インドネシアとバングラデシュの市民団体、日本政府・JICAの石炭支援停止を求めて仏政府に確固たる姿勢をとるよう要請
2020年11月9-12日、気候変動対策や国連の定めた持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた公的金融機関の役割等について協議する国際会議「Finance in Common Summit」が開催されます。この会合は世界各国から公的金融機関が集まり、その役割や課題について話し合う初めての機会となります。日本からは国際協力機構(JICA)が参加予定です。(会議はオンライン。ホスト国は仏政府。)
この国際会議を前に、11月9日、インドネシアの9市民団体及びバングラデシュの11市民団体は、ホスト国であるフランス政府に対し、要請書を提出。気候変動への影響や環境社会・人権問題などが指摘されているにもかかわらず、両国で石炭火力発電所の新設計画に支援を続けようとしている日本政府・JICAに対する懸念を示すとともに、日本政府・JICAに石炭支援の停止を求めるべく、フランス政府に確固とした姿勢で臨むよう呼び掛けています。
詳細は以下の要請書(和訳)をご覧ください。
(以下、要請書の和訳)
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>要請書(和訳)PDF版はこちら(PDF)
2020年11月9日
フランス大統領 エマニュエル・マクロン 様
ヨーロッパ・外務大臣 ジャン=イヴ・ル・ドリアン 様
経済・財務・復興大臣 ブリュノ・ル・メール 様
11月のFinance in Common Summitに当たって
インドネシア及びバングラデシュにおける日本の石炭支援に対しフランス政府が確固たる態度をとるよう求める要請書
私たち、インドネシア及びバングラデシュの農民組織・現地NGOは、日本が2050年カーボンニュートラル宣言(2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロを目指すことを宣言)を出したにもかかわらず、新規の石炭火力発電所に対して資金供与を行なっていることについて、フランス政府に私たちの懸念を共有し、あなた方の支援を求めるため、本書簡をお送りしています。Finance in Common Summit(11月11~12日開催)のホスト国として、また国連の気候ファイナンス大使として、フランス政府は、日本の海外での石炭支援に対して確固たる態度をとるべき最適の立場にあります。
とりわけ、私たちは、計画中のものも含め、新規の石炭火力発電所へのあらゆる支援を日本政府が止めることをFinance in Common Summitに日本が出席する条件とするよう、フランス政府に求めます。
中でも、インドネシアのインドラマユ石炭火力発電所・拡張計画(1,000メガワット)(以下、インドラマユ事業)及びバングラデシュのマタバリ2石炭火力発電事業(1,200 メガワット)(以下、マタバリ2事業)があります。これらの事業は、インドネシアのチレボン1やタンジュンジャティBといったその他の石炭火力発電事業のように、日本政府が主張する利益をもたらすことはなく、私たちの生計手段、健康、人権の他、気候危機への脅威を増幅させるものです。私たちは何十万人もの声を代表して、私たちの名の下で追求されているこうした事業開発を拒否することをあなた方にお伝えしたいと思います。
気候変動問題の他、インドラマユ事業はきれいな大気や農業(コメや野菜)・沿岸漁業といった生計手段を私たちから奪うことになるため、私たちは2016年から日本・インドネシア両政府に対して同事業への強い反対の声をあげてきました。結果として、インドラマユ事業への抗議活動に参加してきた地元の農家に対し、冤罪など深刻な人権侵害も起きています。2018年から2019年にかけて起きた2つのケースでは、それぞれ4名と3名の農家がでっちあげの罪を課せられ、5、6ヶ月間、収監されました。こうした環境社会問題に加え、現在、電力供給予備率が約30パーセントに達しているジャワ・バリ系統では、電力の供給過剰の状態があるため、インドラマユ事業の必要性についても大きな疑問が呈されています。
パリ協定に附属書Ⅰ国の一つとして署名した後も、日本はマタバリ石炭火力発電事業への資金供与を続けてきました。同事業は、一般的な発電所のように30年間稼働した場合、2億6,600万から2億9,600万トンもの炭素排出を伴うことに加え、計14万8,000人から41万人もの回避しうる早期死亡を引き起こすと推定されています。
新規の石炭火力発電所は、一般に数十年稼働することから、今後の温室効果ガスの排出を長期にわたり「ロックイン」することになります。つまり、新規の石炭火力はパリ協定の1.5℃目標にまったく整合しません。2019年には、国連事務総長が、2020年以降の石炭火力発電所の新設は止めるべきと各国に呼びかけました。
