インドネシア・ソロワコ・ニッケル開発の探査・拡張計画についてVale主要株主へ要請書を提出――人権侵害への加担を防ぎ、農民の生計手段の保護と安全な「市民スペース」の確保を求める

 FoE Japanは2023年8月以降、インドネシア環境フォーラム(WALHI)南スラウェシ、WALHI、アジア太平洋資料センター(PARC)とともに、PT Vale Indonesia (PTVI)の主要株主(住友金属鉱山、ノルウェー政府)ならびにPTVIの親会社であるValeの主要株主(Capital Group、Previ、三井物産、BlackRock)に対し、ソロワコ・ニッケル開発の影響を受ける現地コミュニティの人権を保護するため、PTVI/Valeへの適切なエンゲージメントを行うよう継続して求めてきました。 

 特にPTVIが新たに採掘を計画しているタナマリア鉱区では、企業側が依然として探査・採掘を推進しようとする一方、地元の胡椒農家や女性たちが不当逮捕を含む深刻な人権侵害や圧力に直面し続けています。2026年9月25日、このような現地情勢の著しい悪化を受け、日イの市民団体は上記の主要株主に対して改めて要請書を提出しました。 

 タナマリア鉱区と重複するロエハ・ラヤ地区の胡椒農家や女性たちは、一貫して同鉱区をPTVIの鉱業コンセッションから除外するよう求め続けています。しかしながら、直近の報道でも明らかなとおり、PTVIは計画推進の姿勢を一切崩していません。 

 こうした状況下で、ここ最近、インドネシア当局による「保護林」を前面に掲げた胡椒農家の取り締まりや、現地の農民団体に対する公の誹謗中傷・レッテル貼りが相次いでいることは、PTVIと対立関係にある地域コミュニティの平和的な運動を阻害し、弱体化させようとする意図的な試みであるとの強い疑いを生じさせています。 

 今回提出した要請書では、PTVI/Valeの主要株主に対し、自らの投資が人権侵害に加担することのないよう、PTVI/Valeへの直接的なエンゲージメントを通じて以下の対応をとることを強く要請しています。 

  1. 数千人の胡椒農家および女性たちの重要な生計手段を守るため、タナマリア鉱区をPTVIのコンセッションから早急に除外させること。
  2. 現地の農家や女性たちが、脅迫を恐れることなく表現の自由や有意義な参加などの権利を行使できる、安全な「市民スペース」を確保させること。

 詳細は以下の要請書(FoE Japanによる和訳。原文は英語)をご覧ください。

 >PDFはこちら(和訳)

南スラウェシ州ソロワコ、特にロエハ・ラヤ地域におけるPT Vale Indonesiaによる農民への相次ぐ不当な犯罪化、生活空間の喪失の脅威、および説明責任の欠如に関する株主への対応要請について

(原文は英語。以下は、FoE Japanによる和訳)

2026年9月25日

Vale/PT Vale Indonesiaの株主の皆様へ

私たちは、Vale社(Vale)/PT Vale Indonesia(PTVI)の主要株主である皆様に対し、ソロワコ・ニッケル開発事業および東ルウ県トウティ郡に位置する同事業タナマリア鉱区における探査計画がもたらす環境社会影響について、2023年8月、2024年2月、そして2024年10月に繰り返し書簡をお送りしてきました。これらの書簡において、私たちはPTVIがロエハ・ラヤ地域の胡椒農家や女性たちとの有意義な話し合いに必要な前提条件を満たしておらず、影響を受ける地域コミュニティからの社会的操業許可(Social Licene to Operate:SLO) を得ないまま事業活動を継続している点を一貫して指摘してきました。

さらに、私たちはタナマリア鉱区を自社の鉱業コンセッションから除外するようPTVIへ適切に働きかけることを株主の皆様に度々強く求めてきました。しかしながら、PTVIはこれらの要請を無視しているように見受けられ、タナマリア鉱区は依然として同社のコンセッション内に留まっています。皆様が今日に至るまで意味のある介入を怠り続けていることが、現地の状況をさらに複雑化させ、現地の農民をますます不安定な立場へと追い込んでいることに、私たちは深い懸念を抱いています。実際、前回の書簡から2年の間に、現地情勢は悪化の一途を辿っています。

