指針は、避難判断の基準となる空間線量率が非常に高いこと、原子力防災重点区域(UPZ=原発から30km範囲内)が狭いことなど、問題の多いものでした。しかし、この改定案は、さらに問題の多いものとなっています。 以下に改定のポイントをまとめました。ぜひ、みなさんからも、意見を出してください。
> 4月2日16時から、参議院議員会館で政府交渉を開催しました。配布資料はこちら。
パブコメの出し方:インターネットでも、郵送でも、ファックスでも出せます。 https://www.nsr.go.jp/procedure/public_comment/20150305_01.html 【郵送およびファックスの場合】 意見提出書式(PDF) |
ポイント1.SPEEDIなどの放射性物質の拡散予測の活用について削除された
「SPEEDIのような大気中拡散シミュレーションを活用し、放射性物質の放出状況の推定を行う」という文言が削除されました。
これについて、原子力規制委員会では、「福島原発事故の際にSPEEDIは機能しなかったため」「SPEEDI等の予測的手法によって、放射性物質の放出のタイミングや放出量、その影響の範囲が正確に予測されるとの前提に立って住民の避難を実施する等の考え方は危険」「原子炉の状況により必要な防護措置をただちに実施できる」としています。しかし、SPEEDIが機能しなかったのは、運用の問題です。また、SPEEDIの限界を考慮に入れた上で、これを参考として併用すればよいのであり、「必要な防護措置をただちに実施できる」という思い込みの方がはるかに危険です。
パブコメ例: SPEEDI についての記述を削除すべきではない。 SPEEDI と緊急時モニタリングを組み合わせ、判断を行うべきである。 |
ポイント2.30km以遠の防護措置は屋内退避だけ。安定ヨウ素剤の配布はなし
30km以遠の対策として、PPAに関する記述が軒並み削除されましたが、30km以遠
の対策として新たに追加されたされたのは、以下の文章です(新旧対照表の6ペー
ジ目)
https://www.nsr.go.jp/data/000099127.pdf#page=6
「原子力施設から著しく異常な水準で放射性物質が放出され、又はそのおそれが
ある場合には、施設の状況や放射性物質の放出状況を踏まえ、必要に応じて予防
的防護措置を実施した範囲以外においても屋内退避を実施する。」
「異常な水準で」「又はそのおそれがある場合」「施設の状況」とは何をさすのかについて、4月2日の会合にて、原子力規制庁は説明することができませんでした。。
また、追加された対策は「屋内退避」のみですが、なぜ屋内退避で十分なのかの根拠があきらかではありません。
今回の改訂の際に、原子力災害事前対策等に関する検討チーム会合で示されたのは、下記のシミュレーションです。
https://www.nsr.go.jp/data/000050020.pdf
しかし、これについてはセシウム 137 の環境への放出量が 100 テラベクレルと、 福島原発事故の100分の1以下という非常に甘い前提となっています。 これは原子力規制委員会の安全目標値でもあります。
このシミュレーションでも、木造家屋に屋内退避したときの被ばく低減 率はたかだか25%、コンクリートの建物で50%です。
パブコメ例:30km以遠の防護措置として、屋内退避だけでは不十分である。ヨウ素剤の配布や、早めの避難判断などについても、盛り込むべきである。 |
ポイント3.あいまいにされたPPA<プルーム(放射性雲)通過時の防護措置>の範囲
現在の原子力災害対策指針では、「プルーム(放射性雲=放射性物質を含んだ気体のかたまり)通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する地域(PPA)の検討」とし、プルーム通過時の防護措置の必要性について記述してあり、それらについては、「PPAの具体的な範囲および必要とされる防護措置の実施の判断については今後検討」とされています。これが、報道などでいう30km以遠の対策に該当します。
今回の改訂案ではPPAの概念は削除されています。
原子力規制庁が出している文書によれば、「プルームに対応するための特別な枠組みを新たに設定する必要はない」としています。
また、30km以遠について対策が必要な区域については、「重点区域外に拡張される屋内退避の実施範囲は予防的に同心円を基礎として行政区域単位等の実効的な範囲で設定するべき」としています。
しかし、福島原発事故の教訓を踏まえれば、30kmをはるかに超えて、プルームが通過し、影響は同心円に広がったわけではありませんでした。
原子力規制委員会は、プルームによる放射能汚染の対策が困難であるからといって、検討を逃げ、PPAの文言自体を削除してごまかしたのです。
パブコメ例:PPAの概念について指針に明記するべきである。また、放射性物質の影響は、同心円上に広がるべきではないことを踏まえ、気象条件等も考慮し、SPEEDI等を活用することを明記すべきである。 |
ポイント4:高すぎる避難基準、遅すぎる避難指示の判断
もともと原子力災害対策指針で、即時避難の基準はOIL1=500μSv/時、一時避難の基準はOIL2=20μSv/時と非常に高い基準が設定されています。OIL2は観測してから1日程度で判断し、1週間以内に一時移転の指示が出されることになっています。
今回の改訂で、OIL2の測定方法がさらに改悪されました。
「緊急時モニタリングにより得られる空間放射線量率(1時間値)がOIL2の基準値を超えたときから起算して概ね1日が経過した時点の空間線量率(1時間値)で判断することが実効的」とし、たとえ、実測で20μSv/時を超えたとしても、その時点では判断せず、1日通過した時点で判断することになります。
パブコメ例:OIL1、OIL2の基準が高すぎる。また、OIL2である20μSv/時が観測されて1日経過した時点での空間線量率で判断するとしているが、20μSv/時は十分高い値である。このような運用では、避難指示の遅れや被ばくの過小評価につながる。 |
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