11月11~12日にかけてフランスは、「気候問題及び国連の定めた持続可能な開発目標(SDGs)に向けたコモン・アクションを支持するすべての金融コミュニティー」の調和を目指す公的金融機関が集まる地球規模での初めての会議を主催します。前述した石炭火力発電所の新設に係る深刻なリスクを鑑みれば、日本がそうした事業の支援を一切止めるとコミットしない限り、Finance in Common Summitに日本政府が出席することは、同会議の目的と相容れないでしょう。
日本に対して国際的に大きな批判が浴びせられたことから、日本政府は2020年7月、海外の石炭火力発電への公的支援については、脱炭素化への移行方針等が確認できない国へは「原則」支援しないという方針を決定しました。しかしながら、同方針は、インドラマユ事業やマタバリ2事業を含む計画段階の事業には適用されないなど、大きな抜け穴が残されています。国際協力機構(JICA)は依然としてインドラマユ事業及びマタバリ2事業に対して数十億ドルもの資金供与を行なうことが見込まれています。
したがって、私たちは、フランス政府が日本の石炭支援に対する懸念を表明するとともに、インドネシアのインドラマユ事業及びバングラデシュのマタバリ2事業を含む、すべての石炭火力発電事業への支援を一切止めるよう日本政府に促すことをあなた方に求めます。
あなた方のご関心とご配慮に感謝申し上げます。私たちの要請に真摯にご対応いただけることを期待しています。
インドネシア市民団体の署名
JATAYU (Jaringan Tanpa Asap Batubara Indramayu or Indramayu Network of Free Coal Smoke)
WALHI West Java (Wahana Lingkungan Hidup Indonesia)
350.org Indonesia
Aksi Ekologi dan Emansipasi Rakyat (Action for Ecology and People Emancipation / AEER )
Bandung Legal Aid (LBH Bandung)
Kanopi Bengkulu
Koalisi Rakyat Cirebon (Karbon)
Transforming Energy and Development in Southeast Asia (Trend Asia)
Wahana Lingkungan Hidup Indonesia (WALHI – Friends of the Earth Indonesia)
バングラデシュ市民団体の署名
Bangladesh Environmental Lawyers Association (BELA)
Bangladesh Working Group on External Debt (BWGED)
Centre for Bangladesh Studies (CBS)
Centre for Environment and Participatory Research (CEPR)
CLEAN (Coastal Livelihood and Environmental Action Network)
Nagorik Sanghati
Participatory Research and Action Network (PRAN)
Prantojon Trust
Safety and Rights Society (SRS)
Society for Environment and Human Development (SEHD)
Society for People’s Education, Empowerment and Development Trust (SPEED Trust)
連絡先:
WALHI West Java
Jl. Pecah Kopi No.14, Bandung
Telp : +62 (0)22 – 20458503
Bangladesh Working Group on External Debt (BWGED)
4 Mallick Bari Road, Boyra-Rayermahal, Khulna 9000, Bangladesh
Phone: +8801976702006
(※)インドネシア・西ジャワ州インドラマユ石炭火力発電事業
200万kW(100万kW ×2基)の超々臨界圧石炭火力発電所を建設(275.4 haを収用)し、ジャワ-バリ系統管内への電力供給を目的とする。1号機(100万kW)に国際協力機構(JICA)が円借款を検討予定(インドネシア政府の正式要請待ち)。すでにJICAは2009年度に協力準備調査を実施し、基本設計等のためにエンジニアリング・サービス(E/S)借款契約(17億2,700 万円)を締結(2013年3月)。現在もE/S借款の支払いを続けている。E/S借款は「気候変動対策円借款」供与条件が適用されたが、2014年の第20回気候変動枠組条約締約国会議(COP20)では、同石炭火力事業を気候資金に含んだ日本政府の姿勢が問題視された。