ロエハ・ラヤ地域の農民や女性たちは、さまざまな形態の脅迫や不当な介入に直面してきました。これらには、警察官が住民の自宅を直接訪れる行為[1]から、彼らの胡椒畑がある地域にインドネシア国軍の大隊本部を設置する計画[2]まで様々なものが含まれます。さらに、2025年10月以降続いている現地の農民1名に対する不当な犯罪化の試みは、未解決のままです。ロエハ・ラヤ地域のコミュニティに対する圧力や脅迫が続く中、スラウェシ地域林業法執行総局(Gakkum)は2026年8月3日、保護林地域内での農地開墾および小屋の設置容疑で、ロエハ・ラヤの農民3名を逮捕しました[3]。実際には、この地域の農民たちは長年にわたりロエハの土地を耕作して生計を立ててきたにもかかわらずです。さらに地域コミュニティは、今回の逮捕手続きが適用されるべき法規定に準拠していなかった疑いがあることも指摘しています[4]。

同逮捕から3日後(2026年8月6日)、林業省(特にラロナ森林管理ユニット:KPH)の職員9名がロエハ・ラヤ地域を訪れましたが、ロエハ・ラヤ胡椒農民団体(APL)はこれを強く拒絶しました。数日前に農民3名が逮捕された後のタイミングで、現地の農民たちとの事前のコミュニケーションや対話もないまま訪れた同省職員の存在を、APLは事態をさらに複雑化させ、無用にエスカレートさせるものであると受け止めたためです。

当局は、ロエハ・ラヤの農民や女性たちとの参加型アプローチやコミュニケーションを模索するのではなく、様々な報道媒体を通じてAPLの和平的な抗議活動を「暴力行為」と公にレッテル貼りしました(2026年8月9日)[5]。それから1ヶ月も経たない2026年9月4日には、APL代表が「土地マフィア」の一員であるとして、さらに不当に誹謗中傷されました[6]。これらの名誉毀損のような攻撃は、PTVIと対立関係にある地域コミュニティの運動を害し、弱体化させようとする明白な試みです。

私たちの考察に基づくと、Gakkumによって実施された措置および一連の報道を通じてAPLの評判を貶めようとする執執な行為は、ルメレオ山地におけるPTVIの企業利益と不可分です。この地域が同社の鉱業コンセッション内に留まる限り、農民を立ち退かせ、タナマリア鉱区内のコショウ畑を一掃させることは、同社に直接的な利益をもたらすためです[7]。

WALHI南スラウェシによる空間分析(2023年)[8]によると、現在タナマリア地域は重複する3つの土地利用区分に分かれています。
(1) 森林地域:25,260.43 ha
(2) PT Vale Indonesiaの鉱業コンセッション:17,776.78 ha
(3) ロエハ・ラヤの地域コミュニティの胡椒畑:4,239 ha

タナマリア地域におけるこのような土地利用の重複状況に鑑み、私たちはGakkumによる法執行措置が、この地域から胡椒農家を排除することを目的としていると強く疑っています。これらの農民が立ち退かされれば、PTVIは当局の許可を得た後に、容易にこの地域を占有できるようになります。この文脈において、私たち市民社会組織は、森林生態系の保護を目的とした一般的な林業法執行そのものに反対しているわけではないことを強調しなければなりません。しかしながら、タナマリアのようにPTVIの鉱業コンセッションと地域コミュニティの生活空間が直接重複している場所において、通常の林業法執行措置を一律無差別に適用することは認められず、またそうすべきでもありません。

株主の皆様への要請事項

PTVI/Valeの主要株主として、皆様は国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際規範に基づき、人権侵害や生態系破壊への加担を回避する明確な責任を負っています。したがって、私たちは皆様に対し、以下の行動をとるよう強く求めます。

1. PTVI/Valeに対し、2023年以来コミュニティが一貫して示している要請に沿って、タナマリア鉱区およびロエハ・ラヤのコミュニティのすべての胡椒畑を自社の鉱業コンセッションから除外するよう強く求めること。

2. PTVI/Valeに対し、2026年8月にスラウェシ地域林業法執行総局がロエハ・ラヤ地域で実施した措置への関与や役割について、仮にそうしたことがあるのであれば、透明性のある説明を要求すること。

3. PTVI/Valeに対し、農民自らの表現の自由や有意義な参加が保障された安全な市民スペースを確保させるために、APLメンバーを「暴徒」と決めつけるあらゆる公的な非難を即座に撤回するよう関連当局に強く働きかけるよう要求すること。

4. 世界銀行グループ国際金融公社(IFC)の「環境と社会の持続可能性に関するパフォーマンス基準」(PS)の遵守状況について、企業自身が作成した報告書のみに依存するのではなく、影響を受けるコミュニティによって独立して検証された結果に基づいて評価するよう確保すること。

5. 現地での情勢悪化が警察、軍、その他の当局による新たな不当介入を招くリスクがあることに鑑み、PTVI/Valeに対する主体的なエンゲージメントを行い、地域コミュニティの表現の自由を含む基本的人権の侵害に株主自身が加担することのないよう、適切な措置を講じさせること。

私たちは、この問題が単なる局所的に起きているテクニカルで法的な紛争ではなく、健全な環境を享受する権利や自らの生計手段で生活を営む権利をめぐる、繰り返されてきた問題パターンであることを改めて強調します。私たちは現地の状況を注視し続けます。株主の皆様には、ご自身の影響力を行使し、PTVI/Valeが上記に掲げた具体的な措置を早急に講じることを確保するよう改めて要請します。

WALHI South Sulawesi
Wahana Lingkungan Hidup Indonesia (WALHI / FoE Indonesia)
Friends of the Earth Japan
Pacific Asia Resource Center, Japan

連絡先:
WALHI South Sulawesi (Muhammad Al Amin, Executive Director)
Add: JL. Aroepala, Kompleks Permata Hijau Lestari Blok Q1, No.8, Rappocini, Kota Makassar, Sulawesi Selatan 90221
Email: muhammad.al.amien@gmail.com / walhisulsel@gmail.com
Tel: +62-8229-3939-591

WALHI National Executive (Faizal Ratuela, Anti Mining and Just Energy Transition Campaigner WALHI) 
Add: Jl. Tegal parang Utara No. 14, RT.005/RW.004. Mampang Prapatan, Kota Jakarta Selatan – DKI Jakarta
Email: Faizalabdrahman@gmail.com
Tel: +62 822-9005-6503

国際環境NGO FoE Japan(担当:開発金融と環境チーム 波多江)
住所: 1-21-9 Komone, Itabashi-ku, Tokyo, Japan 173-0037
Email: hatae@foejapan.org
Tel: +81 3 6909 5983


[1]  https://www.bollo.id/laporan-mendalam/intimidasi-dan-ancaman-ekologi-di-blok-tanamalia/

[2] https://makassar.antaranews.com/berita/613653/pembangunan-batalyon-tni-ad-di-luwu-timur-mendapat-penolakan-warga

[3] https://www.sulselsatu.com/2026/08/06/news/buka-kebun-merica-di-hutan-lindung-loeha-raya-3-orang-warga-ditahan-gakkum-sulawesi.html

[4]  https://www.garismerah.id/2026/08/tangkap-dan-tahan-petani-merica-loeha.html

[5] https://sultengraya.com/read/217667/siasat-licik-apl-premanisme-berkedok-petani-lada-di-hutan-lindung-loeha-raya

[6] https://makassar.terkini.id/rekam-jejak-ali-kamri-nawir-sosok-sutradara-di-balik-gurita-mafia-lahan-hutan-lindung-sulawesi/

[7] https://www.bloombergtechnoz.com/detail-news/117597/tambang-baru-vale-di-ri-blok-tanamalia-mitranya-automaker-eropa/2

[8] https://walhisulsel.or.id/4133-laporan-hasil-riset-lumbung-merica-nusantara-di-tengah-perluasan-pertambangan-nikel-etnografi-perkebunan-valuasi-ekonomi-kawasan-tanamalia-luwu-timur-sulawesi-selatan/

 

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